5月20日(金)放課後2
5月20日(金曜日)放課後2
一瞬、水を打ったような静寂が辺りを包む。
ナギは続けた。
「私が要求する『報酬』というのはね、応援合戦にあるメッセージを1つ付け加えてほしいということなの。
それもメッセージを送る相手にしか分からない方法で。」
「どういうこと?」
誰かが呟いた。
そしてどこからともなくヒュッと鳴る口笛の音。
ナギは輪の中心に立って、すりあわせていた右手を左手で包みこんだ。
恐怖を握りつぶすように両手をギュッと握りしめる。
そして、言葉を探し探し話しつづけた。
3年生のとある生徒のことを心配していること。
どうにかしてとあるメッセージを直接伝えたいこと。
そしてそれはどうしてもこの方法しか無いのだということ。
ナギが話すにつれて、ナギを中心としてどよめきが波紋のように広がる。
一部とまどう声、批判的な声もあったが、ざわめきのほとんどは好意的な色合いだった。
「じゃあ、ナギとの『取り引き』に応じる人は手を挙げてくれる?」
アミがナギの言葉を引き継いで賛同してくれる人に挙手を願う。
多数の手が上がり、賛成多数でみんながナギの協力することが決定した。
もちろん、あくまでもナギが応援団を引き受けることの対価−−「見返り」として。
決行日は青組の第1回応援合戦の練習がある火曜日と決まった。
つづいてナギが計画のあらましを一通り話す。詳しくは月曜日に、と大まかな段取りのあらましをつけたところで、クラスメイトの大半は解散となった。
つづいて、青組の応援団員達とくわしい打ち合わせに入る。
最後に細かい詰めの部分はアミが任せて欲しいとバトンタッチをした。
代わりに図書館の当番はナギが2人前こなすことになった。これは昼にアミと打ち合わせていた役割分担の通りだ。
気がつくと1時間近く経っていた。
図書館業務開始の時間を大幅に過ぎている。ナギはあわてて図書館業務に向った。
図書館では案の定、マルちゃんが1人でカウンターに立ちあたふたしながら貸し出し業務をこなしていた。
ナギをみると目をそらして小さくぺこりと頭を下げた。
耳の色は……見るまでもない。
しかし忙しかったのが幸いした。
ナギは早口で、アミが来られなくなったことを告げると、行列ができているカウンターの返却業務に入った。
他にマルちゃんと言葉を交わす暇はなく、その日は図書館業務に没頭したのだった。
(つづく)




