第36話 それが、主人公の素養ゆえ・・・
〇十年前 異世界ゼムルディア最大のダンジョン。アビスにて――――
「やったぁ――――皆凄いよ――――!」
初めてアビスに潜り、早1ヶ月
俺たちは、ようやく上層の最深と呼ばれる20層に到達しようとしていた・・・
「え?君、何かしてたっけ?ボク、君の活躍は全然記憶にないよ?ねぇ修斗君♡」
「あ、いや・・・御神だってさぁ・・・なぁ」
皆を称えてみたが、俺に声に反応しないどころか、コッチを見ようともしない皆、俺を路傍の石にしか見てない・・・
「あ、あの・・・僕も一応・・・荷物持ちで・・・」
「あぁ―――そう言う恩着せがましいのマジウザイ」
「ホンそれな――」
「アハハハハ、言ったんなよエミリィ――荷物も熊井っちの半分も持ててないって?陰キャ使えねぇ―――」
「・・・・・・・・」
ギャル派閥の女の子の言葉に俺はリュックの紐を握る手に力を込める・・・
そして少し離れた場所で服部君と藤堂君と談笑している熊井君が背負ってるリュックと、自分の背負ってる荷物の量を見比べ口を噤む・・
「巧殿、気にする事は無いでゴザルよ」
「キヒヒヒ、巧氏は主人公枠のハズレスキル、今は雌伏の時、何れギャル共、スポーツ脳共、インテリ共、脳筋共」
「皆纏めて、床ペロで巧氏に、全裸謝罪必須ぅ―――18禁行為もBL活動も思うままよ!キヒヒヒ」
そんな俺の事を気にかけてくれる(?)二人だけが心の友だ
「うん・・・でも、二人とも凄いよ!」
「それほどでも有るでゴザル!」
「ニヒヒ・・・途中でテイムした兎が良い仕事するザマス!」
景浦さんが、足元から10層でテイムした、アルミラージュを召喚した
「わぁ―――ホント可愛いねぇ―――」
「ブシャァァァァ!」
「ヒッ!?」
アルミラージュの頭を撫でようとしたら、メチャメチャに威嚇された・・・
―――怖いよ
「こら、亀太郎おいたしたらダメである!」
景浦さんがアルミラージュを折檻している・・・
え?兎なのに亀太郎なの?
「さぁ皆、未知の階層、20階に挑むぞ!気合入れろ!」
松前君が、20階への階段の前で皆を鼓舞する
「チッ・・・勝手にリーダー面するんじゃねぇよ」
服部君ら格闘部派閥の面々が、苦々しそうに松前君を睨み付ける
「はぁ―――?アンタらも松前君の加速のお陰で助かってんじゃん!」
「うっせぇぞ、志田!俺らはあんな奴の助けなんか無くても、十分やれんだよ!」
服部君らは立ち上がると
「退け、ゴミクズが」
!?俺を突き飛ばし
捨て台詞を吐きながら、松前君の制止を無視して自分達だけで下の階へと降りてった
「大丈夫でゴザルか?」
「う、うん・・・」
「クククク・・・下の階で、亀太郎の角にてヤツのケツの穴を開発してくれようぞ・・・ヤツとケツ、プッ、ウケるぅ・・・ヒヒヒ」
「それは可哀そうだから止めてあげて!?」
「そ、それじゃ俺たちも気を引き締めて行こうか」
松前君は笑ってしたが、その笑顔は引き攣っていた・・・
―――この時、なにとは言えないが俺は嫌な予感がしていた
「ねぇ大田君・・・パドレさんが居ない時に勝手に未知の階層に進んじゃって大丈夫かな?」
「―――巧殿・・・異世界転移ラノベ主人公に大事な事は何か知っておるかな?」
何を急に言い出すのこの人・・・
貴方がその主人公様でしょうよ・・・
「それは、冒険する事でゴザル」
「冒険?で、でも、今僕たちダンジョンを冒険してるんじゃ・・・」
チッチッチと、指を振る大田君
「冒険とは、危険を友とし背徳を仲間にしつつ、大人の階段を上る事でゴザルよ・・・」
「後、BLやGLの新しい扉を開くこと・・・キヒヒヒヒヒ」
ちょっと、二人の言ってる意味が分からないんだが・・・
「つまり何が言いたいかと言うと・・・何かに守られてる者は冒険してるとは言い難いって事でゴザル」
「クククク、恐れず扉を開く・・・そこにこそ新しい世界が―――」
「で、でも・・・それは二人が強いから言える訳で・・・」
パシュ
!?
大田君が、石を投げて俺の背後から迫って来ていた、ブラックバット(大きな吸血コウモリ)を撃ち落とした
「その通り―――だからこそ・・・拙者らは主人公では無いのでゴザル」
「巧殿・・・力が無くても、巧殿には他の人を守りたいって強い気持ちが有るでゴザル」
「それが、主人公の一番大事な素養でゴザルゆえ―――」




