第27話 駆ける赤きエンゲージ、魔女 黒峰麗華
自分が情けなかった
幼かったとは言え、自分が起こした不始末を何とか挽回したかった・・・
母がお婆ちゃんの形見を質屋に入れたと知ったのは、まさに麗華から幼馴染であることを否定される前日だった
だから、麗華の言葉は辛かったけども、母さんが俺の為に金に困って大事な形見を質に入れたって事の方が
何倍も痛いし、辛かった
何度も何度も質屋に通い、店主に「お金は必ず用意するから」と頼み込み、質流れしないようにお願いした
贅沢なんか要らない・・・遊ぶ金も要らない・・・
だが正直、このまま貯めてても象牙の櫛を買い戻せる見込みは無かった
だから余計に、麗華が簡単に買い戻していた事が悔しくて、情けなくて・・・
気付けば、辺りは真っ暗になり―――
ここは・・・どこだ?
どうやら自暴自棄になり走っていて道に迷ってしまったらしい・・・
「スマホで現在位置・・・えっ?圏外?」
「しかたない、来た道を戻るか・・・」
振り返り、元来た道を進むが・・・
「あれ?・・・やっぱりここさっきの所?」
周囲には街灯も無く、雲からのぞく星と月の明かりだけが、薄っすらと周囲を照らしていた
「・・・竹林?」
幅の広い舗装されてない道の両側には、ウッソウと茂ってる竹が風に靡きサァ――と葉の擦れる音がする
【ギィィィィ】
「だ、だれか居ますか!?」
前方で赤い光が見えた気がした・・・
【深皇ぉぉぉぉぉ――――】
その時、頭上に巨大な黒い蝶・・・いや、蛾だ
暗闇なので、その輪郭はハッキリとはしないが
月明りの影になった独特な触覚が蝶のそれでは無く蛾のそれであった
「も、もしかして花梨ちゃんが言ってたのって・・・」
【さぁ・・・深皇よ・・・死の鱗粉の贈り物だ・・・】
暗くて何も見えない・・・!?
「い、息がっ・・・ゴホッ、ゴホッ!」
急に息苦しくなり、肺が焼けるように熱い
「ゴホッゴホッ・・・ゴホッ・・・」
目の前がチカチカする・・・耳も良く聞こえない・・・視界も霞んで来た・・・
失われる視界の最後に、数名が俺を取り囲む様子が――――
【さぁお前ら、連れていけ!】
巨大な黒い蛾・・・邪神の下位使徒 モスマンは、傀儡と化した人間に意識を失った巧を何処かへと運ばせた
一方その頃の・・・麗華は――――
物凄く落ち込んでいた・・・
「ヒグッ・・・ヒグッ・・・巧君に本気で嫌われちゃいましたわ・・・うっうううぅ・・・」
ひとり薄暗い公園で、ブランコに腰掛け泣いている麗華・・・
ピリッ
その時、左手の薬指に電気刺激の様な痛みが走る
デロロロン♪テロロロン♪
同時にスマホが着信する
真希からだった
『麗華ぁ!巧に何かあったの!?あ、ちょっエミリ―――』
『タクミン!ねぇ無事!?無事って言ってぇ!』
電話口で二人が叫んでいる
プチッ・・・麗華は既に駆け出していた
走りながらスマホの通話を切り巧を探すため、夜の街へと駆けだした。
(お願い!わたくしのエンゲージ・・・わたくしを巧君の元へ・・・)
左手を握りしめながら、そのエンゲージから伝わる痛みだけを頼りに
ただ、夜の街を駆け抜ける・・・
ビリッ・・ビリッ、ビリリリリィ
エンゲージリングの反応が変わった
「ネロブレイク!」
麗華は右手に漆黒の魔法陣を出現させると、魔法陣が高速で回転を始め・・・
黒い光が収束し、禍々しい巨大な光線となり、魔法陣から撃ち出される
パリィィン!
空間が割れ中から別の景色が広がる空間が現れた
「巧君!!」
そこには、十字架に磔にされた巧の姿が・・・
麗華はわき目もふらず、その空間の中に駆け込んだ
【流石だな・・・ツーエーの魔女、だが深皇は既に我が手の内・・・】
「お前は!」
【我が名は、邪神の使徒、第5位階・・・モスマン】
「使徒・・・やはり、こっちにゲートが・・・」
巧の吊るされてる十字架の頂点に止まってる巨大な黒い蛾・・・第5位階は使徒としては下位だ
だが・・・
【深皇は既に、我が死の鱗粉の洗礼を受けておる・・・我が死ねば深皇もまた死ぬぞ?】
「クッ・・・卑怯な・・・」
【貴様はそこで、深皇が完全に我が手に落ちるまで、傀儡共と嬲られるてろ・・・】
暗闇から、複数の人影がユラユラと起き上がって来た
「――悪いけど・・・巧君は、必ず連れて還るから・・・」
麗華が両手をゆっくり横に広げると、赤、青、緑、黄色の4つの魔法陣が出現する・・・
「深皇のエンゲージ・・・ツーエー勇者部隊がひとり、魔女―――黒峰麗華・・・おしてまいります!」
☆今回もシリアス回・・・




