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5月17日(火)放課後2

5月17日火曜日 放課後2


 手にとった本をぱらぱらめくってみると、先ほどの生徒がこちらに近づいて来るのが分かった。


(どうしよう……このままじゃすれ違ってしまう)


 ナギは内心焦った。


 静寂に包まれた狭い空間で他人と一緒にいるのは何となくバツが悪い。

なので、手に取った本をもって棚に身を寄せるようにして道を譲った。

ナギの背後を通り過ぎるとき、かすかな衣擦れの音がして、ナギのスカートの裾とその生徒のスカートがふれあった。

そのまま通り過ぎてあるところで立ち止まった。


キュッ…


 つい今し方、丁度ナギが見ていた棚の辺りだ。

その上履きの音を背中で聞きながら、ナギが向かったのは、先日の『太陽の時代』の本がある「歴史」の棚だ。


(あ、あった。)


『太陽の時代』は正しい位置に納められている。

ナギは棚から抜き出して本を手に取り、表紙に貼られたバーコードの番号を見る。

そして、手に持ったプリントアウトと見比べる。

番号は……当たり前だが、ない。

ナギは隣にある本を順に取り出し番号を見比べてゆく、……ない。

ついでに上の段も見る。

やっぱりない。


(……他の棚はどうだろう。)


 今度は『太陽』の本が紛れ込んでいた、科学関係の本の棚に向かう。

その棚は、星や宇宙について書かれた本が中心の棚だ。

この棚は先日ナギも本を借りに来たばかりだ。


 あの日、初日のバトンパスの練習の後、ナギはこの棚にある天体写真集『マウナケアの空を見上げて〜ハワイの天文台』を借りたのだった。

ナギはその写真集のが入っていた辺りに、1冊分の隙間が開いているのを何となく目で確認する。

そして、本がきつく差し込まれていた辺りの棚の本を片端から取り出して番号を確認し続けた。


(やっぱり、ない、か……。)


それから最後に向かったのは、900番の棚。

それはページが破られた『レグルスからの伝言』が置いてある「その他海外文学」の書架だった。

棚にぎっしり並んだ本を眺めながら小さくため息をついた。


(この方法、あまりにも効率が悪すぎる。)


ナギはげんなりとした気持ちになった。

改めて自分のしようとしている事がいかに無謀な事かを実感したのだった。


(つづく)

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