第23話 大田君が、異世界転移の主人公?
〇十年前 異世界ゼムルディアにて――――
「あ”ぁ”?何でテメェが仕切ってんだぁコラァ!」
「お前のやり方では、攻撃手段の無い他の連中が犠牲になるって言ってんだ!!」
「知るかよ!こんな訳の分からん世界で、俺たちはこの拳で生き残る以外にネェんだ!テメェは他の連中に甘すぎなんだ!」
ゼムルディア最大のダンジョン、アビス・・・
その最深部へ到達した者は誰も居ないらしい
女神ティアがこの世界に降臨する以前から存在していたとされる
未知、未踏覇のダンジョン―――
誰が付けたのか奈落と呼ばれるこのダンジョンは、過去何人もの冒険者を阻んで来た
地下43層まで確認されたが、それより下は未知の領域
その地下43層に到達した冒険者パーティーらも半崩壊状態だったと聞く
その生き残りの一人が水先案内人である、元冒険者パドレさんだ
「ヒヨッコ共!!こんな入り口でゴタゴタぬかすなぁ!」
パドレさんは、ファンタージーで言うところの僧侶とかヒーラーと呼ばれる職業だった女性・・・
女性だよね?
齢40歳を超えているであろう、パドレさん・・・褐色の肌には無数の切り傷
茶色の短いくせ毛に、鋭い瞳・・・いや右目は古傷なのか黒い眼帯で覆われている
何よりその巨体とムキムキの筋肉・・・柔道部員である熊井君と同じかそれ以上の巨漢だ
そして・・・右足が義足だ
「ガハハハハ、今のお前らヒヨッコなど右足の無い私でも、ひとひねりだ!」
「「「!!」」」
その言葉に、格闘部派閥の3人だけでなく松前君も目の色が変わる
「―――パドレさん、貴方の冒険者としての実績はかなりのモノだとは思いますが、それは少し僕らを侮り過ぎなのでは?」
「うっせぇ!テメェどいてろ松前!」
「!?は、服部!お、お前まさか!?」
服部君は拳を鳴らしながら、熊井君は肩を柔軟しながら、藤堂君は膝を柔軟しながらゆっくりとパドレさんの前に
「おい、ババァ・・・今なんつった?」
「まさか俺よりガタイがデカいからって、力で勝てるとでも思ってんのか?」
「おいおい拳児ぃ、これでもレディだババァは失礼だろ?」
「ガハハハハ威勢だけはいっちょ前か?ほれ、全員でかかってこいよ・・・ザコ」
「死んだぞババァ――――ボクシング部エースのストレート・・・喰らえぇ!!」
服部君が身を屈め一気にパドレさんの懐に踏み込んだ
そして、既に構えていた渾身の右ストレートをパドレさんの顔面めがけ打ち込んだ
「!?ば、馬鹿な・・・」
―――2-Aのクラスメートもその光景に言葉を失う・・・
パドレさんは服部君の右ストレートを左手人差し指だけで受けて見せた
そして―――
ドガッ
「ガハッ!!!」
軽く殴ったように見えたパドレさんのパンチで、服部君はダンジョンの壁まで吹き飛ばされ失神する
「テメェェェェ」
熊井君はパドレさんの襟を掴み腰を入れ、背負い投げの体勢に――――
ドッ
しかし、パドレさんはビクともしないどころか、そのまま熊井君の後頭部を右手で掴むとダンジョンの床に押し付けた
ガッ
熊井君を押し付けた時に下がったパドレさんの延髄めがけ、鋭い蹴りを放つ藤堂君
だが・・・パドレさんの左腕で簡単に防がれ
そのまま左手で襟首をつかまれ、服部君と同じ壁に投げつけられた
「で?そこの男前・・・お前はどうするんだ?」
「クッ・・・・」
蹴りを出そうと身構える松前君・・・その表情には薄っすら恐怖の感情が見え隠れする
「異世界のご婦人・・・我らがクラスメートの無礼は拙者が御詫び申し上げる、この辺で許してもらえぬか?」
松前君の前に立つ大田君
「お、大田君!だ、ダメだよ危ないよ!」
俺は慌てて飛び出し、大田君の袖を掴んで下がるように促す・・・が
シュッ
掴んでる大田君が一瞬で消え
「へぇ―――見た目はアレだけど、お前は中々見どころが有りそうだな?」
大田君は一瞬でパドレさんの背後に回り込み、短剣をパドレさんの脇腹に突きつけていた。
「イヤイヤ、拙者まだまだ未熟者ゆえ――――!?」
パドレさんは振り返り様に裏拳を大田君にみまう
拳の拳圧で床の埃が舞い上がった。
しかし、それを察知したのか大田君は一瞬で後方へ飛びのきパドレさんと距離をとった
「ガハハハハ、いやいや眼鏡のヒョロガキ・・・お前、名は?」
「大田真人でゴザル」
「じゃぁ真人、お前は暫く後方で待機だ―――お前が居ちゃこいつらの訓練にならねぇからな」
パンパンと地響きがしそうな力で、ガハハハと笑いながら大田君の肩を叩くパドレさん
「まぁそれはそうでゴザルな・・・かしこまった」
「ちょっと待ってくれ!大田が後方!?意味が分からない、何で俺らだけが危険な目に!?パドレさん説明してくれ!」
松前君がパドレさんに噛みつく
ドガッ!
「ガハッ!」
パドレさんに有無も無く殴られる松前君・・・
服部君の時とは違い加減はしてくれたみたいだが、松前君は口の中を切ったらしく口の端から赤い血が垂れる
「今のを見ても分からないのか?今のお前らと真人とじゃ、レベルが違い過ぎんだよ!」
「!?」
「ちなみに私は、元Aランク冒険者だが、真人はすでにBランク冒険者級、それもかなり上位の実力がある」
「それに引き換え・・・・今のお前らは――――」
「Gランク以下だ・・・」
―――パドレさんの言葉にウンウンと頷く大田君・・・
景浦さんと俺以外は悔しそうに俯く・・・
同じ陰キャ派閥のオタクが、異世界でとんでもない強さを身に付けて今まさに下剋上状態になってる・・・
これって大田君が、主人公のラノベの世界?




