5月19日(木)放課後2
5月19日木曜日 放課後2
2人はまず、文芸クラブに向かった。
文芸クラブは部室が狭い。しかもクラブが所蔵する本−−それもどこぞで買った同人誌が中心−−ですでに一杯なのだ。
なので大抵、放課後に生徒が帰った後の教室を借りて活動をしている。
今日の活動場所は、1年D組。
ナギとアミが教室のドアをたたくと三々五々に本を読んでいる生徒達が一斉に顔を上げた。
「児玉さん! ナギ……新開さん連れてきたよ!」
「あ、『ワトソン』がやってきた! 新開さんもようこそ文芸クラブへ!」
長い髪をお下げにした生徒が立ち上がり、2人に近づいてくる。文芸クラブの部長、児玉さんだ。
他の生徒は相変わらず席についたまま、無言で何やら書き物をしたり、分厚い本を呼んだりしている。
「じゃあ、新開さん、早速だけど、ちょっとそこに立ってちょうだい。」
ナギは訳の分からないまま児玉さんの前に立たされた。
児玉さんは顔を見上げてナギの顔をじっと眺めたそのまま首を傾げて、今度はナギの周りをぐるりと回る。
「新開さんって身長、何センチ?」
「え、身長……? 176センチ、くらい……かな。」
何てぶしつけなことを聞くんだろう。ナギは内心憮然として、児玉さんを睨みつけた。
しかしナギの気持ちとは正反対に児玉さんの眼がナギを見上げてきらりと光った。
「あ、そうそう、そんな感じ!
その上から目線っていうの、この絶妙な身長差から生まれるドSな感じ!
やっぱり実際に目の当たりにするとちがうわぁ……!」
「な、さっきから一体何なの?」
「あれ、アミから聞いていないの? 私の小説のモデルになってくれるって。
ね、私の『王子様』になって! 小説が書き終わるまでの間でいいから!
あのね、背が高くて、ついでにでツンデレの設定なのよぉ。まさしくイメージにぴったり!」
児玉さんは一気にまくしたてた。ナギが唖然としているのに気がついて、アミが慌てて口を挟む。
「あぁ……それはいいかもね。それよりも、ほら!
児玉さんこそちゃんと調べてくれた?
3年生の先輩で『三瓶さん』って。文芸クラブには所属していなかった?」
今度は児玉さんは、急に真顔になっていった。
「ああ、その話ね。『三瓶さん』という先輩は私知らない。
私の知る限り、文芸クラブにはそういう先輩はいないよ。
ただ、ちょっと待ってね……ねえ、波村さぁん!」
(つづく)




