第39話 現れた邪神の上位使徒
スープの味見をさせてもらってから
俺の目は台所に立つ、黄瀬さんの手際に釘付けとなった・・・
一緒に台所に立つ、麗華は教科書通りの段取り
軽量カップで分量を量りながら調味料を加えていく無難で確実
一方で、コンロの前に立つ黄瀬さんは、3ヶ所のコンロの場所を自在に使い分けながら無駄なく料理を完成させていく
そして極めつけは、オムライスだ・・・
プロの様にフライパンの柄をトントンと叩きながら、卵を綺麗に三日月状にすると
フライパンを綺麗に返してひっくり返し、そのままチキンライスの上にオン
包丁で真ん中に切れ目をいれると、半熟の卵があふれ出しながらチキンラスを覆っていく・・・もはやプロの技だ
そして――――
「凄い!」
テーブルに並んだ料理に目を奪われる
コーンスープ 黄瀬さん作
半熟オムライス 黄瀬さん作
チキンソテー 黄瀬さん&黒峰さん合作
特製ドレッシングのツナサラダ 黒峰さん作
近年、御神家で見た事のない豪華な料理・・・
確かに前のテーブルでは置ききれなかっただろう
「さぁタクミンどうぞぉ~召し上がれぇ~」
「「「頂きます!」」」
スープ・・・味見した通りメチャメチャ美味しかった
オムライス・・・ケチャップも卵も甘味が程よく完全に俺好みだ
チキンソテー・・・オリーブオイルと香草でオイル焼きにした鳥モモ肉・・・皮目がパリッとしてて凄く美味しかった
サラダ・・・甘味と酸味が丁度バランスの取れたドレッシングが癖になる美味しさだ
俺は黙々と食べ進めた・・・3人からの視線を感じたが、あえて気付かないふりをした。
それにしても意外だったのは黄瀬さんだ
ここまで料理が上手だったとは、まったく思わなかった・・・
という事は、あの抜群に旨かった卵づくし弁当も、黄瀬さんが用意したと考えるべきだな
誰かに作らせたなんて、失礼な事を考えてしまった事を謝りたい
まぁ生活能力ゼロと言っては見たものの、
それは黄瀬さんの態度や言動からインスパイアした俺のイメージする、ギャル黄瀬の姿
実際は
(能ある鷹は爪を隠す・・・昔の人は上手い事いうなぁ―――)
「フフフフ、アタイにタクミンの胃袋を任せてくれたママさんの期待には応えれたかなぁ~♪」
俺の爆食いに嬉しそうに鼻歌を歌い出した黄瀬さん
「え?もしかして・・・母が皆さんに?」
「えぇそうよ」
「そうなんです、春香様とすでに話はできてます」
「ニャハハ~タクミンのママさん若い上に、理解も良くてぇアタイ、マジママさん大好き!」
知らぬ間に、我が母もこの3人に篭絡されてしまったらしい・・・
「で、でも・・・そんな3人が隣の部屋を借りたなんて知ったら母もビックリしちゃいますよ!」
「え?今朝に挨拶した時には御母様は既に知ってたよ?」
「えぇ昨晩遅くに帰って来られた時にわたくしから挨拶させてもらいましたから」
「ですので、そのテーブルと椅子は手土産という事で贈らせて頂きました」
どうやら、俺だけが、知らされていなかった・・・らしい
「「「!?」」」
そんな事を考えながら、無心でご飯を口に運んでる巧を他所に何か異変を察知した3人の表情に緊張が走る
ピロロロン♪ピロロロン♪
真希のスマホが着信した、真希は着信者名を隣の麗華に見せた
『伊藤空』
「ゴメン巧、マネージャーから電話だから少し席を外すね」
「あ、はい・・・」
真希は視線で麗華とエミリに合図し、2人が頷いた事を確認しアパートの外へ
「何か捕らえたの?空」
『えぇ強い反応が現れて、物凄いスピードで3人の方へ向かってるわ』
真希はすっかり日が落ち暗くなった空を見渡す
「何も見えないわ・・・敵の出現したゲート位置は特定出来る?」
『御免なさい・・・まだそこまでは、今から色とGPSで調べてみる』
「わかった、修斗や拳児らにもこの情報を共有して頂戴」
真希はスマホの通話を切ると、手すりを掴みピョンと2階から飛び降り音も無く着地する
緋色の眼が光り、その中に紋章が浮かび上がる
そしてその右手には、青く光るマイクの様な物が出現した
「さぁ、上から?下から?」
「―――私の声が届くなら関係ないけどね・・・」
スゥ―――と一つ深く息を吸い込む・・・
真希の着ていた寝巻が一瞬にして青い豪華なステージ衣装へと変化し
「行くわよ・・・絶歌 「光陰が翔る空」」
【今ぁ~♪翔ぅ――――光るぅ――――勇気ィ―――】
淡く光りを放つ真希の周囲に無数の光の棘が出現すると
【今こそぉ―――――♪放てぇ―――――!】
何百か分からない無数の光の針が、真希の歌声に乗せて一斉に全周囲に向け放たれた
光の針は、建物を貫通し地面を貫通し飛んで行く
――――そして
アパートの十数メートル先の電信柱の暗闇に、光の針が無数に突き刺さっている箇所が見えた
「そこね・・・出て来なさい」
光の針が突き刺さり、ハリネズミのようになった黒い塊はアメーバーの様に蠢きながらノソっと起き上がると
【さすが、ツーエー勇者部隊の歌姫・・・その歌声から逃れる術無し、というのは誇張では無いみたいだね】
光の針をボロボロと落としながら、黒い塊は徐々に人型へと変化していく
―――そして
額に冠をつけた、中世の貴族を思われるような出で立ちの青年が姿を現した
「へぇ・・・色付きって事は上位の使徒様らしいわね・・・」
【真希さん、悲しいよボクは・・・】
人型となった黒い影・・・だが、その瞳は黒く水晶体部だけが白くなっていた
つまり、普通の人間と逆の配色の瞳
「邪神の残りのゴミカスに馴れ馴れしく名前を呼ばれる筋合いは無いわね・・・」
【この顔・・・忘れましたか?】
真希は、警戒しつつ邪神の使徒の顔を覗きこむように確認する
・・・が、思い出せない
【あんなにも情熱的に求婚したのに、もう忘れてしまわれたのですね・・・悲しいなぁ―――フフフフ】
「悪いけど、邪神のゴミカスから好かれた覚えは無いわね」
邪神の使徒と思われる男は、礼儀正しく胸に手を添え頭を上げると
【そうですか、残念ですが改めまして・・・私はゼムルディア王国、第二王子であり・・・】
ゼムルディアの王子を名乗る邪神が顔を上げると、ニヤリと口元を緩める
【邪神の使徒 第一位階 黒蠅のベルゼに御座います―――】




