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異世界対策室 ~異世界ゲートが開いたので、まず法律を作ります~  作者: 大崎 忍


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第2話 現在調査中

「7月X日、港区のマンション建設現場で、ワープゲートと思われる入り口が発見されました。東京都といたしましてはこれを資源開発、土地開発の可能性が広がる重要な発見と考え、調査に取り組んでいく所存でございます」


 文化庁職員のスマホには、ワープゲートの写真の横に立って会見を行う都知事の姿が映し出されていた。


「ワープゲートと言いますが、どこに繋がっているのです?」


「依然調査中です」

 

 記者の質問に調査中と都知事が答えていく。


「このタイミングで公表するか普通。目立ちたがりがすぎる」


 大沼が噛み殺すように言った。


「どうしましょう。これやばいんじゃないですか」


「まじで最悪だ。まだ何にもわかってないのに、下手したらYouTuberが大挙して押し寄せるぞ。時間が惜しい。タクシーで戻る。夕方の定例会見に乗せてもらうから渡辺は原稿書いて」


「了解です」


「あとは都に抗議」


「抗議するより、このまま災害派遣要請をしてもらったほうがいいでしょう。都知事が前向きなのは考えようによってはラッキーですよ」


「確かに目立ちたがりも使いようだ」


 タクシーに乗り込むと、大沼は深いため息をついて杉浦に電話をかけた。


◇


「7月X日、東京都内において、地下空間に関する通常では想定しがたい事象が確認されました」


 官房長官の会見に記者から質問が飛んだ。


「ワープゲートのようだという情報がありますが、政府としては今回の現象をどのようにお考えですか?」


「現在調査中のためお答えできません」


「調査の方法や時期はいつごろをお考えでしょうか?」


「詳細な回答は控えさせていただきます」


 記者からの質問は絶えなかったが、官房長官は全て調査中で受け流した。


◇


 現場となっている港区白金の建設現場は、警察によって封鎖された。夕方から夜にかけて、テレビ局の中継がひっきりなしに入り、建設現場の白い壁を写した。


「現場から中継です。現場は白い壁に覆われておりまして、中をうかがうことはできません。都知事が発表したワープゲートのようなものは、この中にあると考えられています。先ほど一度関係車両が中に入ったのですが、ビニールシートがかけられておりまして、詳細な状況はわかっておりません」



◇

 

 Xはこの日、ワープゲートの話題で持ちきりだった。


「港区にワープゲートができたらしいw超SFじゃん」


「異世界転移キタ!!!!エルフや獣人いるかな」



◇


 報道陣が囲む建設現場で試料を採取した国立環境科学研究所は翌朝、土と空気の組成について速報を上げた。


「土はローム質、生えてる草はイネ科と思われる。土壌の基本的な細菌・真菌群は地球の温帯草原によく見られるものと考えられる。空気は、窒素約78%、酸素約21%、アルゴン約0.93%」


「なんだ。これじゃ地球のどこかじゃないですか」


 報告を見た渡辺は不服そうな声をあげた。


「そう簡単に異世界なんてあってたまるかよ。ほら、これでおそらくどこに繋がってるかわかるさ」


 建設現場には新たに自衛隊が設営したテントが張られていた。


 まずは、GNSS測位システムをゲートから差し入れて、位置情報を取得しようとした。


「位置情報取得できません」


 テントの中に報告の声が響く。大沼には心なしか渡辺が嬉しそうに見えた。


「ゲートを越えることで、なにかが干渉しているのかもしれません。ドローンで少し離れた場所で位置情報を再度取得してもいいでしょうか?」


 自衛隊の責任者が確認した。


「お願いします」


「ドローン偵察開始。100m離れた地点から開始します」


 今度はモニタにドローン映像が映し出された。待機していた都の職員とともに、大沼と渡辺もモニタを覗き込んだ。建設現場から繋がっているゲートは、向こうでは洞窟の入り口らしいということがわかった。


「GPS機能していません」


 位置情報については、結果は同じだった。


「このまま偵察を進めてもかまいませんか?」


 改めての確認に大沼が許可を出した。


「半径5kmの範囲まで偵察します」


 ドローンからの中継で、しばらく飛ぶと草原から森が始まり、密集した広葉樹林の映像が延々と流れた。


「普通に自然って感じですね」


 渡辺が感想を言う。


「そうだな。まあ、異常がないのはいいことだろ」


 5kmの偵察を終えても、位置情報は取得できなかった。機体を日本側に戻すと、GNSSはすぐに正常に作動した。


「報告します。結果的にGPSは機能しませんでした」


 自衛隊の責任者が、テントの中で報告を待つ大沼と渡辺、そして東京都職員に向かって言った。


「機体をこちらに持ち込むと問題なく作動するので、向こう側では位置情報を拾えない要因があると考えます」


 大沼と渡辺は顔を見合わせた。


「一気に異世界の可能性が高まりましたね」


 渡辺のニヤケ顔に、大沼はめんどくさいことになったと思った。


 

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