# 第三話 ## 「夢を忘れた少女」
# 第三話
## 「夢を忘れた少女」
「将来の夢?」
その質問に。
少女は迷うことなく答えた。
「ありません」
教室が静まり返る。
無限成長学園の一年生。
**天野結衣、十四歳。**
黒髪のショートヘア。
成績は優秀。
運動もできる。
誰から見ても優等生だった。
だが――。
彼女の目には光がなかった。
先生が困ったように言う。
「本当にないの?」
「はい」
「やりたいことも?」
「特に」
周囲の生徒たちがざわつく。
「結衣ちゃん頭いいのに」
「医者とかじゃないの?」
「教師とか?」
しかし結衣は首を振る。
何も答えなかった。
その様子を。
修司は後ろの席から見ていた。
放課後。
校舎裏のベンチ。
結衣は一人で空を見上げていた。
修司は隣に座る。
「夢ないの?」
結衣は少し嫌そうな顔をした。
「またその話ですか」
「ごめん」
「別にいいですけど」
しばらく沈黙。
やがて結衣がぽつりと言った。
「夢なんて叶わないじゃないですか」
修司は驚く。
「どうして?」
「だって失敗するから」
「……」
「期待して駄目だったら苦しいだけです」
結衣の声は静かだった。
まるで何度も傷ついた人のように。
修司は尋ねる。
「何かあったの?」
結衣は少しだけ迷った。
そして話し始める。
「小さい頃」
「うん」
「絵を描くのが好きだったんです」
修司は耳を傾ける。
「毎日描いてました」
「へえ」
「漫画家になりたかった」
だが。
小学校のコンクールで落選。
中学校の作品展でも落選。
ネットに投稿しても反応なし。
いつしか。
周囲から言われるようになった。
『向いてないんじゃない?』
『諦めたら?』
『趣味でいいじゃん』
結衣は笑った。
でも。
その笑顔は悲しかった。
「だからやめました」
「……」
「夢なんて持たない方が楽です」
修司は黙る。
そして。
静かに聞いた。
「今も描きたい?」
結衣の肩が震えた。
「……」
「本当は?」
「……」
「本当に描きたくない?」
長い沈黙。
やがて。
結衣の目から涙がこぼれた。
「描きたいよ……」
修司は微笑んだ。
「それが夢じゃん」
結衣は涙をぬぐう。
「でも失敗する」
「するよ」
「え?」
「絶対する」
結衣は目を丸くした。
修司は笑う。
「僕だって失敗してる」
「……」
「源三さんだって二十八回落ちた」
「……」
「でも挑戦してる」
春風が吹いた。
修司は立ち上がる。
「夢ってさ」
「……」
「叶う保証があるから追うんじゃないと思う」
結衣は見上げる。
修司は空を指差した。
「好きだから追うんだ」
その言葉は。
まっすぐ結衣の心に届いた。
翌日。
結衣は久しぶりにスケッチブックを開いた。
何か月ぶりだろう。
鉛筆を握る。
震える手。
真っ白な紙。
怖かった。
失敗が。
笑われるのが。
傷つくのが。
それでも。
一線を描いた。
そして。
もう一本。
さらに一本。
気づけば夢中になっていた。
放課後。
修司の前に一枚の絵が差し出される。
「見ますか?」
結衣だった。
修司は絵を見る。
そこには。
桜並木を歩く少女の絵。
まだ未熟かもしれない。
でも。
心が込められていた。
修司は笑った。
「すごくいい」
結衣は少し照れる。
「下手ですよ」
「うん」
「え?」
「でも前より上手い」
結衣は固まる。
そして。
ぷっと吹き出した。
「何ですかそれ」
「成長してるってこと」
その瞬間だった。
スケッチブックが淡く光る。
結衣が驚く。
「え?」
学園中に光が広がる。
そして文字が浮かび上がった。
【挑戦者ランク:F → E】
「ランクアップ……」
結衣の目が大きくなる。
学園長が現れた。
「おめでとう」
「私が?」
「君は夢を思い出した」
結衣はスケッチブックを抱きしめた。
涙が止まらない。
だけど。
今度の涙は違う。
諦めの涙じゃない。
始まりの涙だった。
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### 次回
# 第四話
## 「一度も勝ったことがない少年」
運動会。
試合。
テスト。
人生で一度も一番になったことがない少年。
「どうせ僕なんて」
そう諦める少年に修司が伝える言葉とは――。
そして初めて知る、
**"勝つことより大切なもの"。**
無限成長学園、第四話!




