第18話 女神ティアからの恩寵・・・俺の職業、探究者って何?
〇10年前・・・転移後の異世界 ゼムルディア
理不尽な召還によって、異世界ゼムルディアに転移してきた我ら2-Aの面々
理解できず納得もしてない服部君ら格闘部派閥を筆頭に、異世界の兵士らに対し抵抗を試みるも・・・
「くっ!放せオラァ―――!」
呆気なく制圧され捕縛されてしまった
「グヒヒヒ・・・あれは正に魔法でありますなぁ・・・ヒヒヒヒ」
「で、ゴザルな洋子殿、拙者的にはワンチャンSF異世界で、超美人アンドロイドにお目にかかれると期待していたでゴザルが―――まぁ、騎士や魔法使い、僧侶系のコスでも満足でありまするぞ」
・・・・1年の時からオタ道を極めんと誓った同志2人だが、流石にこの状況を楽しむ余裕は俺には無い
(―――母さん・・・心配してるだろうな・・・)
ここが大田君らが言う異世界だとして、この物語は日本へ帰れるパターンなのだろうか?
それとも、一生ここで過ごす事になるのだろうか・・・
転生では無いので前者であって貰いたい
楽しそうにしている大田君らには悪いが、今回ばかりは俺も他の陽キャ連中と同じく、この状況には否定的だ。
何より母さんにこれ以上、心配かける訳に行かない・・・
だが、そんな思いとは裏腹に事は進んでいく・・・
そんな俺たちが連れて来られたのは、大きな女神の像が鎮座する教会の様な場所だ・・・
「さぁ異世界の勇者諸君、君らの職業を女神ティア様の恩寵により授かるがよい!」
先程のホールの踊り場で、杖を手に偉そうにしていた爺さんが女神像の前で両手を広げた
「さぁ最初に恩寵を授かる勇気ある者はだれぞ?」
―――だれも前に出ない・・・皆、顔を背けている。
それはそう、だって怖いもん
「テメェが行けよ、クソ陰キャ!」
「イダッ!!」
後ろ手を縄で括られた服部君が、俺のケツを蹴り飛ばし爺さんの前へ突き出した
「おぉ!勇気ある者よ!さぁ女神ティア様に祈りを捧げるのじゃ!」
「い、祈りって・・・(何をどうすれば・・・)」
取り合えず、パンパンと手を叩き合掌して女神ディアとかいう女性の像に頭を下げてみた・・・
【我の世界を救う勇者に・・・神の恩寵あらん事を――――】
「え?何今の声!?」
周囲をキョロキョロ見渡すも、他の連中には聞こえてないのか反応はない・・・
【貴方の職業は、探究者です・・・】
「さぁ最初の栄誉ある勇者の名と、女神ティア様が与えし職業を皆に!」
司祭らしき爺さんが、えらいハイテンションで俺の事を紹介していたが・・・
いや、確かにモブのド陰キャだけどさぁ―――クラスメートに今更、自己紹介とかどんだけイタいんだ・・・よ
と、振り返ると
「!?え、えぇ――――!?」
巨大な教会の礼拝席には、大勢の見知らぬ人々が着席していた・・・
しかもみんな、頭に冠をつけた凄い身分の高そうな連中ばかり
「え、えっと・・・帝理高校2年A組・・・御神巧です・・・女神様なのかは分かりませんが、頭の中で言われた僕の職業は”探究者”です」
しぃ――――ん・・・
あっこの感じ、ココアちゃんの初ライブの時と同じ反応だ
あの時はファンがココアちゃんの力になってくれたけど、俺には―――
「やったでゴザルな!巧殿、職業の名前を聞くだけで分かる、ラノベ主人公ド定番の外れ支援職!」
「ヒヒヒヒ、今回・・・成り上がり物語の、陰キャ主人公は・・・・キヒヒヒ・・・巧氏でありますねぇ――」
本当―――馬鹿にするならする、褒めるなら褒める…ハッキリしてよ君ら・・・親友枠でしょ?
大田君らのせいで微妙になった空気に耐え切れなくなり、俺はすごすごと壇上から降りた
―――そして・・・
「水原真希 歌い手よ」
「黒峰麗華 魔術師です・・・」
「黄瀬エミリ えぇ――?メ、メイドォ?!」
「松前修斗 指揮官だってよ・・・」
「服部拳児・・・チッ、俺も拳闘士だ・・・」
「保住リン ナースだよぉ~ん♪」
そして・・・
「大田真人、拙者は忍者でござる!」
「キヒヒヒ・・・影浦洋子・・・妖子だって・・プックククク、洋子が妖子・・・ウケるぅ」
皆それぞれ女神ティアから恩寵の職を与えられ、中には俺と同じように、ファンタジーの冒険者らしかぬ職業を与えられた者もいるようだった・・・が
「―――俺の探究者のスキル・・・【古代語の解読、理解、吸収】って!?3つしか無いけど?」
「拙者は、【急所斬り、影縫い、投擲(小)】・・・後は、忍者と言えばの【分身】でゴザルな」
「キヒヒヒ、あ、私は【魔物ラーニング、ドッペルゲンガー、魔物スキル行使(LV1)】あとは・・・ファン垂涎の【テイム(小)】だぞ?ヒヒヒヒ…」
「ふ、二人とも凄い強そうなスキルだね!?」
「ふむ・・・拙者の予想だが、これらの職業はおそらく初級職ってやつでは御座らんだろうか?」
「ヒヒヒヒ、私も同意・・・スキルに(小)って出てる時点で、(中)や(大)が有るってバレバレ展開、運営炎上モノのネタバレ・・・ヒヒヒヒ…」
―――だったら僕だって強く・・・
「あぁ?おい眼鏡陰キャ共!今の話は本当か?」
勝手に会話に割り込んでくる、金髪の拳闘士君・・・
「何じゃ?お主・・・さっきまで職業なんか関係ない、どうでも良いとか言っておったのに・・」
「キヒヒヒ・・・言うてやるな大田氏、このクラスで、闘士って職業がやたら多かったからな・・・ヒヒヒヒ…」
「あ”ぁ”!?テメェらぁ―――何が言いてぇんだ!?あぁ?」
拳を握りしめ凄む服部君・・・転移前ならガタガタ震えて低頭で平謝りするしか無かったが
この世界での大田君は女神ティアの恩寵を授かる前から
分身スキルに近い動きを、潜在能力段階で使いこなしていた・・・
つまり、大田君はこのゼムルディアでの適応力が俺たちの誰よりも優れていると言える、いやもはや天才だ
仮に職業やスキルに熟練度的な数値が存在するなら、大田君は文句なくこのクラスで断トツトップだろう
だが、まぁ服部君の気持も分からなくもない・・・
ライバルと思っていた松前君はオリジナル職業「指揮官」を得ていたのに対し
服部君ら格闘部派閥は全員が拳闘士、他にも野球部3人衆が剣、投擲、守備と属性は違えど、全員が「闘士」
ちなみに闘士となった者は全部で6名・・・その中でも拳闘士は実に3名だ
職業の事なので、レア的な偏見で価値を見てしまいがちだが
俺からしたら、前線で戦えるスキルが有るだけで十分立派だと思う・・
―――俺たちはひと通り全員が職業の恩寵を授かった所で・・・
「さぁ勇者諸君!貴候らが最初に向かうは、ゼムルディア最大のダンジョン、アビス」
「まずは、そこの上層でモンスターを狩り、魔王と戦える力を身に付けるのじゃ!」
―――こうして、後にツーエー勇者部隊と呼ばれ伝説となる、2ーAクラスの面々は
ゼムルディアにて危険と背中合わせの、波乱と友情、愛情と勇気の冒険生活が始まるのだった・・・
〇そして、今現在―――
「い、いらっしゃい・・・ませ・・・1名さま・・・こちらへ」
ここは喫茶、サンフラワー
夕方の17時頃は会社帰りのサラリーマンやOLらが、帰宅する合間の休憩がてらよく訪れるので忙しい
店内は満席という訳では無いが、8割くらいは埋まってしまって今はカウンターしか空いてない
「ご、五中・・ご注文は、お決まり・・・で、しょうか?」
五中って何?五反田中学の事?とか、客に揶揄われるのにもすっかり慣れたものだ
(いや、まず接客に慣れろよって自分でツッコんでおきます・・・)
「―――あぁもう!本当イライラするぅ!――――甘いモノよ甘いモノ!えっと、ここからここまでのパフェ全部頂戴なる早で!」
フチ無し眼鏡の茶髪美人さんは、何やら物凄いストレスを抱えておいでのご様子だ
パフェメニューの上から下まで、計5種を当日コンプリートする気らしい・・・強者だ
「か、かしこまり・・・ました、チョコ、バナナ、イチゴ、キャラメル、そしてサンフラワーパフェの計5品ですね・・・」
「えぇ早くして頂戴!私の血管と自制心が持ちこたえてる内にね!」
ヒェ――マジギレしてる眼鏡美人、超怖ぇ――




