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俺だけ異世界転移していないらしい 〜異世界で俺と結婚した三人の嫁が、転移前の俺を必死に攻略してくる  作者: nayaminotake
第一章 俺のクラスがおかしい

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第26話 幼い頃の記憶と、祖母の形見


 麗華に連れて来られたのは、俺たちの住む地域に唯一ある公園


「ねぇ久しぶりにアレ・・・乗りませんか?」


 黒峰さんが、指差したのはブランコ


「え、えぇ・・・それは別に構わないんですが・・・」


 なんだ・・・何を企んでる・・・


 周囲に誰か居ないかと警戒しながら、俺は黒峰さんの隣のブランコに腰をかける


「懐かしい・・・この公園に来たのなんて何十年ぶりだろ・・・」

「何十年は・・・大げさでしょ」


「フフフフ、確かに・・・貴方には数年ですものね・・・」

「え?それってどういう――――」


 そう尋ねようとしたが、黒峰さんはブランコに立つと、膝をつかって大きくこぎ出した


「あの時と見える景色が全然違いますねぇ―――」


 黒峰さんの方を見ると、スカートが風で大きくなびき白い肌の太腿が見えたので慌てて視線を外す


「巧君も、一緒にどうですか――――」

「い、いえ・・・僕は・・・」


 見上げると既に日か傾きかけており、公園の遊具の影が長く伸びて俺の足元へと掛かっていた


「あ、あの・・・申し訳ないんですが、特に用事もないなら僕はこの辺で・・・」


 この空気感に居心地の悪さを感じてしまい、俺は先に帰ると告げようとする


 ―――が


「わたくし・・・巧君に謝りたくて」

「え?」


 トンとブランコから飛び降りた、黒峰さんは俺の前に立つと深々と頭を下げた


 黒峰さんが夕日と重なり、その表情を確認する事は出来ないが

 とにかく頭を下げられてる


「あ、あの・・・僕には全く意味が・・・」

「―――わたくしの方には、いくつも巧君に謝る理由があるのですが・・・」


 黒峰さんが顔を上げる・・・

 すこし苦しそうな、悲しそうなそんな表情が逆行で影になって薄っすらと見える


「今、巧君に謝ったのはわたくしらがまだ子供だった頃・・・あれは確か、小学校から中学校に上がる前くらいでしょうか・・・」


 黒峰さんが悲しそうに笑う


「わたくし、巧君に、「幼馴染だって、ふれ回らないで」なんて幼稚で酷い事を言ってしまいました・・・」

「・・・・・・・」


 そう言えば、ここの公園でよく小学校の皆と遊んだな・・・

 その頃の俺は、シングルマザーの母親との二人暮らしにも、家が貧乏な事にも、全く疑問も劣等感も抱いて無かった・・・


 だから、当時幼児体形ですこしポッチャリしていて、家がお金持ちだってことで皆からイジられていた黒峰さんの事を庇ったりなんかしていた


「麗華も一緒に遊ぼうぜ!」

「わ、私も一緒に遊んでいいの?」

「当たり前だろ!お―――い!皆も良いだろ―――」

「巧が言うんだったら、俺は良いぜぇ――」

「私も良いよ―――」


「・・・有難う・・・巧君・・・」

「へへ・・気にすんなよ麗華、よし!ジャングルジムから行こうぜ!」

「うん!」


 あの頃は、母さんが口癖の様に言っていた「皆を守れる男子」って存在に憧れていたし

 なれると思っていた・・・


 麗華は幼児体形から、体重はそのままで身長だけ伸びて

 誰もが振り返る美少女へと成長して行った・・・


 だけど、俺たちの関係は変わらない・・・そう思っていた―――


 事件は、俺が小学校5年生の時に起こる・・・


 俺は、いつも通り麗華に嫌がらせをしようとした男子生徒と揉めて・・・

 ―――怪我をさせてしまった


 担任教師に責められ

 相手の親と本人を目の前に、母さんに頭を下げさせてしまった・・・


「巧は麗華ちゃんの為に、身体をはった・・・それは凄い立派で男らしい事よ、誇りなさい。でも、相手を怪我させちゃダメ」


 落ち込む俺の頭をそっと撫で笑う母親・・・

 だけど母さんは相手への治療費を払う為に、亡くなった祖母ちゃんの形見を質屋に入れた事を知った・・・


「わたくしは、巧君に何度も助けられたのに・・・信頼していたのに・・・周りの噂に流されてしまって―――」

「もう、過去のことですよ・・・気にしてませんので―――」


 俺は、黒峰さんの顔をまともに見る事が出来ず、その場を立ち去ろうとする・・・


「待って!これ・・・・」


 黒峰さんが鞄から取り出した、高級そうな織物でくるまれた・・・


 白く艶のある、象牙の櫛


「なっ!?な・・・なんでそれを黒峰さんが!?」

「春香様にとって、亡き御母様の残された思い出の品・・・僭越ながらわたくしの方で買い戻しさせて頂きました・・・」


 あの日・・・俺が怪我をさせた男子生徒の治療費を支払うために

 母さんが質屋に入れた、婆ちゃんの形見の品

 いつか、質屋から買い戻して、母さんに渡したくてバイト代から少しずつお金を貯めていた・・・


 ―――その象牙の櫛が目の前に・・・


「・・・・ざ・・・な・・・・」

「巧君?」


 ――――あぁ~何だコイツ・・・マジで―――


「ふざけるなぁぁぁ!!!」


 俺は、怒りのままそう叫び、公園から走り去った・・・



☆今回はシリアス回でした。




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