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5月12日(木)早朝1

5月12日木曜日 早朝


 今日で体育祭まであと1ヶ月。

朝の校庭は日増しに明るさを増している。

新緑の香りを含んだ風が吹くたびに新緑の色も鮮やかな桜の枝はさわさわと揺る。

そこかしこにさく雑草の一本一本が、この季節特有の命の輝きを放っていた。


 そんななかマリジョのグラウンドでは、相変わらず陸上クラブが中央に陣取って朝練をしている。

なにやらかけ声をあげながら体をひねり、ひざを高くあげる独特の動きをしたり、短いダッシュを繰り返している。

なにかスポーツ科学的に理にかなった特別のメソッドがあるのだろう。


 一方ナギは校庭の隅っこの方に縮こまるようにしゃがみ込んで靴ひもと格闘していた。

朝練3日目。昨晩は遅くまで考えていたためなかなか寝付けず、まだ眠気が残っている。

悩みごとの内容は2つ。

1つは新しい靴のことだった。

本心をいうと、ナギは新しい靴を履きたくなどなかった。

昨晩の両親とのやり取り、特に父親の仏頂面の奥に隠された「期待」が心底重く疎ましかった。

 

 しかし一方で、ナギは思う。

高校の体育祭に来るといっていた両親の手前、せっかくもらった靴を履かないというのはいかにも気まずい。

だからナギは一生懸命理由を考えた。


(そう、新しい靴を履くときは足慣らしをしないと、靴ずれをおこしやすいものよね。

今回の靴がもし足に合わなかったら……、それこそ他の選手に迷惑をかけてしまうかも。

それは避けなくては!)


 そんな風に考え、ナギはまず、いやいやながら部屋の中で靴を試し履きしてみた。

すると驚いたことにそれは見事に足にフィットしたのだった。

スポーツギアにありがちな派手な色使いとは裏腹に、靴はまるでナギの足を知り尽くしているかのようだった。

土踏まずに、甲に、かかとにフィットする感触の心地よい事といったら。

しかも、それにとてつもなく軽い。

なぎは、これまで履いていた運動靴がいかに重かったのか思い知らされた。

そして、絨毯の床で何度か足踏みをたり、つま先でとんとんと床を蹴ったりしているうちに、ナギは「不本意ながら」この靴で、実際に足を慣らしてみたくなってしまったのだった。


(靴を慣らすのなら早い方が良いかも。体育祭に間に合うように……。)


 なので、ナギは今朝早速靴を下ろして学校に履いてきたのだった。

新しい靴ひもはまだごわごわして結びにくかったが、ナギはそれを押さえつけるように蝶結びにきつく締めなおす。

右が終わったら左。


(つづく) 

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