5月17日(火)放課後3
5月17日火曜日 放課後3
貸し出し終了の案内の放送が入ったころ、ナギもカウンターに向かっていた
開館時間いっぱい、あちこちの本棚から本を引っ張りだしては番号とにらめっこしていたため、肩がばりばりに凝っていた。
軽く肩を回しながら、カウンターに向う。
カウンターは、その日の終了作業が一段落ついた所らしく、人影はなかった。
1年生がカウンターにかがみ込み、今日の分のまとめを日録に書いている。
その脇で、ナギを見付けたアミがきょろきょろしている。
ナギを見つけるなり、伸び上がって手招きをする。
口をぱくぱくさせて、ひどく興奮した様子だ。見ると、手にはなにやらピンクの紙。
思わずナギはカウンターめがけて駆け寄った。
バン!
机に叩き付けたのは、A6サイズの図書予約票だ。
(アミ! ちょっと音、大きい!)
と、いいかけたとき、ナギは予約票の学籍番号に目が釘付けになってしまった。
なんとそこには、この1週間追い求めていた学籍番号が書かれていた。
そう、「M09088」と。
そしてその下の名前欄には緻密な文字でこう書かれていた
「三瓶ルリカ」
予約図書の欄にもナギの眼は釘付けになった。
それはなんとナギが今借りている天体写真集だったのだ。
鉛筆で小さく丁寧に書かれた文字は、まぎれも無く『マウナケアの空を見上げて〜ハワイの天文台』。
……カラン……。
ナギの心からバトンが滑り落ちた。
もしかして、さっき棚ですれ違ったあの小柄な生徒?
ナギの耳にあのキュッ……と鳴ったあの足音の?
(間違いない。)
ナギは直感した。
(彼女だ!)
あの、小柄な生徒。あの人がこの予約票を書いた「M09088 三瓶ルリカ」さんだ。
「やったじゃん。名前ゲットだよ!
ああ、でも悔しいなあ……私、カウンターに居たのに!
丁度他の生徒の検索相談をしている時に来ちゃったみたいなのよ。
気がついた時には予約票だけが机の上に置かれていたの。」
アミははしゃいだ気持ちを隠しきれずに、早口でささやく。
ナギはうなずきながら、手早くノートを取り出し名前を書き写した。書きながら混乱していた。
(それにしても、どうしてこんなに時間が経ってから探しに来たの?)
ナギは心の中で彼女に問いかける。
(あなたが本を借りたのは私より前、5月2日のことじゃない。今日はもう17日よ。
あの単行本『レグルスからの伝言』にあった情景が見たくて、あの天体写真の写真集を探したんじゃないの?
……なぜ私が彼女を追い越しているの?)
(つづく)




