第32話 ボールは友達だ!行くぞ、熊井君!
「本日の体育の授業は球技大会に向けての練習に充てる!」
「2-Bとの合同だが、かくじ自分の受け持つ担当の競技で班を組め!」
「人数が足りない場合は、ゴリラ・・・五里先生に相談して、随時2-Bとで補充しあうこと、以上!」
―――山城ちゃんは、ハッキリと隣の担当教諭の事をゴリラと口にしていた・・・
しかし、名前が五里だったか・・・でも、まぁ覚える必要は無いよ
――ルビも無いし
「御神、まずはサッカーの方に来いよ!」
「え・・・で、でも・・・」
俺はチラッと服部君の方を見る
チッと舌打ちしながら、悔しそうに「あそこでパーを出さなかったら・・・」とかブツブツ言っていた。
「巧、私もサッカーだから応援するよ」
水原さんが嬉しそうに俺の手を握る
―――今日の、クソ不味い汁の事・・・忘れてねぇぞ
って、そんな事言える訳も無く
「う、うん・・・僕も全力で応援するよ」
と、昨日麗華さんから聞いた「クラスの皆、巧君と仲良くしたい」って言葉を思い出し
精一杯笑顔で答える
キュン♡
「え、えぇ・・・その笑顔で勇気100倍ね・・・」
何故か、水原さんが、幼児向けアニメのアンパンヒーローみたいな事を口にしながら頬を赤らめる・・・
!?
いや、黄瀬さん、麗華さん、他にも伊藤姉妹、保住さん、志田さん、中谷さんらクラス女子の数名の瞳が怪しく光っている・・・
―――気がする
俺たちはジャージに着替えてグラウンドへ―――
「御神柔軟一緒にしようぜ」
松前君が、俺の元へ来て手を差し出した
「う、うん・・・お手柔らかに」
松前君の手を取った
『修斗ォ――絶対に手を放すなぁ―――』
!?
「どうかしたか?」
「い、いや・・・何でもないよ・・・」
さっきの映像は何だ?高い所に居て、眼下には黒い龍がうじゃうじゃと何匹も飛んでる中
傷だらけで、力なくぐったりした松前君が落ちない様に、必死に手を握ってる映像・・・
このあいだ、図書館で借りたラノベの影響?
腑に落ちないが、怪我したら困るので切り替えて念入りに松前君と柔軟をする
「おい!サッカー組のぉ―――集まれぇ―――!」
山城ちゃんに呼ばれて、2ーAのサッカー組だけ集合する
「ワリィなお前ら、3年の方が1クラス多くな・・・お前ら今日は3-Cと練習してくれ」
「先生なんで俺たちなんですか?2ーBの連中ではダメなんですか?」
「―――今度、3ーCの恭子(酒田先生)に、合コン誘ってもらっててな・・・これは仕方ないんだ」
「「「「・・・・・・・・・・」」」」
無茶苦茶自己中な、理由・・・
だが、婚期をだいぶ逃してる山城ちゃんの事は、誰も責める事は出来ない
―――元ヤン教師の明るい寿退職の為、ここは俺たちがひと肌脱ぐか!
って・・・思ってる時期が俺にも有りました・・・
3ーCに、この人が居たとは・・・
以前、麗華に告白して玉砕した自称サッカー部のエースって先輩だ
何度か俺の事を登校中に睨んで来た先輩でもある
「よぉ―――松前ぇ1年生からレギュラーのエリート様が随分と楽しそうなチームに居るじぇねぇか?」
「・・・・先輩方、本日は宜しくお願いします」
松前君は無表情のまま、目の前の先輩に頭を下げた
パシパシと割りと強めに松前君の頭を叩くサッカー部の先輩・・・
「あ、あの・・・その辺で止めてもらえませんか?それって普通に暴力です・・・よね?」
まただ・・・
辛抱できなくて、松前君の頭を叩いていた手を掴んでしまった
「あぁテメェも居たか?クソ陰キャの癖に随分とキレイ処を侍らせて・・・お前、どこぞの石油王の御曹司か?アハハハハハハ」
「だったら苦労しないんですけどね・・・ハハハハ・・・」
―――ホントそれ
「あぁ?先輩を舐めてんのか?クソ陰キャ!しめるぞ!」
「別に・・・そういう意味じゃなくて・・・いえ、ごめんなさい」
「御神、別にお前が謝る事はねぇよ」
「あぁ?松前ぇ―――テメェまで部活の先輩に歯向かおうってのか?」
「黙れよ雑魚が・・・」
「なっ!?テ、テメェ!!」
「俺の事はどれだけ馬鹿にしてもかまわん・・・だが、御神の事や仲間の事を悪く言うのは絶対に許さん!」
「テメェ!」
先輩が松前君に殴り掛かろうとする
自然と体が動き、松前君と自分の体を入れ替える
「!?御神!!」
ガシッ・・・
目を瞑ったが、目の前が暗くなったのに気づき薄っすらと目をあけると・・・
「く、熊井君!?」
熊井君が、先輩の右ストレートをその分厚い胸筋で受けていた
「ってぇ――――!」
殴った方の先輩が、右手を抱え痛がっていた・・・
「今日はサッカーの練習ですよね?先輩・・・格闘技の練習なら何時でも喜んで相手しますよ?」
「て、てめぇ!柔道部の熊井!?」
「あっ俺もいまぁ~す!」
「空手部の藤堂!?」
熊井君の背後からヒョコっと顔を出したのは藤堂君だった
「チッ・・・まぁ良い、練習試合で思い知らせてやる!行くぞお前ら!」
サッカー部の先輩ら数名は、格闘部派閥の二人を見ると、流石に分が悪いと思ったのかスゴスゴと去って行った
「それじゃ―――3-Cと2ーAの30分ハーフだけの特別練習試合!はじめ!」
ピィ―――
先行は3-Cだった・・・
流石はサッカー部3年
見事なドリブルで、2ーAのメンバーを抜き去って行く
―――いや、みんな棒立ち?全然ボールを追いかけてない?
3年のサッカー部レギュラー3人相手に、戦意喪失したの?・・・まぁ仕方ないけど
俺だけが、必死に先輩らの背中を追いかける・・・
だが、GKの熊井君と、ボールを持った先輩が一対一でゴールエリア・・・
「だっはははは―――楽勝!」
先輩が振り抜いたシュートは、綺麗な軌道を描きゴール右上に―――
パシッ
しかし、次の瞬間ゴール中央に立っている熊井君の手の中にボールが有った
「なっ!?何が起こった!?」
「今だ御神ぃぃ!相手ゴールに向かって走れ―――!」
松前君の指示が飛ぶ・・・
訳も分からず指示通り、相手のゴールに目掛けて必死に走る・・・
俺の進路を妨害するため、先輩らが次々と迫ってくる
ガッ
だが、俺の両側からツーエーの仲間が、身体でその突進を阻んだ
「熊井ぃぃ!」
「うぉぉぉぉぉりゃぁぁぁ!」
熊井君の雄叫びと共に投げられたサッカーボールは
ハーフラインを越えなんとそのまま相手のゴールに向かっていく
ゴン!GKであるサッカー部レギュラーの先輩は流石の跳躍を見せ、精一杯手を伸ばすが―――
ボールは無情にもゴールバーに・・・
そして、こぼれたボールに
「いっけ――――!」
俺が右足を振り抜く
パシッ
可愛らしい乾いた音と共に、弱々しくコロコロと転がるボールが、3ーCのゴール隅へとゆっくりと吸い込まれた
ピィ――――!「ゴ―――ル!!」
2-Aと書かれたスコアボードの数字がゼロから1へと変った・・・
「あ、あんなボテボテのシュートが?!」
しょぼ過ぎるシュートを止められなかった、3年のサッカー部レギュラーのGK先輩が悔しそうにゴールポストを殴った
自陣のゴールで仁王立ちしながら俺に向かって親指を立ててる熊井君へ視線を向ける・・・
―――あの場所から、こんな所まで投げて届くとか熊井君の肩ヤバすぎでしょ・・・
肩で息をしながら、そう思っていると
「「「「きゃぁぁ―――――巧!」巧君!」巧っち!」タクミン!」巧さん!」
「「「「素敵ぃ―――――!」」」」
――――へ?・・・何で?
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