第7話 勇者召喚
「おぉぉ勇者諸君!よくぞ我らの召喚に応じてくれた!」
半径10メートルの円形に壁で囲われた場所に、ブレザーとチェック柄のズボンとスカートの若い男女が集められていた
「お、おい!ここは何処だ!?俺たち教室に居たはずだろ!?」
中央付近で立ち尽くす、松前が周囲を見渡しながら置かれた状況も分からないまま叫ぶ
「おぉぉぉ!これは正に異世界転移でござるな!」
「だ、だははは・・・大田氏、今夜は捗りそうなズリネタ展開だねぇ―――ヒヒヒヒ」
隅っこで大田と影浦は、期待と希望に満ちた目を輝かせ、周囲を見渡す・・・
「さぁ巧殿も、ご唱和あれ――――!せ―――の―――!」
大田が巧と影浦と3人で肩を組み
「「異世界きたどぉ――――!」」ど―――?!い、異世界!?」
やたらハイテンションな大田と影浦さんについて行けてない巧・・・
「お、おいキモオタ共!どういう事だ、説明しろ!!」
服部君が巧の胸倉を掴み上げ睨みつける
「あ、い、いや僕は何も・・・・」
巧は両手をヒラヒラさせ、服部に対し作り笑いをして見せる
「チッ!この状況で何ヘラヘラしてんだテメェ――――!」
「イダッ!」
巧は服部に突き倒され、尻もちをつく
「チッチッ・・・服部殿―――お主なにも分かってござらぬな?ん?」
いつも見下し弄ってる陰キャキモオタの大田がやたらハイテンションな事にイラつく服部
いつもペコペコしている自分に向かってこれでもかと煽って来る陰キャキモオタに、服部はイライラを隠せない
「眼鏡陰キャ―――ぁぁあ!いっぺん死んでこいやぁ――――!」
服部はボクシング部で磨き上げた渾身の右ストレートを煽り散らかす大田の顔面目掛けて撃ち込んだ
「!?」
確かに大田の顔面を捕らえたはずが、拳が大田の身体をすり抜ける
ポンポン
服部の背中が軽く叩かれる
「!?テ、テメェ!どういう事だ!?」
ストレートをくらわせたはずの大田が眼鏡の奥の瞳を輝かせ、不敵な笑みをたたえながら服部の背後に立っていた。
と同時に服部の前の大田の姿が揺らぎスゥ――と消えた
「残像でござるよ?服部殿・・・・プッ、ハットリくんに残像とは・・・プププ、ウケるでござるぅ――――!」
「おぉ大田氏、ギャグの腕をあげたね・・・グヒヒヒ・・・そのまま押し倒して、いじめっ子&いじめられっ子の転生逆転のBL展開!あぁ早く一人で妄想したいぃぃぃぃ!」
影浦さんは恍惚な表情を浮かべながら何やら危険な事を口にする―――
『異世界の勇者たちよ、静まれ!』
!?
室内に響き渡る低い声
『お前たちは、このゼムルディアを蝕む、魔王の脅威から人類を救う為』
『異世界転移してきた勇者なのだ!』
ザワザワザワ・・・・よく見ると2ーAのクラスメート全員がこの場にいるみたいだ・・・
「お、おい・・・そういや山城先生は?!」
『静まれ!!異世界勇者の資格は、生まれてより10,800夜以内の者しか得る事は出来ない!』
「いち万?八百!?」
「はぁ――――服部君もう少し勉強頑張った方がいいのではないですか?つまり、30年・・・30歳以下の者しかこの場に居ないって事でしょ」
黒峰が不機嫌そうに腕を組んでそう口にした
「えぇ~マジヤバじゃねぇ?つか、アタイら未成年がこんだけ行方不明になったら学校マジバズんじゃね?」
黄瀬はスマホを取りだし、テックトップを開こうとする・・・・が
「マジ!?ここ圏外なんだけどぉ―――!今時ありえなくない!?」
黄瀬の言葉にクラスメート全員がスマホを取りだし確認する・・・
クラスメートはお互いに顔を見合わせ絶望した表情で首を横に振る(大田と影浦以外)
『お前たちには、これから初級の基本ジョブの確認をしてもらう!』
さっきから偉そうに、話しているのは会場内の上部に突き出したテラスで大きな杖を手にしている司祭ぽいジジイだ
「おぉぉぉ!北北!来たぁ―――!早速の涎展開!さて誰がチートジョブをGetし、誰が外れジョブをGetするのかぁ――――ヒヒ・・・お約束なら、我ら陰キャ3人衆から外れジョブが選ばれるはずでござる、グへへへへ・・・」
『―――さぁ、最初にジョブを確認する勇気ある勇者は何処かぁ――――!』
〇駅前にあるカラオケボックス スモールサウンド(全5室全て、黒峰麗華貸し切り状態)
「いやぁ―――あの時はマジで焦ったぜ」
「グフフフ、拳児殿が一番ビビッておったでござるからな」
「違いねぇ―――!」
「あって、テメェら!それは言わないって約束だろ!」
松前の頭をヘッドロックし拳をグリグリと整った顔に押し付ける
「―――ちょっと、今はそんな10年以上前の昔話で盛り上がってる場合じゃないわ」
30人以上入るパーティールームのステージ上でマイクを手にした真希が、じゃれてるクラスメートを注意する
「他にも気付いてる人もいらっしゃると思いますが、本日ツーエー勇者部隊の面々にお集り頂いたのは、他でも有りません、私らの巧君の事です」
その横で同じくマイクを手にスピーチする麗華
「そうなの~タクミンたら、私らの事を随分と警戒してる―――って言うか、おそらく苦手に思ってるって言うかぁ―――嫌われてる?感じなんだよ~アタイ悲しくて寂しくてぇ―――」
エミリもマイクを手に、皆に訴える
「う、うそだろ・・・御神が俺たちを・・・」
「有り得ねぇあの時、相棒だって言ってくれたのに・・・」
「拙者らには、そんな感じないでござるが?なぁ妖狐(洋子)殿?」
「ギヒヒヒ・・・そ、それは、オタオーラによるアドバンテージというブーストだ、キヒッ」
「ちょっと待ってくれ・・・ここは冷静になって整理しようぜ」
松前は、皆の方を向き考えだした・・・
「修斗君、考える迄もないわ」
麗華が苦々しそうにそう口にする
「えぇ―――あの時、女神が示した邪神の破片を全て回収し、報告したときの事、よく思い出して」
『これで、私の世界に散らばった破片は全て回収されました・・・』
『貴方がたの望みは、深皇である御神巧の復活と彼との再会でしたね――――』
『その願い――全て叶えて差し上げましょう―――』
「で、確かに俺たちは、あの時みんなを守る為に自らを犠牲にし消滅した御神と再会する事が出来た・・・出来たけども・・・」
「え?ま、松前!?俺にはさっぱり分からなねぇ!」
服部は自分だけ理解出来てないことに焦り松前に説明をお願いする
「つまり、女神がやった事は・・・俺たちを異世界転移する直前の時間軸に再転位させる事だった」
「えっと――――つまり、俺たちが急に10歳近く若返ってたのも、俺たち自体があの異世界転移が発動した10年前の、高2になった初日に戻されたからって事か?」
「あぁ・・・」
「だ、だったら巧だって――――!?ま、まさか!?」
服部は絶望にそまった顔で松前の両肩を掴み前後へ揺さぶる
「えぇ・・・つまり異世界ゼムルディアで10年間、私らを導き魔王を討伐し世界を救った英雄、深皇御神巧では無く・・・異世界転移する前の普通の高校生の、御神巧なのよ・・・」




