第1話 ゲート発見
20XX年7月某日。東京都港区白金のマンション建設現場で発見された地下の扉。その先には、青い空と草原が広がっていた。
「東京都教育委員会によると、地下に埋まっていた扉を開くと、階段があり、そこを下りると草原と青い空が広がっていたそうです。通常の事態ではないと見て、都から文化庁に昨日報告がありました。対応を協議した結果、文化庁単体ではカバーしきれない事態と見て、本日このようにご協力をお願いに上がった次第です」
文化庁の担当職員は、必要な説明をし終わると集まった内閣官房副長官補付参事官 杉浦を見た。
「俄には信じられないですね、地下の扉から空が見えたとは。集団幻覚か何かでは?」
杉浦は低い声で言った。
「お気持ちはわかります。我々も半信半疑でしたが、実際に現地を確認すると都の報告は事実でした。この写真をご覧ください」
文化庁職員は、PCをモニタに繋ぐと今朝撮った写真を映した。
「私がこの目で見たのもこの通りの光景です」
「事実だとしたらすごいね。都心に活用できる土地が増えるかもしれないわけだ」
杉浦は同席している自分の部下2人に向き直って指示を出した。
「これどういうことか調べてくれる?」
「わかりました」
大沼と渡辺は声を揃えて言った。
◇
霞ヶ関から白金高輪まで地下鉄でほんの15分。徒歩を入れてもたった30分の距離だ。とにかく見に行こうと3人は現地に向かった。
「すごいですね。異世界へのゲートみたいじゃないですか。ファンタジーですよ。なろう小説みたいです」
主査の渡辺が興奮して言った。
「僕はまだちょっと信じられないな。さすがにAI画像を使ったどっきり、というわけではないですよね」
参事官補佐の大沼は、渡辺とは違い疑いを隠そうとはしない。
「疑り深いですね。本当だったほうが面白いじゃないですか」
現場は、広い建築現場の一角にビニールシートがかかっていた。文化庁職員は躊躇なくそれをめくりあげた。報告の通り下へ階段をおりると、写真で見た通りの光景が広がっていた。目の前にある車線幅くらいの穴の向こう側は、明らかに地下ではなかった。
「草原だな」
「すごい、まさに異世界へのゲートじゃないですか」
「異世界へのゲートというより、地球上のどこかにつながるワープゲートじゃないか?こんなに地球とそっくりな植生の異世界に都合よく繋がらないだろう」
「それでいくとイギリスっぽいですね。『プライドと偏見』とか『ロード・オブ・ザ・リング』に出てくるみたいな景色です」
「『ロード・オブ・ザ・リング』のロケ地はニュージーランドだよ」
「そうなんですか?まあいいじゃないですか。とりあえず入ってみましょう」
足を踏み出そうした渡辺の手を大沼が引っ張って引き止めた。
「ちょっと待て。この地面に未知の病原菌がいるとか、空気中の酸素濃度が低いとか、そういう危険性を考えろ」
「どう見ても地球なんだったら大丈夫でしょう」
「大丈夫じゃないと分かってからじゃ遅いんだよ。とりあえず、帰ったら土と空気のサンプル分析のために国立環境科学研究所に調査依頼を出そう。あとはそうだな、ドローン飛ばしてどこまで続いてるか確認だな」
「これ異世界だったらドローン飛ばしても問題ないですけど、ワープゲートだった場合、他国に不法にドローン飛ばすのって喧嘩売ってることになりません?」
「確かに。GPSで位置情報確認が先だな」
「どこにやってもらいます?」
「自衛隊に測位と偵察をやってもらうのが妥当じゃないか?」
「都心の住宅地で偵察作戦ですか?根拠法あります?」
「異常な地殻変動だ。災害派遣で整理できないか防衛省と詰める」
「知事要請が要りますよね」
「都にも話を通す」
大沼と渡辺が地下で会話するのをよそに、地上で待っていた文化庁職員は1本の電話を受けていた。
「はい、わかりました。すぐ確認します」
「どうかしました?」
地上に戻った渡辺が声をかけると文化庁職員は血相を変えて言った。
「都知事が本件に関して記者会見を行うそうです」
大沼と渡辺は声を揃えて言った。
「はぁ!?」
読んでいただき、ありがとうございます!
評価欄【☆☆☆☆☆】を押して応援して頂けると執筆の励みになります!




