表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/8

# 第四話 ## 「一度も勝ったことがない少年」

# 第四話


## 「一度も勝ったことがない少年」


「どうせ僕なんて無理です」


その言葉を口にした少年は、


誰よりも悔しそうな顔をしていた。


名前は――


**高橋悠真。十五歳。**


無限成長学園の生徒だ。


勉強は平均。


運動も平均。


特別な才能もない。


そして何より。


人生で一度も一番になったことがなかった。


運動会では二位にもなれない。


テストも中くらい。


ゲーム大会でも負ける。


何をやっても。


いつも誰かが上にいた。


その日。


学園では「成長祭」というイベントが開かれていた。


生徒たちが様々な競技に挑戦する祭りだ。


グラウンドには歓声が響いていた。


「頑張れー!」


「あと少し!」


みんな笑顔だった。


だが。


悠真だけは校舎の陰で座り込んでいた。


修司はそんな彼を見つける。


「出ないの?」


悠真は肩をすくめた。


「どうせ負けるし」


「まだ始まってないじゃん」


「結果は同じです」


修司は隣に座る。


悠真は小さく笑った。


「修司先輩はすごいですよね」


「そうかな?」


「みんなに勇気を与えてる」


「そんなことないよ」


「あります」


悠真は空を見た。


「僕には何もない」


「……」


「勝ったこともない」


「……」


「だから挑戦する意味が分からないんです」


その言葉に。


修司は少し考えた。


そして聞いた。


「悠真」


「はい」


「歩ける?」


「え?」


「競争しよう」


「は?」


修司は立ち上がった。


グラウンドの端を指差す。


「あそこまで」


悠真は困惑する。


「意味あります?」


「いいから」


しぶしぶ立ち上がる悠真。


二人は歩き始めた。


ゆっくり。


本当にゆっくり。


数分後。


ゴールに到着する。


当然。


勝負にも何にもなっていない。


悠真は首を傾げた。


「何だったんですか?」


修司は笑う。


「最初と比べてどう?」


「どうって……」


悠真は振り返る。


スタート地点が遠く見えた。


「あ」


修司は頷く。


「進んでるでしょ」


「……」


「勝ってなくても」


悠真は言葉を失った。


修司は続ける。


「成長ってさ」


「……」


「誰かに勝つことじゃないと思う」


「え?」


「昨日の自分より前に進むことだよ」


風が吹く。


桜の花びらが舞う。


修司の言葉が。


悠真の胸に落ちていく。


「一位じゃなくてもいい」


「……」


「歩くだけでもいい」


「……」


「止まらなければ成長なんだ」


悠真は黙ったまま空を見上げた。


そして。


小さく呟く。


「じゃあ……」


「うん」


「僕でも成長できますか?」


修司は即答した。


「もちろん」


その瞬間。


悠真の目に。


少しだけ光が戻った。


---


午後。


成長祭最後の競技。


長距離走。


参加者は二十人。


悠真も列に並んでいた。


緊張で手が震える。


周りには運動が得意な生徒ばかり。


去年なら。


ここで逃げていただろう。


でも今日は違う。


スターターが叫ぶ。


「位置について!」


全員が構える。


「よーい!」


悠真は深呼吸した。


修司の言葉を思い出す。


勝たなくていい。


昨日の自分より前へ。


パンッ!!


号砲が鳴る。


生徒たちが走り出した。


悠真も全力で走る。


苦しい。


足が重い。


息が切れる。


それでも。


止まらない。


何度も抜かれる。


順位は下の方。


だが。


諦めなかった。


そして――


ゴール。


結果は十五位。


優勝どころか入賞もできなかった。


観客の歓声も少ない。


だが。


悠真は笑っていた。


人生で初めて。


心から。


「楽しかった……」


その瞬間。


体が光に包まれた。


学園中に温かな光が広がる。


文字が浮かぶ。


【挑戦者ランク:E → D】


「え……」


悠真は驚く。


学園長が現れた。


「おめでとう」


「でも僕、十五位ですよ?」


学園長は微笑んだ。


「順位は関係ない」


「……」


「君は今日、自分に勝った」


悠真の目から涙があふれる。


悔しさではない。


喜びだった。


修司も笑う。


「お疲れ」


悠真は何度も頷いた。


「ありがとうございます」


そして心の中で誓う。


次はもっと前へ進もう。


一歩ずつ。


ゆっくりでも。


止まらずに。


---


その夜。


学園長は一枚の古い資料を見つめていた。


そこには不思議な文字が書かれている。


【無限成長学園の秘密】


【百年前に失われた伝説の挑戦者】


【到達ランク:∞(インフィニティ)】


学園長は静かに呟く。


「ついに動き出したか……」


窓の外では。


月が静かに輝いていた。


---


### 次回


# 第五話


## 「消えた∞ランク」


百年前。


無限成長学園に存在したという伝説の生徒。


誰よりも努力し、


誰よりも成長し、


そして突然姿を消した少年――。


なぜ彼は消えたのか?


そして修司との意外な繋がりとは――。


無限成長学園最大の謎が今、動き出す!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ