第9話 名も知らぬ邪神の影
「!?」
カラオケボックスで、エミリと志田が睨み合ってると
「ね、ねぇお姉ちゃん今、感じた?!」
「えぇ、これって……」
志田の後ろで、様子を見守っていた双子の伊藤姉妹は何かを感じ取ったのか急に血の気の引いた顔をしてお互い顔を見合わせた
「おい、どうかしたのか?二人とも」
項垂れ、落ち込む服部をなだめていた格闘部派閥の一人、空手部の藤堂晃が、伊藤姉妹の様子がおかしい事に気付き声を掛けた
「―――感じたの…」
伊藤姉妹の妹、伊藤色が、両肩を自分の両手で抱きながら震えている
「アイツらの・・・邪神の気配を」
伊藤姉妹の姉、伊藤空が、双子の妹である色の背を摩りながら苦々そうにそう口にする
「「「「!?」」」」」
その言葉に、志田と言い合いしていたエミリや雑談していたツーエーの面々が、一斉に伊藤姉妹の方へ視線を向け言葉を詰まらせ驚愕する
「お、おい……何かの間違いだろ?」
自分より小柄な景浦洋子の肩に「心配するな」と優しく手を添えながら伊藤姉妹に問い直す松前
「こんな事、冗談で言う訳ないでしょ!」
銀と赤のスプリットカラーに色分けされたベリーショートが特徴の、170㎝の高身長女バス女子
胸もそんなに無くスレンダーな体系のカッコイイ系美女で、左が銀、右が赤に色分けされているのが、姉である伊藤空だ
その空の双子の妹で、同じ顔で銀と赤のスプリットカラーに色分けされたベリーショートの高身長女バス女子の伊藤色
ただ姉とは違い、色は胸が大きく、左が赤、右が銀に色分けされていて、ひとめで姉と見分けがつきやすくなっている
「松前君だって私らの力――知ってるでしょ・・・」
「別にお前らの「是空」と「是色」の能力を疑う訳じゃないが、ここはゼムルディアじゃねぇ、地球だし日本だぜ!?」
「――だけど、この感覚・・・忘れる訳がない・・・あの時、巧さんが消滅した時に・・・ウッ!!」
「色!」
空が突然胸を押さえ苦しみだした
「あんた・・・まだあの時、巧が消えた時の事を・・・」
「皆!これは一大事よ!伊藤さんらの是空と是色が感知したのなら間違いない!」
水原が壇上で皆に告げる
「邪神がこの世界に、現れたって事よ!」
ザワザワ・・・
「そ、それってまさか・・・!?このままじゃ巧君が危ない!!」
「「「「!?」」」」
黒峰の言葉にツーエーの皆に戦慄が走る
「殺らせねぇ!今度こそ、巧はこの右翼である拳鬼神、服部拳児が守って見せる!!」
服部の胸をポンと軽く叩く松前
「あぁ、俺も同じ気持ちだ、御神が俺達と共に生きてくれてる事自体が奇跡なんだ・・・今度こそ死なせない!この左翼である司令塔、松前修斗がな!」
「「「当たり前だ!」よ!」」」
ツーエーの皆は立ち上がり、その瞳を・・・魔眼に魔力を漲らせ輝かせる
「色、空!邪神はどこに向ってやがる!」
「今探してる――――」
空は眉間に指をあてがいブツブツと何かを口にする・・・・
「見えた!うそっ!奴は巧君の住んでるアパートに向って飛んでるわ!」
「なっ!?おいお前ら急ぐぞ!!」
「斥候なら隠形である我に任せるでござる!」
大田はカラオケボックスを飛び出すと、目にも止まらぬ速さで駆けだした
その後をクラスメートが追う
「あ、有難うご、ございました―――?」
唖然と見送るカラオケボックスの店員・・・
「―――おい、水原らは御神の所へ転移できないのか?!」
物凄い速度で道を駆けながら修斗が麗華らにそう尋ねると
「ダメなのよ!エンゲージの糸が巧と繋がってないから!」
「くっ巧君の一大事に駆け付けられないなんて・・・妻失格ですわ!」
「二人とも!そんな事言って場合じゃないショ!」
ツーエーの面々は歩道だけでなく、車道でも車を縫うように全力で駆けながら巧の住んでるアパートへと向かった
――――そして、真っ先に到着したのが・・・
「間一髪で御座ったな・・・」
「はぁはぁはぁ・・・あぁ、巧は殺らせねぇ!」
大田真人と服部拳児だった・・・
二人が巧の住むボロアパートの上に視線を向けると
背中に巨大なコウモリの羽根を生やした人形の影が浮いていた
【ギギギギギィ――これはこれは、お早い御着きでぇ――勇者部隊ツーエーのお二人】
「てめぇ――邪神の残りカスごときが!わざわざコッチの世界に何の用だ!!」
ファイティングポーズをとる服部の両拳に真っ赤なガントレットが浮かび上がる
【焦るな焦るな、拳鬼神よ、お前らの始末は先に深皇の器を壊してからだ、ギヒヒヒヒ】
「あ”ぁ”?それを右翼であるこの俺がさせると思ってるのか?」
(おい真人・・・今のうちに巧を頼む・・・)
大田はコクリと頷くと、スッと服部の背に隠れ
「隠形術、影飛び」
大田の身体が街灯によって出来た拳児の影の中にスッとその身を沈ませた
「降りて来いよ!このコウモリ野郎!俺とワンマッチと行こうぜ」
ガシッと両手のガントレットを打ち鳴らし、異形の影に向かって指で「コイコイ」と挑発する
【下らぬ・・・そのような挑発に乗る我らではないわ、キヒヒヒ・・・そこで主らが皇の最後を見届けるがよい】
異形のコウモリ男が両手を頭上に掲げると、その両手の間に黒い球体が出現する
【ギヒヒヒヒ、かの深皇であれば我の術など毛ほども通じぬだろうが、今の御神巧であれば、我、ガーゴイルの「黒渦」でも仕留めれるであろうなっ!】
「だから殺らせねぇ――って、言ってんだろうがぁ―――――!オーガブレイク!」
拳児がコウモリ男に向け放った右ストレートの拳圧が見えない拳となって撃ち込まれる
【ガハッ!】
技を出してる隙をつかれ、モロに拳児の拳圧を喰らったコウモリ男は、体勢を崩し蚊蜻蛉のように地面に落下してきた
ドンッ
拳児は落下して来たコウモリ男の頭を踏みつけ、殺意の籠った眼で見下ろす
【ギィィィィィ油断した・・・迂闊、深皇の翼の力――侮ったわ・・・】
「言いたいことはそれだけか?巧を傷つける奴はこの俺が許さねぇ・・・」
【クククク・・・】
拳児に踏みつけられてるコウモリ男が急に笑い出した
【我はただの先兵よ・・・邪神の欠片でもないただの影、例え我が倒されても既に開いたゲートは閉じる事は無いわ】
「な、なんだと!?」
【まぁでも、我にも意地が有る・・・与えられた役目は全うするとしよう・・・】
「?!」
「ダメ――――!」
ようやく先の二人に追いついた水原が、黒渦の方へと手を伸ばし叫ぶ
【死ねぇ―――深皇ぉぉぉ!】
「なっ!?」
拳児は水原が伸ばした手の先に視線を向ける
上空には先ほどガーゴイルが作り出した黒渦が・・・
そして、ガーゴイルの声と共に巧の部屋のある2階へと放たれた!
「巧ぃぃぃぃ!!!」
「いやぁぁぁぁ!!」




