# 第四話 ## 「一度も勝ったことがない少年」
# 第四話
## 「一度も勝ったことがない少年」
「どうせ僕なんて無理です」
その言葉を口にした少年は、
誰よりも悔しそうな顔をしていた。
名前は――
**高橋悠真。十五歳。**
無限成長学園の生徒だ。
勉強は平均。
運動も平均。
特別な才能もない。
そして何より。
人生で一度も一番になったことがなかった。
運動会では二位にもなれない。
テストも中くらい。
ゲーム大会でも負ける。
何をやっても。
いつも誰かが上にいた。
その日。
学園では「成長祭」というイベントが開かれていた。
生徒たちが様々な競技に挑戦する祭りだ。
グラウンドには歓声が響いていた。
「頑張れー!」
「あと少し!」
みんな笑顔だった。
だが。
悠真だけは校舎の陰で座り込んでいた。
修司はそんな彼を見つける。
「出ないの?」
悠真は肩をすくめた。
「どうせ負けるし」
「まだ始まってないじゃん」
「結果は同じです」
修司は隣に座る。
悠真は小さく笑った。
「修司先輩はすごいですよね」
「そうかな?」
「みんなに勇気を与えてる」
「そんなことないよ」
「あります」
悠真は空を見た。
「僕には何もない」
「……」
「勝ったこともない」
「……」
「だから挑戦する意味が分からないんです」
その言葉に。
修司は少し考えた。
そして聞いた。
「悠真」
「はい」
「歩ける?」
「え?」
「競争しよう」
「は?」
修司は立ち上がった。
グラウンドの端を指差す。
「あそこまで」
悠真は困惑する。
「意味あります?」
「いいから」
しぶしぶ立ち上がる悠真。
二人は歩き始めた。
ゆっくり。
本当にゆっくり。
数分後。
ゴールに到着する。
当然。
勝負にも何にもなっていない。
悠真は首を傾げた。
「何だったんですか?」
修司は笑う。
「最初と比べてどう?」
「どうって……」
悠真は振り返る。
スタート地点が遠く見えた。
「あ」
修司は頷く。
「進んでるでしょ」
「……」
「勝ってなくても」
悠真は言葉を失った。
修司は続ける。
「成長ってさ」
「……」
「誰かに勝つことじゃないと思う」
「え?」
「昨日の自分より前に進むことだよ」
風が吹く。
桜の花びらが舞う。
修司の言葉が。
悠真の胸に落ちていく。
「一位じゃなくてもいい」
「……」
「歩くだけでもいい」
「……」
「止まらなければ成長なんだ」
悠真は黙ったまま空を見上げた。
そして。
小さく呟く。
「じゃあ……」
「うん」
「僕でも成長できますか?」
修司は即答した。
「もちろん」
その瞬間。
悠真の目に。
少しだけ光が戻った。
---
午後。
成長祭最後の競技。
長距離走。
参加者は二十人。
悠真も列に並んでいた。
緊張で手が震える。
周りには運動が得意な生徒ばかり。
去年なら。
ここで逃げていただろう。
でも今日は違う。
スターターが叫ぶ。
「位置について!」
全員が構える。
「よーい!」
悠真は深呼吸した。
修司の言葉を思い出す。
勝たなくていい。
昨日の自分より前へ。
パンッ!!
号砲が鳴る。
生徒たちが走り出した。
悠真も全力で走る。
苦しい。
足が重い。
息が切れる。
それでも。
止まらない。
何度も抜かれる。
順位は下の方。
だが。
諦めなかった。
そして――
ゴール。
結果は十五位。
優勝どころか入賞もできなかった。
観客の歓声も少ない。
だが。
悠真は笑っていた。
人生で初めて。
心から。
「楽しかった……」
その瞬間。
体が光に包まれた。
学園中に温かな光が広がる。
文字が浮かぶ。
【挑戦者ランク:E → D】
「え……」
悠真は驚く。
学園長が現れた。
「おめでとう」
「でも僕、十五位ですよ?」
学園長は微笑んだ。
「順位は関係ない」
「……」
「君は今日、自分に勝った」
悠真の目から涙があふれる。
悔しさではない。
喜びだった。
修司も笑う。
「お疲れ」
悠真は何度も頷いた。
「ありがとうございます」
そして心の中で誓う。
次はもっと前へ進もう。
一歩ずつ。
ゆっくりでも。
止まらずに。
---
その夜。
学園長は一枚の古い資料を見つめていた。
そこには不思議な文字が書かれている。
【無限成長学園の秘密】
【百年前に失われた伝説の挑戦者】
【到達ランク:∞(インフィニティ)】
学園長は静かに呟く。
「ついに動き出したか……」
窓の外では。
月が静かに輝いていた。
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### 次回
# 第五話
## 「消えた∞ランク」
百年前。
無限成長学園に存在したという伝説の生徒。
誰よりも努力し、
誰よりも成長し、
そして突然姿を消した少年――。
なぜ彼は消えたのか?
そして修司との意外な繋がりとは――。
無限成長学園最大の謎が今、動き出す!




