# 第六話 ## 「忘れられる未来」
# 第六話
## 「忘れられる未来」
「世界から……忘れられる……?」
修司は呆然と立ち尽くしていた。
図書館地下の静寂。
先ほどまでそこにいた神崎悠人の姿は、もうない。
残されたのは重苦しい沈黙だけだった。
学園長も珍しく言葉を失っている。
やがて修司が口を開いた。
「学園長」
「なんだい」
「本当なんですか?」
学園長は目を閉じる。
そして静かに頷いた。
「完全には分からない」
「え?」
「だが百年前の記録では、悠人くんを覚えている者が誰もいなかった」
修司の背筋が冷たくなる。
「家族も?」
「誰も」
「友達も?」
「誰も」
修司は拳を握った。
それは死ぬことより怖かった。
存在そのものが消える。
誰の記憶にも残らない。
そんな未来。
その日の帰り道。
修司はずっと考えていた。
結衣。
悠真。
源三。
今まで出会った仲間たち。
もし本当に忘れられるなら――。
自分は∞ランクを目指せるのか。
答えは出なかった。
---
翌朝。
学園に着いた修司は違和感を覚えた。
生徒たちがざわついている。
「聞いた?」
「マジで?」
「なんで急に?」
不穏な空気。
修司は急いで教室へ向かった。
すると。
結衣が青い顔をして座っていた。
「結衣?」
彼女は驚いたように顔を上げる。
「修司先輩……」
「どうした?」
結衣は震える声で答えた。
「絵が描けないんです」
「え?」
机の上にはスケッチブック。
しかし真っ白だった。
「昨日まで描けたのに……」
「……」
「急に何も浮かばなくなった」
その時。
廊下から声が聞こえた。
「修司先輩!」
悠真だった。
だが様子がおかしい。
息を切らしている。
「どうした!?」
「ランクが……」
「ランク?」
悠真の頭上に表示されていた。
【挑戦者ランク:D → E】
「下がってる!?」
修司は驚いた。
ランクは上がるものだと思っていた。
だが下がっている。
そこへ。
さらに源三が現れる。
「修司くん!」
老人の顔にも焦りがあった。
「勉強する気力が出ん!」
修司は息を呑む。
全員に異変が起きている。
まるで。
成長そのものが止まり始めているようだった。
---
放課後。
学園長は全校生徒を講堂へ集めた。
ざわめく生徒たち。
その中央で学園長は言う。
「皆さんに伝えなければならないことがあります」
空気が張り詰める。
「無限成長学園は今、危機にあります」
どよめきが起きた。
学園長は続ける。
「百年前――」
「∞ランク到達者、神崎悠人は学園を守るためにあるものを封印しました」
修司は目を見開く。
「封印……」
「その封印が弱まっています」
講堂が静まり返る。
そして学園長は言った。
「その名は――」
一瞬の沈黙。
「停滞の王」
誰も知らない名前。
だが聞いただけで不気味だった。
「停滞の王は、人から挑戦する心を奪う存在です」
結衣が息を呑む。
悠真も顔を上げる。
源三も固まった。
「夢を諦めさせる」
「努力を無意味だと思わせる」
「失敗を恐れさせる」
学園長は拳を握る。
「百年前、世界中の人々が成長をやめた原因です」
修司の脳裏に浮かぶ。
『どうせ無理』
『夢なんて叶わない』
『挑戦する意味がない』
今まで出会った人たちの言葉。
全部。
停滞の王の影響だったのかもしれない。
---
その夜。
修司は一人で校舎の屋上にいた。
風が吹く。
空には満月。
そして。
背後から声がした。
「悩んでるね」
振り返る。
そこには光の姿となった悠人がいた。
「悠人!」
悠人は苦笑する。
「君は優しい」
「え?」
「だから迷う」
修司は黙る。
悠人は空を見上げた。
「僕も同じだった」
「……」
「仲間を失いたくなかった」
「ならどうして∞ランクに?」
悠人は少しだけ寂しそうに笑う。
そして答えた。
「守りたかったから」
風が強く吹く。
「挑戦する人たちの未来を」
修司は息を呑む。
悠人は続けた。
「修司」
「はい」
「君なら僕とは違う未来を作れる」
「違う未来?」
悠人は頷いた。
「忘れられない未来だ」
その言葉を残して。
光は夜空へ消えていった。
修司は月を見上げる。
そして決意する。
絶対に諦めない。
誰も忘れられない未来を。
みんなが夢を追える未来を。
そのために――。
---
その瞬間。
学園の地下深く。
百年間閉ざされていた巨大な扉が、
ゆっくりと開き始めた。
ギギギギギ……
闇の奥から響く低い声。
「……目覚める時が来たか」
赤い瞳が開く。
それは人ではない。
世界中の挑戦を喰らう存在。
停滞の王だった。
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### 次回
# 第七話
## 「停滞の王」
百年の封印を破り現れた最悪の存在。
夢を奪い、
挑戦を否定し、
人々の心を止める王。
修司たちは立ち向かうが、
圧倒的な絶望が襲いかかる――。
そして初めて明かされる、
**修司に秘められた本当の力。**
「諦めない心は、誰にも奪えない!」
無限成長学園、第七話!




