5月19日(木)夕方6
5月19日(木曜日)夕方6
「でも、ここ2週間位、ナギってばちょっと変わったな、って思っていたの。
図書館の異変のこと、ちゃんと調べようっていうようになって。
……ナギが『だれかさん』、つまり他人に興味をもっているって。
正直、わたし、そんなナギの新しい一面にわくわくした。
だからいろいろ手を貸してきたのよ。
そりゃ……ちょっとは、利用させてもらったりもしたけどさ。
なのに、やっと『三瓶さん』を探し当てたのに、ここで彼女のことから手を引くって、それってまた逃げるってこと?
むしろここは応援するところじゃないの?
私はやめないわよ。
もしナギがやめるというのなら、私が後を引き継いでみせる。
これはあなたに触発された私の気持ち、私の勝手なんだから!」
「アミ……。」
ナギはそれ以上続ける言葉が見つからなかった。
アミもしゃべり過ぎた自分に気がついたのか、すっと口をつぐんでしまった。
(アミはこんな風に思って、探偵ごっこを気取っていた私につきあってくれていたんだ。
初めはバトン練習や、図書館の異変が煩わしく思って、図書館という「居場所」を
……つまりは逃げ帰る場所を守るために始めたことなのに、アミはそんな風に考えていたの。
私、これまでアミの何を見ていたんだろう……!)
夕方の校庭はもう影の中だ。日が傾くにつれ、秘密を秘めた校舎の影はどんどん長くなってゆく。
校庭の端に立っている2人の影もじきに飲み込まれるだろう。
すっと初夏の湿り気を含んだ風が2人の間を通り抜けた。
スカートの裾が風にさらわれてふわりと揺れる……
…………
…………
そして、ナギは唐突にひらめいた。
まるで電球のフィラメントがショートしたように頭の中に電流が走った。
「バチン!」
まぶしい光と熱でこれまで組み立ててきた回路が全てどろどろに溶けあって。
一瞬の後、頭の中で散らばっていたいろいろな情報の破片が急にいっぺんにつながってゆく。
「アミ、ありがとう! ごめん、続きはまた明日!」
いうなり、ナギはくるっと振り返り図書館に向かってダッシュした。
図書館の扉を開けると、カウンターの当番への挨拶もそこそこに、書架に駆け込む。
ナギは自分が歩いた本棚を再びなぞるようにして足早に通り過ぎる。
火曜日、「三瓶さん」とすれ違った時本棚。
ぶかぶかの制服とふれあったスカート。
返却図書を返した後、『太陽の時代』のあった棚。
そして。
……そして、とうとうたどり着いた。
おととい、ナギが『イメージトレーニング理論と実践』の本を取り出した、あの棚に。
肩で息をしながら、ナギは本棚に向かい、そして大きくため息をつくようにはき出していった。
「もしかして、……やっぱりそうだったんだ。」
(つづく)




