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5月19日(木)放課後1

5月19日木曜日 放課後1


 6時間目の授業が終わって、ナギは、トイレに行っているアミを待っていた。

そこへ、応援団員の阿部さんと三津谷さんがやってきた。


「どう? 心は決めてくれた?」


 応援団のことだ。ナギはそのことをすっかり忘れていた。


(そうだ、明日が返事をする日だったんだ!)


「なんだか、引き受けたも同然、って噂があちこちから伝わってきたんだけど、実際のところ、どうかな〜、って。」


三津谷さんの目は期待に輝き、両手を胸のところで合わせてこすっている。


「もったい付けていないで、今、答えてくれてもいいんだよ。」


「あ、あのね……、」


 実際のところ、ナギは『三瓶さん』のことで頭が一杯で、全くそれどころでなかった。

応援団のことは何も考えていなかったのだが、とてもそんな返事が出来る雰囲気ではなかった。


 すると阿部さんが続けていった。


「応援団決まったら、いろいろ相談したいことがあるのよ。1年の団員も楽しみにしているのよ。」


 1年と聞いて、ふっと頭にマルちゃんの顔が浮かぶ。


「……ごめん。やっぱ、明日まで待って。」


 ナギはこういうと、そそくさとアミのところに走っていった。


 ところが、トイレから戻ってきて教室の扉の所に立って待っているアミに近づくに連れて、ナギは何ともいえない異変に気がついた。かなり強い香り−−なにかの柑橘系の香りだろうか−−がアミを包み込んでいた。

あまりにきつい香りに鼻がむずむずして、思わずくしゃみが出る。


「ク……クシャン!」


ナギは鼻を押さえながら、思わずアミに尋ねる。


「……ねえアミ、もしかして……香水かなにか付けてる?」


 すると、アミは満面の笑みを浮かべた。


「やっぱり分かる〜? この香り、今をときめく超人気アイドルグループがプロデュースした香りなの。

『 レモン・トレイン』っていうの、ナギも知っているでしょ。

めっちゃプレミアがついちゃっていて、ゲットするの大変だったんだよ。」


(レモントレイン?? ……それにしても、アミったら、どんだけ吹きかけたのよ。はっきりいって……く、くさい!)


 アミは得意げにアイドルグループの事やら、いかにこだわった香水であるかを説明する。

しかし、これでもかと香ってくるのは、トイレの芳香剤の方がよっぽど機能的で高級感があるのではないかという位安っぽい香り。

ナギは友達として一言忠告した方が良いかと思った。

……が、しかし、友人の、いかにも無邪気で得意げな様子を見ると何もいえなかったのだった……。


(つづく)

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