第19話 関所
身体が痛い。
目が覚めて一番最初に中谷はそう思った。首も肩も腰も痛い。
寝袋から這い出すと、すでに同室の自衛隊員は起きていて、寝袋まで片付いていた。
窓を開ける。湿った冷たい空気が入ってきた。夜のうちに雨が降ったらしく、道のあちこちに水たまりができている。
藁のベッドが2つある部屋を3部屋。朝晩2食に、昼の携行食までついて6人で銀貨4枚。これが高いのか安いのか、中谷にはまだわからなかった。
◇
昨夜の雨で、街道はところどころぬかるんでいた。
荷馬車は何度か車輪を取られ、そのたびに速度を落とした。ついには真ん中の一台が動かなくなった。
後輪が半分ほど泥に沈んでいる。
「あー、これは無理か」
リオは慣れた様子で御者台から降りると、荷物を下ろし始めた。荷を軽くして何人かで後ろから押すと、ようやく車輪が泥から抜けた。
「こういうこと、よくあるの?」
「雨の後はね」
さらにしばらく進むと、先頭の荷馬車がまた止まった。
またか、と思ったが、今度は違った。
街道の先に荷馬車の列ができている。
「これ何?」
桐原がミラに尋ねた。
「関所。ここからヴァルナー様の領地だから」
「ヴァルナーって?」
「ここの領主様」
「僕たち通れるかな?」
「ベルク様の手紙があるんでしょう?」
「ある」
「じゃあ大丈夫よ」
中谷は列の先を見た。街道を塞ぐように木の柵があり、その脇に石造りの小さな建物が建っている。荷馬車は1台ずつ柵の前に進み、係員らしい男たちが荷台を確認していた。
列はなかなか進まなかった。
ようやくミラたちの番が来ると、先頭の荷馬車が柵の前まで進んだ。
「もう戻りか?」
係員が親しげにミラに話しかけた。
「ええ」
順番に荷馬車を確認したのち、中谷たちの高機動車に目を向けた。
「あれはなんだ?」
「連れの馬車よ。ローデンで頼まれてね。一緒にアルデンに行くの」
「ローデンの人間か?」
「違うみたい。外国の人たちだって聞いたけど、私もよくわかってないのよ」
桐原が進み出た。
「はじめまして。私たちは、ローデンの向こうにある国から来た。これを見て」
桐原が出した書状を係員が点検する。
「ベルク様の書状か」
「はい。ベルク様に会って、これを書いてもらった」
「アルデンには何をしに行く?」
「道や町を見る。何を作って、何を売っているかも調べる」
「お前たちは商人か?」
「違う。国の仕事」
係員はそれを聞いて、別の男と何やら話し込み始めた。通常手続きの範疇外だからだろう。
「アルデンで役場に来るように。ミラ、案内してやれ」
「わかった」
係員が柵を開けた。
ミラは馬に乗ると、中谷たちを振り返った。
「ほらね、大丈夫だったでしょう」
読んでいただき、ありがとうございます!
評価欄【☆☆☆☆☆】を押して応援して頂けると執筆の励みになります!




