表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/78

5月17日(火)放課後1

5月17日火曜日 放課後1


 アミとナギは一緒に図書館に向かった。

打ち合わせ通りアミは当番のカウンター業務につく。

一般生徒の本の貸し出し、返却の業務の合間にパソコンの機能を調べる手はずだ。


 ナギはアミに目配せをすると、書架の間に足を踏み入れた。


(さて、どこから手を付けたらよいか……。)


 マリジョ図書館は余り広くはないが、その分、棚が天井までしつらえてある。

そして、そこには5万冊の本がぎっしりと詰まっているのだ。

見上げると書架には小さく分類番号が貼ってあり、まるでマンションの棟番号のようだ。

大量の紙に外界の音は吸収されて、なじみ深い静けさに包まれた。


 東側の窓際には学習机のブースがいくつか並べられている。

ブースの大半は、生徒で埋め尽くされていた。

おそらく受験勉強中の3年生であろう。


 あと、奥の棚にも1人、小柄な生徒が書架の前に立って棚を見上げている。

遠目から見ても華奢な体、ぶかぶかの制服。

おそらく1年生だろう。

あそこは図書分類番号によれば400番台……そう、科学の棚の辺り。


(あんな棚に用事がある人なんて、珍しいな)


 ナギはそんな様子をチラリと横目で眺め、視線を戻した。

改めて薄暗い書架の森に向き合う。

書架は静まり返っていて、とても広く奥深く見えた。

蛍光灯だけがかすかにジジ……と音を立てている。

ナギはその片端に立ち、6冊の本を探し出そうとしている自分を想像する。


(やっぱりアミのいうことの方が正しいのかも……。)


書架を見上げて、ナギは、あらためてぞっとした。

寒気を振り払うように頭を軽く振った。

しかし、アミの言う通り、ここで怖じ気づいていては何も前に進まない。


(そうだ、チョーカイに言われた本を探そう。)


 ナギは、小さな勇気を奮い立たせるために、目の前にある簡単な問題から片付けることにした。

そしてまず、てっぺんの処に小さく「300社会科学」と書かれた札が貼り付けてある書架に向かった。


 図書館で本を効率よく本を探すなら、カウンター脇の生徒用検索端末でキーワード検索を入れるのが手っ取り早い。

しかしナギはこうやって棚を直に見ながら本を探すのが好きだった。


上から一冊ずつ、丹念に番号を辿ってゆく。

本の背表紙に貼られたシールに「370」の番号のある棚にたどり着いた。

腰をかがめて注意深くタイトルを見比べてとうとう見つけた。


 それは、学校教育の体育理論『イメージトレーニング理論と実践』とタイトルされた本。

ナギは手を伸ばして、四六版サイズの薄いソフトカバーを静かに引き出した。


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ