# 第五話 ## 「消えた∞ランク」
# 第五話
## 「消えた∞ランク」
夜。
無限成長学園の校長室。
学園長は古い資料を机の上に並べていた。
黄ばんだ紙。
色褪せた写真。
そして――
百年間、誰も解けなかった謎。
【到達ランク:∞(インフィニティ)】
その文字を見つめながら、
学園長は静かに呟く。
「君は何を残そうとしたんだい……」
コンコン。
扉が鳴る。
「失礼します」
入ってきたのは修司だった。
「呼ばれました?」
学園長は頷く。
「君に見せたいものがある」
そう言って、一枚の写真を差し出した。
修司は受け取る。
そこに写っていたのは――
百年前の学生服を着た少年。
優しそうな笑顔。
どこにでもいそうな普通の少年。
しかし。
修司は息を呑んだ。
「え……?」
学園長も驚いていた。
「やはり気付いたか」
「この人……」
修司の手が震える。
「僕に似てる……」
そう。
写真の少年は、
まるで修司の兄弟のように似ていた。
目元も。
笑顔も。
雰囲気まで。
学園長は静かに言った。
「彼の名は――
**神崎悠人。**」
「神崎悠人……」
「百年前に∞ランクへ到達した唯一の生徒だ」
修司は写真を見つめる。
不思議だった。
初めて見るはずなのに。
なぜか懐かしい。
そんな感覚があった。
---
翌日。
学園図書館地下。
普段は立ち入り禁止の場所へ、
修司は案内された。
重い扉が開く。
ギィィィ……
中には膨大な本が並んでいた。
その奥。
ガラスケースの中に、
一冊のノートが置かれていた。
「これが……」
学園長は頷く。
「悠人の日記だ」
修司は慎重にページを開く。
最初のページにはこう書かれていた。
---
『僕は何もできない人間だった』
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修司は目を見開く。
次のページ。
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『勉強も苦手』
『運動も苦手』
『誰にも期待されない』
『だから成長したいと思った』
---
修司は思わず笑った。
「僕みたいだ……」
学園長も微笑む。
「そうだね」
ページをめくる。
そこには数え切れない失敗が記録されていた。
試験不合格。
大会敗北。
挑戦の失敗。
失敗。
失敗。
失敗。
そしてまた失敗。
だが。
途中から文字が変わる。
---
『失敗は終わりじゃない』
『失敗は成長の証だ』
---
修司の目が大きくなる。
聞いたことのある言葉だった。
自分がみんなに話していた言葉。
なぜ。
百年前の日記に同じ言葉があるのか。
さらにページをめくる。
すると最後のページに。
一文だけ書かれていた。
---
『未来の挑戦者へ』
『君がこの日記を読んでいるなら』
『きっと学園は再び目覚めた』
『そして君は僕と同じ場所へ辿り着く』
---
その瞬間。
日記が光り始めた。
「!?」
修司は後ずさる。
光が部屋中を包む。
そして。
目の前に一人の少年が現れた。
白い光でできた姿。
百年前の学生服。
神崎悠人だった。
「やっと会えた」
修司は言葉を失う。
「君が……悠人?」
悠人は笑う。
「そうだよ」
学園長ですら驚いていた。
「まさか記録映像が残っていたとは……」
悠人は修司を見つめる。
優しい目だった。
どこか寂しそうでもあった。
「修司」
「はい」
「君は成長する意味を知っている?」
突然の質問。
修司は少し考える。
そして答えた。
「昨日の自分を超えるため」
悠人は微笑んだ。
「正解だ」
だが。
次の瞬間。
表情が曇る。
「でもね」
「?」
「∞ランクには代償がある」
空気が変わった。
学園長の顔も険しくなる。
「やはり……」
悠人は頷く。
「僕はその代償を払った」
「代償?」
修司の心臓が高鳴る。
百年間隠されていた秘密。
∞ランクの真実。
悠人は静かに言った。
「∞ランクに到達した者は――」
光が揺れる。
姿が薄れていく。
「世界から忘れられるんだ」
修司は凍り付いた。
「え……?」
「家族も」
「友達も」
「仲間も」
「誰一人覚えていない」
学園長が目を閉じる。
悠人は悲しそうに笑った。
「だから僕は消えた」
修司は言葉を失う。
百年前。
誰よりも成長した少年。
その結末は――
孤独だった。
そして悠人は最後に言った。
「修司」
「……」
「君ならどうする?」
問いだけを残して。
光は消えた。
静寂。
誰も何も言えない。
修司は拳を握る。
成長の果て。
夢の果て。
その先に待つものとは。
無限成長学園の本当の試練が、
今始まろうとしていた。
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### 次回
# 第六話
## 「忘れられる未来」
∞ランクを目指せば、
大切な人たちに忘れられる――。
その残酷な真実に揺れる修司。
だがその時、
結衣、悠真、源三たちに異変が起き始める。
そして明かされる、
百年前の神崎悠人が残した最後の願いとは――。
「成長とは、失うことなのか?」
無限成長学園、第六話!




