5月19日(木)放課後3
5月19日木曜日 放課後3
児玉さんは声を張り上げて、教室の隅で本を読んでいる生徒に声をかけた。
「……はい。」
分厚い眼鏡をかけた地味……もとい、いかにも真面目そうな顔。
これまたいかにも怪訝な表情でナギ達の方を見る。
制服のリボンの色からして1年生のようだ。
「 そういえば『三瓶ルリカさん』に会ったことがあるっていっていたよね。」
「……はい。」
ナギは心臓がどきんと鳴った。
(やっと、三瓶さんを知っている人を見つけた! しかも直接に会っているなんて。)
机をよけるのももどかしくその1年生のそばに近寄ってゆく。
「『三瓶ルリカ』さんについて知っていることを教えて!
どこで会ったの? あの、『サル』って呼ばれているって本当?」
波村さんと呼ばれた1年生はナギの方をちょっと見上げて、
「……三瓶先輩については何もいいたくありませんっ!」
といい放ち、また本に顔を埋めた。
その断固とした口調からして、取りつくシマはまったく無さそうだ。
児玉さんも肩をすくめるてナギとアミに取りなした。
「という訳なのよ。波村さん、どうしてもしゃべりたくないって。」
(そんな、せっかく直接知っている人がここにいるのに。)
「ねえ、あの、でも……ぜひ。どんなことでもいいから!」
なおも食い下がろうとするナギを、今度はアミが押しとどめた。
そして児玉さんの方を向いていう。
「波村さん、もういいよ、ありがとうね。
さて、ところで児玉さん……例のアレは?」
アミは右手を児玉さんの方に向けると、親指と人差し指をこすり合わせた。
児玉さんははっとしたように1冊の本をカバンから出してアミに差し出した。
「ああ、そうだった! はい、これが今回の報酬。
この本のことでしょ。
絶版になっていて、探すの大変だったのよぉ。
本屋さん何軒もハシゴしちゃったよ。」
「あ、そうそう! このパンダの写真集、欲しかったのよ〜。じゃあ、取引成立ね。」
そして、話もそこそこにナギをそのまま教室の外に押し出した。
「ありがとう、児玉さん。また何かあったらよろしくね!
……ほらナギ、なにぼけっとしているの。さ、行こう!」
(つづく)




