第33話 秘めたるチャラ男の怒り 金剛の藤堂晃
〇ツーエー女子side
体育2時限分を割き、本日は球技大会に向けての練習時間となった
どうやら、最初の1時限分だけ3年と被ってしまい、グラウンドの関係で
サッカーとバスケは男女交互で2,3年で使用する事になったらしい
まぁ久美(山城)先生の、全くもって自己中な都合で3年と、ツーエーサッカー組の練習になってしまった
―――が、私ら女子チームからしたらご褒美だった。
何故なら・・・
「巧さぁ―――ん!」
「巧そこよ!」
「タクミン!ナイスファイト~」
「巧っち、カッケー!」
「巧君の光る汗も、素敵♡」
「キヒヒヒ・・・修斗も負けるでないぞ・・・」
グラウンドの横の芝生に陣取った、ツーエー女子の応援団
バスケの方にエンゲージ相手がいる子以外は、ほぼ全員がこっちに参加していた。
「あれ?色、空はバスケの方?」
真希が隣で体育座りしてる色に、姉の事を尋ねる
「うん・・・ツーエーの男子・・・皆バスケ素人だから・・・監督兼コーチで」
「へぇ――よく空が納得したわね」
色はフルフルと首を横に振る
「山城先生に言われたから・・・仕方なくジャンケンで・・・」
「なる程・・・それで色が勝った訳ね」
色はグッと拳を握りながら、フンスとガッツポーズする。
「うん、あいこ57回の末・・・何とかこのグーで・・・」
「へ、へぇ――――」
さすが、双子・・・ジャンケンも同等か
「でも、すこし空が可哀そうね・・・」
「うん・・・だから、右目だけシンクロさせてお姉ちゃんにも見えるようにしてる・・・」
確かに、空の右目の奥にはうっすら魔法陣が見える。
「あ、真希さん巧さんにチャンスボールが!」
熊井が投じたボールは、物凄い速さで相手チームのゴールポストへと命中し、跳ね返った
その跳ね返った先に駆け込んでいたのが巧
「いっけー巧ぃ―――!」
「巧さぁ―ん!」
「巧君そこです!」
「巧っち、やっちゃえ!」
彼女らの目の前で、巧は力いっぱいボールを蹴った
パチッと言う軽い音と共に、巧の蹴ったボールが、コロコロと力なく転がる
熊井の投げたボールに飛びついたキーパーは、まだ起き上がってる途中だった。
必死に手を伸ばし、巧の蹴ったボールを追ったが・・・
ピィ――――!「ゴ――ル!」
審判をしている、酒田先生のホイッスルが響く
「「「「きゃぁぁ―――――巧!」巧君!」巧っち!」タクミン!」巧さん!」
「「「「素敵ぃ――――――!」」」」
グラウンドにて――――
3年のサッカー部の先輩が苦々しくその様子を見ていた。
2ーAの綺麗どころの女子の応援団は全員立ち上が、巧に向け大きな拍手を送る
―――当の本人は、その女性陣を見てキョトンとし呆然と立ち尽くしていた。
松前や、藤堂らも陰キャの元へと集まり、皆で巧を讃える。
一方でギリギリと悔しそうに歯ぎしりする、サッカー部の3年たち
「あのクソ陰キャがぁ―――ヘナヘナのゴチシュートが偶然決まっただけで調子に乗りやがって・・・」
「おい、あの陰キャの応援・・・アイドルの水原や、お前が前から狙ってる黒峰もいたぞ?」
「クソッ、密かにワンチャン狙ってた、女バスのデカ乳の方の伊藤妹もいるじゃんか・・・」
「―――おい、お前ら、このままじゃ腹の虫が収まらねえ・・・」
「あぁ・・・松前も舐めてやがるけど、とにかくあのクソ陰キャ―――ギャフンと言わせねぇと」
「俺ら二人のマークで潰すか・・・」
「いいねぇ―――麗華の前で惨めな姿を晒せてやるぜぇ――」
―――3年C組のボールで再開・・・
先程と同じように、サッカー部の2人が2-Aのゴールに迫る・・・
相変わらず、目を閉じ腕を組んでいる熊井君
他のメンバーは先ほどと同じように、抜かれたら執拗に追わない・・・
巧を除いて・・・
「!?マズイ、皆ぁぁ―――巧を守れぇ―――!」
「「「!?」」」
何かが見えたのか松前が急に号令をかける・・・
その声が届くと同時に、サッカー部の3年2人が急に立ち止まり、
クルっと振り返ると巧に向って、パスする様にボールを軽く転がした
「え?」
急に足元へボールが転がって来た巧は、驚きながらもボールを足でキャッチした
「!?うわぁぁ!」
その足元のボール目がけて、サッカー部の3年がスライディングを仕掛け
巧はボールを奪われると同時に、盛大にこけた
そして、3年の一人は倒れた巧の腹部めがけ、強烈なシュートを打ち込む
「うげっ!」
ボールは巧の腹を強烈に打ち付け、ゴールラインを割った
「巧!?」
真っ先に駆け付けたのは、藤堂だった
「と、藤堂君・・・ボールが・・・」
「何言ってんだ!そんな事より大丈夫か!?」
「う、うん・・・少し痛むけど・・大丈夫・・・イテテテ・・・」
2-Aのサッカー班全員が、巧の元へと集まる・・・巧は藤堂の肩を借りて何とか起き上がった
そんな巧と、2-Aの連中を見て醜悪な笑みを見せる3年の2人
「お、おい・・・後輩相手にサッカー部のレギュラーが、少し大人気なくないか?」
3年C組の他のチームメンバーが2人を注意するが
「あぁ?不可抗力だろ?俺がシュートに行ったコースに偶々、あの2年が居ただけだ」
「そうだぜ?お前らも見てたろ?それよりコーナーキックだ・・・まずは同点・・・ここは俺が蹴る」
「あぁ俺の頭に合わせろ・・・一撃で決めてやる」
そして、2-Aの面々・・・・
「おい・・・松前、巧の事を任せていいか?」
静かに立ち上がる藤堂・・・
いつものオフザケの雰囲気ではない
「あ、あぁ・・・全員で巧の周りを固める」
「それで、いい・・・」
―――覚醒職 金剛・・・藤堂晃
普段は、おふざけ枠のチャラ男キャラだが
今の静かな怒りを、淡く光る魔眼が物語る
「アイツら・・・俺たちの巧に手出しやがった・・・な」
「つまり―――この俺の敵って事だ・・・」
ピィ―――――!
酒田先生のホイッスルで試合が再開する
「いくぞぉ――――!」
コーナーキックはサッカー部の3年・・・
バシュッと、勢いよく蹴り出したボールは軽く右に変化しながら、巧の腹にボールを当てた3年の頭に完璧に合わせた
「ナイッパス!貰ったぜぇ!」
身体を反らし、ヘディングの体勢に――――!?
そんな視線の先のボールに、影が・・・
「巧の礼だ・・・死んで来いよ」
3メートル近い高さのボール位置よりも更に高く飛び上がった藤堂は、そのまま右足で軽くボールを蹴り上げた
「ガハッ!!!」
ヘディングに行こうとしていた、先輩の顔面にクリーンヒットするボール
先輩は鼻血を吹き出しながら空中でくるっと一回転し、そのまま顔面から地面に落下した。
「!?テメェ!藤堂!!」
コーナーキックした、もう一人の先輩が藤堂の元へ怒鳴り込んでくる
「テメェさっきのは、わざとだろ!」
胸ぐらを掴んだ先輩の腕を軽く捻り、アッサリ外すと
「あぁ、不可抗力ですよ?先輩・・・シュートカットしに行った所に、偶然先輩の顔があっただけですよ?」
「―――あぁ、今度はアンタの顔面が、俺のシュートコースになるかも知れないですね―――クククク」
「ヒッ!?」
――――結局、顔面を強打した先輩は、盛大に鼻血を出したまま気を失い保健室へ・・・
ピィ――――「ウチのクラスは、メンバー負傷で人数が足りない為、ここで棄権します!1-0で2-Aの勝利!」
酒田先生により試合終了が告げられ、サッカーの練習試合は終了した・・・
「ナイス巧!」「決勝点だぜ!」「マジで最高だよ!」
「え・・・そ、そうなの?」
グイッ
皆とおぼつかないハイタッチをしていると、急に背後から両腕を掴まれる
「じゃ約束通り巧は借りてくね―――」
「んじゃ、あとは男子頑張ってぇ―――」
俺は水原さんと黄瀬さんに引きずられ、松前君や藤堂君に笑顔で見送られながらグラウンドを後にした・・・
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