第2話 クラスがおかしい
午前中最後の授業「現国」
(色々と幼稚で陰湿なドッキリを考えて来るものだ・・・)
俺の席は窓側の一番後ろ・・・
陰キャ垂涎の最高のポジションなのだが、いかんせん2年の教室は2階なので植木による日除けが無く
日中は非常に眩しい
日陰者にとって日の光は、破滅の光だというのに―――
まぁそんな事はどうでもいいので、改めてクラス主要メンバーの確認とその派閥、それらを我ら陰キャ派閥が独自に割り出したカーストポイントでランキングしたカースト順位も紹介しておこう
現国の教科書を壁にしてクラスの様子を最後尾からうかがう・・・
まず、水原真希だが
彼女はどこの派閥にも所属してない、まぁ芸能活動との二足の草鞋だ。派閥なんていう下らないおままごとに付き合ってる暇は無いんだろう
言ってしまうと水原さんは一人派閥:カースト順位としては特別枠とするべきだろう
次に、大きな派閥を形成しているのが、松前修斗君を中心としたスポーツ派閥
先程の野球部3人衆はじめ、バスケ部、女子テニス部、女子バスケ部の面々が所属している。
松前君の人柄なのか、僕たち陰キャグループにも意外と公平に接してくれるが、唯一格闘部派閥とは仲が悪い
規模や、他のコミニティとの関係値も考慮しカースト順位1位で間違いない。
次に、黒峰さんが中心となる、インテリ女子派閥
この派閥にはクラスの女子の約半数が所属しており、男はいない
とにかく偏差値が顔面も含め非常に高い派閥で、品行方正で先生からの受けも良い
しかし、俺たち陰キャグループと水原、そして後から出て来るが格闘派閥とギャル派閥とは仲が悪い…
所属する人数と、黒峰さんのカリスマ性でカースト順位は2位で良いだろう
そして、その黒峰さんの派閥と反目してるのが黄瀬さんが中心のギャル派閥だ
こちらは、クラスの女子の約3割が所属している
特に黄瀬さんと仲のいい、志田さん、保住さん、藤田さんは、黄瀬さんに匹敵する美人な上、抜群のプロポーションを着崩した制服でこれでもかと色気を撒き散らし、クラスの男どもの理性を破壊する破壊神たちだ
スポーツ派閥の男性陣と、格闘部派閥とは良好な関係だが、水原派閥、インテリ派閥とは相いれないほど仲が悪い
カースト順位は3位が妥当だろう
そして、ガラの悪さならクラスで1番の格闘部派閥
まず中心となるのが、服部拳児君だ
逆立った金髪に鋭い眼付、ボクシング部の期待のエースだが、クラス内での素行はあまり良くない
そして格闘部派閥の残り2人、柔道部の熊井君と、空手部の藤堂君
3人はとにかくギャル派閥に良い顔をするため、僕たち陰キャ派閥をイジリ倒していた最悪の連中だ
クラスでも嫌われているのか、ギャル派閥としか交流は無く、特に松前君のスポーツ派閥とは常に衝突してる
カースト順位は限りなく3位に近い4位として置こう
そして俺が所属する、陰キャオタク派閥
メンバーは俺入れて3人、大田真人君と、影浦洋子ちゃんだ
大田君と影浦さんは二人とも分厚い眼鏡を掛けており、大田君は主に擬態系美少女が大好物で、影浦さんはBL好きの腐女子だ
そして俺がドルオタ―――
クラスの隅のジメジメした所でひっそり生息している俺たちは、スポーツ派閥以外からは常に目の敵とされる
ダントツのカースト最下位だ
キィーンコーンカーンコーン♪
「よし、それじゃ来週は今日の所の範囲で小テストをするからなよく復習しておくように!」
「うぇぇぇぇぇぇ!」
クラス中で現国の先生へのブーイングが起る―――
起る―――
起こってるが・・・なぜか皆顔が嬉しそうだ・・・
「な、なぁ松前この感じ久々じゃねぇ!?」
「あぁ確かに!懐かしいな―――服部」
「!?えっ」
犬猿の仲、水と油、項羽と劉邦・・・相容れないはずの松前君と服部君が笑顔でハイタッチしてる・・・だと?
「―――麗華氏・・・さ、先ほどの・・・げ、現国訳の意味、あだじに教えてちょ・・・ぐへへ」
「えぇ構いませんよ洋子さん、お昼食べながらでも聞きますよ」
「!?えっ」
前の方の席では、黒峰さんに俺の唯一の女性同志、影浦さんが授業で分からなかった所を聞きに行ってる・・・だと・・・
しかも、机を引っ付け、ちゃっかり女子会のように大勢でお弁当を広げ出した・・・
(ま、まさか!?影浦さんも、このドッキリの仕掛け人なの!?)
疎外感―――
僕は何かに縋るように、もう一人の同志の姿を求め教室の中へ視線を彷徨わす―――
あ、居た・・・購買でパンを買って来たんだ―――あっ服部君と松前君の席へ向かっていく
パシらされたか・・・アーメン
【陰キャ語録①パシリ:陽キャなどのクラスカーストの高い者が、カーストの低い者に向かってお使いを頼む行為(お金は渡す事が前提条件、渡さないのはカツアゲ・・・犯罪です)】
悪い事したな・・・俺が大田君と一緒に居れば一人でパシリにされる事も無かった・・・あれ?
良く見ると大田君が手にしているのは焼きそばパンとイチゴミルク・・・
俺の記憶が確かなら、それは大田君の好物であって、松前君や服部君の好物で無かったはず
やばい!このままでは大田君が服部君と松前君の鉄拳制裁の餌食に!
大田君の事を庇おうと席を立ち上がった瞬間、松前君と服部君が拳を握り締め―――
太田君の方へと鋭く突き出した―――
やばい!鉄拳制裁!!
手を伸ばした先でスローモーションのようにその光景がゆっくりと流れ・・・
「え?」
「チョイィ――スでござる!」「チョッス!」「チョッス!」
「ワレの隠形の俊足であれば1階の購買でも、一瞬で往復ござる」
「確かに!」「違いねぇ!」
3人でグータッチ・・・だと・・・
あ、有り得ない・・・もしかして大田君まで仕掛け人側だったのか・・・
唯一の友人だと思っていた2人が、他の派閥トップと仲良しを演じて、俺一人をターゲットにしたドッキリに手を貸すとは・・・
(脅されてるのか?御神が一人、戸惑って混乱してる所を撮影するから協力しろ!とか・・・)
―――そうか・・・でも僕は君ら二人を責めたりしないよ・・・
僕たちは陰キャオタク派閥、クラスカースト最底辺を這いずりまわる存在・・・
強者に巻かれるのは・・・
うん、自然の摂理―――
僕は見事に与えられた道化師の役割を演じて、君らの矜持を全うさせて見せるよ




