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7/7

ブルーなあたしは悪役令嬢 ★

ジャンル:コメディ


原案:あっきコタロウさま(ID:704944)



「一体どうして振り向いてくれないの、隼人さま!?」


私立武田学園に入学した桜小路さくらこうじ かなでは、入学式で出会った鷺宮さぎのみや 隼人はやとに一目惚れ。

彼は容姿端麗、運動神経バツグンで、とある大会社の御曹司の爽やかイケメン。

奏の淡い恋心は日に日に加速していくも、ある日、転校生がやってきて隼人と良い感じに!


お似合いの二人に割って入ろうとする奏は、まるで……



挿絵(By みてみん)

 

「なんで……なんであたしじゃだめなの、隼人(はやと)さま」


 放課後、誰も居ない教室――ぽろりとこぼれたのは、おとめの嘆きと珠の雫。

 窓の外、おとめが見つめる先――幸せそうに微笑みあうのは、夢のように美しい二人。


「やだ……まだ、諦めない! だって、何もしてないうちから諦めるなんて、絶対やだ!!」


 おとめは乱暴に涙をぬぐうと窓の外、愛しい人の隣を歩く少女をびしっと指さす。


「待っていなさい、小娘! この桜小路(さくらこうじ) (かなで)、必ず正々堂々と隼人さまを振り向かせてみせるから!!」


 おとめ――桜小路 奏は燃える決意を胸に、茜色に染まる教室を後にした。指さした先の少女が振り返り、笑みを浮かべていたことを知らずに……



 ※ ※ ※ ※



 さらさらと風に泳ぐ濡羽(ぬれば)色の髪、吸い込まれてしまいそうな瞳と長いまつげ。一見冷たそうな氷の美貌……でもでも、実は笑顔が意外とかわいくて、笑うとちょっと幼くなるのがもう本当にたまらないの! それに細く見えて、実はちゃんと筋肉がついているところもポイント高いわ。腹筋割れてるの、この前プールの授業で見ちゃった!


「はぁ~……隼人さまぁ。なんって素敵なのかしら!」


 夜寝る前、ベッドの中であたしの王子――鷺宮(さぎのみや) 隼人はやと――さまのお姿を噛みしめるのが、あの日からのあたしの日課。ああ、なんて幸せな時間!

 今日一日、しっかと焼き付けた隼人さまを、これでもかと反芻(はんすう)してたら……あらやだ、よだれが。


「はぁ~。神様、ありがとう! あたしと隼人さまを出会わせてくれて!!」


 枕を抱きしめまぶたを閉じれば、鮮明に映し出されるのはあの運命の出会い――


 4月、あれは入学式の日の帰り。校門まで続く、葉桜になりつつある桜並木の下で、あたしが落としたものを拾ってくれたのが隼人さま。


「待って。これ……気をつけて」


 ちょっと恥ずかしそうに目を逸らして、あたしに落とし物を差し出す隼人さま。

 そのあまりにかわいい姿に一瞬、息ができなくなっちゃった。だってだって、あたしの好みドストライクなお顔だったから。ええ、思いっきり見惚れました。

 だから、うっかりお礼を言うのが遅くなっちゃったのよね。


「あ……ありがとうございました!」


 我に返った時には、隼人さまはもう歩き出していて。遠ざかるそのお背中に、精一杯のお礼を投げたんだっけ。でもドキドキしすぎて、声が上ずっちゃったんだよね。なんか懐かしいなぁ。


 それから3か月。幸いにも同じクラスだったあたしは、毎日隼人さまを見てきた。

 一見冷たそうに見えて笑顔がかわいいところも、意外と筋肉質な体型も、国語よりも数学の方が得意なことも、なんだかんだで優しいお人好しなところも、学食ではいつも日替わりを頼む好き嫌いのなさも、隠してるけど実はあの有名な鷺宮重工の御曹司だってことも、靴のサイズが27センチだってことも、他にも色々……


「ずっと見てた……なのに!」


 今月に入って、突然現れたあの女!!


 転校生――乙女(おとめ) (ひじり)


 あたしが隼人さまに話しかけようとすると、毎度必ず現れるあの女!

 あたしに向いていた隼人さまの視線を、ことごとく奪ってくやな女!!


 でも、わかってる。隼人さまがあの子に惹かれてしまう気持ちも。

 だって、あの子はあたしとは正反対の、華奢でかわいらしい、フリルや甘いお菓子が似合う女の子。

 元々の色素が薄いのか、ミルク色の肌に天然の茶髪。しかもゆるくウェーブがかかっていて、まるでお人形みたい。さらに目も、カラコンいらずの天然アンバー・アイ。

 一方あたしはといえば……骨太な体格に、黒々としたまっすぐで硬い髪の毛。肌が白いのは自慢だけど、彼女がミルクのような白なら、あたしは青みがかった白……


 わかってる。男の子が選ぶのはいつだって、あの子みたいなかわいいかわいい、砂糖菓子みたいな女の子。でも、あたしだって……


「ダメダメ! まだ何もしてないのに、想像だけで卑屈になっちゃってどうするの、あたし!!」


 ぱんっと両頬に気合を入れて、軟弱な気持ちを吹き飛ばす。


「恋は戦い! 見てるだけで戦いもしない者に、女神は微笑まない!!」


 そうよ。あたしはまだ、何もしてない。ただ、見ていただけ。

 たしかにあの子には毎回邪魔されてるけど、もう戦いは始まってるんだから。だったらあたしはあの子を乗り越えて、隼人さまを振り向かせるだけ!


「よし! 明日こそ隼人さまに声をかけるんだから!!」


 心機一転。掲げた小さな目標を胸に、明日への期待を抱きしめ……ワクワクとした気持ちのまま、あたしはいつの間にか眠りに落ちていた。



 ※ ※ ※ ※



「桜小路! 聖に何したんだ!?」

「違っ、あたしは、ただ……」


 なんで? なんでこんなことになってるの!?

 なんで隼人さまに、あたしが睨まれてるの? なんで……


 朝、登校する生徒たちで賑わう、校舎へと続く道の真ん中で。

 あたしは、なんで隼人さまに睨まれてるの?

 震えるあの子は、なんで隼人さまに守られてるの?

 あたしはただ、あの子に宣戦布告しただけなのに。ただ、正々堂々と戦いましょうって言っただけなのに。


「聖さん、あなたのことは私たちが守ります」

「聖ちゃん、怖かったね~」

「大丈夫か、聖」


 しかも、なんか増えてるし! ってこれ、3年のイケメン生徒会長に、隣のクラスの天然金髪ショタくんに、2年のヤンキー先輩じゃない。学園内でもそこそこ有名なイケメンたちが、なんでこんなところに勢ぞろいしてるのよ!?


「違うって、何が違うんだ。聖を泣かせたのは、お前だろう」

「そんなこと言われたって……あたしにだってわからないし!!」


 最低。むしろ泣きたいのはあたしの方だっての! なによ、あの子のまわりにばっかり味方が集まって……って、ちょっと待って。

 このシチュエーション、ものすごくアレに似てない? アレよ、アレ! ネット小説とかで流行ってる、婚約破棄系悪役令嬢ってやつ!! あたしアレ、好きなのよね~……って、今はそんな場合じゃないわね。


「この期に及んでしらを切るとは、往生際が悪い」


 生徒会長がすごんできたけど、どうしろって言うのよ。わかんないものはわかんないっての。


「テメェ……一発くれてやろうか?」


 ヤンキーがバキバキと拳を鳴らしながらガンつけてきたけど……ちょっとアンタ、か弱いあたしに向かって暴力ふるう気? 顔はいいけど、性格最悪!


「聖ちゃん、元気出して。ほら、これで僕のこと(なぶ)っていいから」


 ショタ天使くんは……ちょっと意味がわからない。とりあえずあたしに攻撃してこないのはいいけど、なんであの子に鞭差し出してるの? ちょっと意味がわからない。


「桜小路……見損なったぞ。乙女みたいな女子を泣かすなんて」


 そして進み出てきた隼人さまの冷たい視線に、あたしの心臓はぎゅっと縮む。目の奥が、鼻の奥が、じんわりと熱くなってくる。

 なんでよ。なんで隼人さままで、その子の味方なのよ! あたし、何もしてないのに!!


 その時、あの子があたしを見た。目が合った瞬間、笑ったの。あの子、あたし見て、笑った。


「……怖い」


 でもすぐにうつむいちゃって。そんで一言、「怖い」って…………はぁ!?


「テメェ、聖が怖がってんだろ」

「そんなこと言われたって知らないわよ! いったい何が怖いってのよ!!」

「その凶器みてぇな、テメェのツラ以外ねぇだろうが!」


 ヤンキーがめっちゃくちゃ失礼なこと言ってきた。

 はぁ!? あたしの見た目が怖い? 失礼ね、どこが怖いっていうのよ!


「その子、怖がってなんかないわよ! だってさっきあたしのこと見て、笑ったもの!!」


 隼人さま、生徒会長、ヤンキーが怪訝そうな顔であたしを見た。天使くんはなんでか地面に転がって、一人悶えてるけど。


「桜小路……おまえ、自分の見た目が他者に与える印象、わかって言ってるのか?」

「聖さんがお前に微笑みかけるわけないだろう。お前、自分の姿、鏡で見たことないのか?」

「ありえねぇ。理解してねぇのが、ありえねぇ」


 3人ともひどくない!? それじゃまるで、あたしの見た目が怖いみたいじゃない!


「待ってよ! あたしの見た目の、どこが怖いって言うのよ!!」


 半分涙目で叫んだあたしに、3人の冷たい視線と言葉が突き刺さる。



「女言葉使う190センチ角刈りガチムチ柔道部員の、どこに怯えるなっつーんだよ!!!」



 きれいにハモった3人の叫びに、あたしはその場に崩れ落ちた。


「ひどい……ちょっと背が高くて骨太で、硬めの黒髪直毛で、色が白いから血管とか透けちゃって浮き出てるだけなのに…………ひどいわ!!」

「いや、桜小路。お前に浮き出てるのは血管じゃない。ヒゲだ」

「あなたのそれは背が高くて骨太ではなく、筋骨隆々と言うのです」

「あとテメェの髪は単なる剛毛だろうが。いいように言い換えてんじゃねぇよ」


 3人から放たれた流れるようなダメ出し口撃に、あたしのガラスハートは崩壊寸前。


「怖い……」


 そこへとどめの一言。あの子、また言った! それに深くうなずく男3人。ひどい……ひどすぎる…………


「奏くんの顔……怖いくらい、わたしの好みなの!!」


 …………は? 今なんつった、この小娘?


「は?」

「はぁ?」

「はぁぁぁぁ!?」

「はぁぁぁぁん!」


 3人の驚きの声と、約1名の変な声がきれいにハモって。

 

「わたしの逆ハーレムに加えるなら、奏くんしかいないって思ってた! 初めて見たときから、ずっと狙ってたの。隼人になんて、絶対に譲らない!!」

「じょ、冗談じゃないわよ! 逆ハーレムってアンタ、バカなの!? そもそもあたしが好きなのは隼人さまなんだから、アンタの逆ハーレムなんかに入るわけないでしょ!!」

「………………え?」


 ひっついてくる小娘、顔面蒼白の隼人さま、いつの間にか距離を取ってる生徒会長とヤンキー、地面で天国にフライアウェイした天使。なによ、なんなのよ、この状況!


「奏くぅ~~~ん」

「くっつくんじゃないわよ、小娘! ああん、待ってぇ隼人さま~~~」

「こ、こっち来んな! おい聖、嘘だろ!?」


 めちゃくちゃな矢印が結び付けたあたしたちの関係。


 武田学園入学3ヶ月目。

 隼人さまには拒否されちゃったけど、そう簡単に諦めるなんてやっぱり無理!


 卒業まであと3年。

 聖なんかに負けてたまるか!

 絶対隼人さまの心を手に入れて卒業してやる!


 ――あたしの戦いは、これからだ!





真実はいつも1つ!


挿絵(By みてみん)



前書きのやつは、奏の脳内イメージでした♡



ちなみにこちらがいただいたネタ(原文まんま)です↓



「一体どうして振り向いてくれないの、ヒーローくん!?」


 私立ニタロウ学園に入学した主人公は、入園式で見かけたヒーローくんに一目惚れ。

容姿端麗、運動神経バツグンで財閥の息子の爽やかイケメンのヒーローくん。

主人公の淡い恋心は日に日に加速していくも、ある日、転校生がやってきて、ヒーローくんと良い感じに!


「許せない、アタシのほうが絶対ヒロインよりヒーローくんを幸せにできるのに!

 ヒーローくんをかけて、勝負よ!」


 って、ヒロインに果たし状を叩きつけたら、ヒロインってば泣いちゃった……真剣に彼をかけて戦いたかっただけなのに!


 一体何がいけないの? え? アタシの見た目が怖い?


 どこが怖いっていうのよ! 

ただちょっと身長が190センチ超の角刈りの柔道部員なだけじゃないの! まったく、なんて失礼な子なの!


 むしろ泣きたいのはアタシのほうなのに、ヒロインちゃんのまわりにばっかり味方が集まって……

ちょっとまって、アタシのこれって、もしかして悪役令嬢ってやつ!? そんな~!



志雄崎あおいさまより、ヒロイン()奏のイラストいただきました♡


挿絵(By みてみん)


私のきったない奏を見た後は、こちらのかわいい奏でお口直ししていってください♡

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぶっとんでたww とりあえずショタ天使のどMっぷりがいい!!ww いやー、奏ちゃんを応援してしまうな、これ! 真実を見ても!w そして、ヒロインいい趣味してるわー!!
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