表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/100

決死潜入行動録

二人がのぞきをする、描写を細かくしてと指示したものですね。


ヘルヴェルトの並行世界。



 温泉回 ―決死潜入行動録―


 夜。

 山奥の旅館は、深い闇に飲まれていた。

 その静寂を破るのは、遠くの虫の声と、露天風呂の湯が揺らめく音だけ。


 佐波峻は、岩肌に背を這わせながら、慎重に一歩、また一歩と進んでいた。

 腰にはタオル一枚。

 だが、その姿勢、その息遣いはまるで戦場に潜む兵士のようだった。


(――失敗は許されない。見つかれば死だ。だが、成功すれば……至高の景色が待っている)



---


 女湯は近い。

 白い湯けむりが、仕切り壁の隙間から洩れてきている。

 その先からは声が響く。


「ふぅ~……極楽ね」


「お肌つるつるですよう!」


「オレ、やっぱり牛乳頼んでおけばよかったなぁ」


 楽しげな声が、峻の脳裏を甘美に侵食する。

 耳に入るたびに、想像が勝手に映像を描く。


 ――まこちゃんが肩まで湯に沈み、頬を赤らめている。


 ――リリリが水をぱしゃぱしゃ跳ね上げて遊んでいる。


 ――スミスが豪快に大の字で浸かっている。


 その幻想が、峻を狂わせる。


(……今だ。あと数歩で視界を確保できる)


 彼は岩に手をかけ、ゆっくりと体を伸ばす。

だが、岩肌は冷たく、ぬるりとした苔が指先に絡みついた。

 滑り落ちれば音が鳴り、即座に露見。

 喉の奥で息が詰まる。


(落ち着け……呼吸を殺せ。敵に気づかれてはならない)


 湯けむりの向こうから笑い声。

 視界の端に、ゆらめく光。

 あと少し、あと少しで――。

 風が吹き、木々の葉がざわめいた。

 峻は反射的に身を低くする。

 心臓は激しく鳴り、全身を内側から震わせる。


(敵に察知されたか……?)


 だが、女湯の声は変わらず続いていた。


「リリリ、それ以上暴れると危ないでしょ!」


「きゃー! 熱いですよう!」


 緊張と安堵が交互に押し寄せ、峻の背を汗が伝った。


 再び岩に手をかけ、体を押し上げる。

 月明かりが仕切り壁を照らし、湯けむりを白銀に染めていた。

 峻の瞳はその向こうを射抜く。


(視界まで――あと数センチ……!)


 喉の奥で生唾を飲む。

 足が震える。

 だが、それでも覗こうとする。


 その時だった。


「……しゅー」


 低く、しかし確実に耳へ突き刺さる声。

 背後から放たれたそれは、銃声にも等しい衝撃だった。

 峻の全身から血が引く。

 振り返る。


 そこに立っていたのは、湯冷ましに出てきた皆川真。

 タオルに包まれ、髪から滴る雫を月光が照らし出す。

 その姿は女神にも見えたが――眼差しは処刑人そのもの。


「……何を、していたの?」


 その一言で峻は悟った。

 作戦は失敗した。

 退路は存在しない。


「い、いや! これは、その……」


「命を懸けてまで、覗く価値があったの?」


 真が一歩、また一歩と近づくたび、峻の背は岩へと追い詰められる。

 呼吸が詰まり、目の前の視界が狭まる。


 ――そして、閃光。

 真の掌が、峻の頬へと振り下ろされた。



---


 翌朝。

 旅館の廊下には、畳に深々と刻まれた赤い手形が残っていた。

 それはまるで、戦場で散った兵士への血判のようだった。

 


---


 温泉回 ―逆襲の覗き―


 夜。

 月明かりが温泉宿の露天風呂を照らし、白い湯気が夜空に立ちのぼっていた。



---


 女湯


「……はぁぁ」


 皆川真は肩まで湯に浸かり、頬を赤く染めていた。

 湯気が眼鏡を曇らせ、慌てて指先でレンズを拭う。


(……しゅー、きっと今、男湯でのんびりしてるんだろうな)


 想像しただけで心臓が跳ねる。


(いつも“覗き未遂”ばっかり仕掛けてくるんだから……今日は……私が逆に……!)


 彼女は小さく息を吸い込み、湯船からそっと立ち上がる。

 濡れたタオルを胸にぎゅっと押し当てながら、きゅっと唇を結んだ。


 その背中を、湯から上がりかけていたスミスが目ざとく捉えた。


「おい皆川……どこ行く気だ?」


「しっ! 声大きいっ!」


「……怪しいな」


 スミスの鋭い視線。

 真は顔を真っ赤にして、振り返る。


「ちょ、ちょっと……見に行くだけだからっ!」


「……は? まさか覗く気か」


「ち、違う! ……仕返しなの!」


「(ぷっ……皆川のくせに覗きかよ)」


 スミスは呆れ顔をしながらも、面白そうなので結局ついていった。



---


岩場の陰


 二人は露天風呂を囲む岩の陰を、足音を殺しながらそろりそろりと進む。

 湯気が岩肌を這い、月光が時おり照らして二人の影を伸ばした。


「ちょっとだけ背伸びすれば……きっと見えるはず」


 真はそっと岩に両手をつき、つま先立ちをした。


「お前なぁ……」


 スミスは腰をかがめながら、呆れ顔で見守る。


 岩の向こうからは――


「ふぅ……生き返るな……」


 峻の吐息混じりの声が、湯気のざわめきに混じって響いてくる。


 その声だけで、真の鼓動は破裂しそうになる。

 指先まで震え、背筋がぞくぞくする。


「やば……リアルだな」


 スミスがニヤリと口元をゆがめる。


「ちょっと! 真剣に聞かないでよ!」


「いや、お前が一番必死だろ」


 ――その時。


「おねえたーん! どこー?」


 ぱたぱたと小走りの足音が近づく。

 声の主はネリスだった。


「ひゃっ!? だ、ダメ! こっち来ないで!」


 真は慌ててしゃがみ込む。

 タオルがずり落ちそうになり、必死で胸元を押さえた。


 スミスがとっさに立ち上がり、両腕でネリスを抱え込む。


「しーーっ! 今は来ちゃダメだ!」


「えー? なにしてるの? おねえたん隠れてるの?」


「隠れてるけど! 今はすっごくやばい時間だから!」


「???」


 ネリスは首をかしげつつも、スミスに抱えられて女湯の方へ引き戻されていった。


 真は冷や汗を拭いながら、再び壁へ背伸びする。



---

 


 男湯。

 峻は湯船から立ち上がり、ざぶりと水音を立てる。

 月明かりに濡れた肩が光り、筋肉のラインが浮かび上がった。


(や、やば……見えちゃう……っ!)


 真は胸を押さえ、喉から声が漏れそうになるのを必死にこらえる。


 その瞬間。


「……誰かいるのか?」


 峻の低い声。

 振り向く影。


 真はカチンと固まった。

 スミスは慌てて咳払いを繰り返す。


「けほっ、けほっ! えーっと……壁が古いなー、とか……!」


「……スミス?」


「っっ!!」


 真の耳まで真っ赤になり、湯気に隠れるようにしゃがみ込んだ。


 しかし――湯気の隙間から、峻の視線が壁越しにばっちり合ってしまう。


「……まこちゃん?」


「~~~~っっっっ!!!!」


 タオルをぎゅうっと抱え込み、真はその場に崩れ落ちる。

 スミスは腹を抱えて大爆笑。


「ははははっ! 皆川、お前最高だな!」


「笑わないでよぉぉぉ!!」



---


 翌朝


 食堂。

 焼き魚と味噌汁の香りの中、真は俯いて朝ごはんをつついていた。

 頬はまだほんのり赤い。

 峻は隣でお茶をすすりながら、ちらりと彼女を見る。


「……なぁ、まこちゃん」


「……なに」


「覗こうとしたよな」


「……仕返しよ」


「いや、可愛いけどさ」


 真は箸を止め、顔を真っ赤にして俯いた。

 スミスとネリスは向かいでニヤニヤが止まらない。




---


 温泉回 ―三度目の惨劇―


 序章:温泉宿の夜


 月明かりが岩肌を照らし、湯気が夜空にふわふわ立ちのぼる。

 どこか幻想的な雰囲気をまとった温泉宿の露天風呂。

 だが、その静けさの裏で――二人のバカップルは「三度目の覗き」に挑もうとしていた。



---


男湯・峻


「……やっぱ、我慢できねぇ」


 佐波峻は湯船の縁に肘をかけ、ため息を吐いた。


 思い返せば――

 一度目はまこちゃん見つかって説教。

 二度目はまこちゃんが覗きに来た。


(……でも、今日こそ。今度こそ!)


 峻は腰のタオルをきゅっと締め直し、壁際に忍び寄った。

 湯けむりの陰に体を伏せ、足音を殺し、背伸びしてそろりそろりと。



---


 女湯・真


 一方その頃。


「……だって、しゅー、絶対また来ると思ったんだもん」


 皆川真は、胸にタオルを抱きしめながら壁を見上げた。


 過去二回の攻防。

 一度目はしゅーが覗きに来たことを心臓が止まりそうなほどドキドキした。バレないようにしたけど。

 二度目はバレちゃった。


(もう……どうせ来るなら……私も一緒に……!)


 真もつま先立ちで岩に手をかけ、ぐいっと首を伸ばした。




 ――結果。

 壁の両側で、同時に背伸びをする二人。


 湯気のせいで互いの気配はぼんやりとしか分からない。

 しかし、呼吸の音。心臓の鼓動。

 壁一枚を隔てて、それがぴたりと重なる。


「……っ」


「……っ」


 二人同時に固まった。



 そこへ。


「皆川ー? 佐波ー? またやってるだろーー?」


 スミスの声が響く。


「ひっ!?」


「うわっ!?」


 驚いた二人はバランスを崩し、壁際でがつんと頭をぶつけ合った。

 がくん、と揺れる岩。

 ぱしゃーん! 派手にお湯へ転落。



 湯の中で目を開けた瞬間。

 二人は同時に気づいた。


 ――タオルが、ない。


 ぽとり、と湯面に浮かぶ二枚の布。

 月明かりに照らされ、まるで悪意ある証拠のようにぷかぷか漂う。


「…………あ」


「…………あ」


 白い湯気の合間に、互いの裸がくっきりと見えてしまう。


「~~~~~~っっっ!!!!!」


「~~~~~~っっっ!!!!!」


 二人は同時に湯の中へ飛び込み、全力で沈んで隠れる。

 顔まで真っ赤、心臓は爆発寸前。


 壁の上から覗き込むスミスが腹を抱えて大爆笑。


「あはははは! お前ら三回目で両方裸バレって……最高だろ!」


 そこへ、追い打ちのように双子が駆けてきた。


「おにいたん! おねえたん! なにしてるのー?」


「おふろあそびぃ?」


「見ないでぇぇぇぇぇっっっ!!!」


「来るなぁぁぁぁっっっ!!!」


 夜空に二人の絶叫が響き渡った。




主人公がのぞき、ヒロインがのぞき、最後は両方。


これを自分で書くとどうなるんだろう、機会があればやってみようかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ