5月19日(木)放課後5
5月19日(木曜日)放課後5
「ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ!」
「ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ!」
体育館では演劇クラブの部員達が稽古の真っ最中だ。
体育館の外にも大きな声が聞こえてくる。
アミが体育館の扉をガラガラと開けると、部員達が円陣を組んで発声練習をしていた。
扉の音に、トレパン姿の生徒達が一斉に振り返る。
ナギもそのあとからついて入った……できるだけこっそりと。
しかし、静まり返った体育館の中で、アミよりも頭1つ分高いナギは十分目立っていた。
「和戸さん、やっと来た。待っていたのよ。」
近づいてくるのは部長の栗田さんだ。
「ごめんごめん、さあ、お待ちかねの新開さんを連れてきたよ。どお?」
「うん、……理想的だわ! 」
はきはきした口調でいいながら、栗田さんは腕を組んで値踏みするようにナギを見上げる。
そして振り返ると部員達に発声練習の続きをするように指示をして、いった。
「みっちゃーん! こまちゃーん!」
大きな声にナギとアミがおもわずびくっとした。
……と、円陣から、元気のよい返事とともに生徒が2人ぬけだし、小走りでやってきた。
手には台本らしき緑色の冊子を持っている。
「新開さん! この2人の前に立ってみて。ホラ、背筋伸ばして。」
「あの、話が見えないんだけど……?」
訳の分からないナギはそれでも2人の前におずおずと立つ。
栗田さんは2人をナギの前に立たせると脚本を開いて何やら打ち合わせを始めた。
(ははぁ、また、私のこと、なにかに見立てているのか
……また『王子様』とか? もう、困っちゃうなぁ……。)
(つづく)




