第12話 絶望の席替え
えぇ―――やだ、もう・・・
なんでこんな事に・・・
今朝、居心地の悪すぎた登校で、若干めまいがしてきたのに
急に朝のホームルームで席替えとか
独身アラフォー担任教師の山城ちゃんが、やたら化粧に力が入ってるし
急に席替えとか・・・
「ねぇ巧、今日は放課後どこ行く?」
「巧君、ごめんね消しゴムわすれちゃって」
「ねぇねぇタクミン、シャーペン落としちゃったから取ってぇ~」
陰キャオタクのポールポジションである窓際の一番後ろの席から、クラスど真ん中央の席になるし・・・
右の席には水原さん、左の席には黒峰さん、後ろの席には黄瀬さん・・・
「ヤッホ―!御神君、今日からよろしくね!」
俺の前の席には女子テニス部の元気美女、中谷美樹さんが・・・
中谷さんは、中学校から有名なテニス女子で、茶髪のポニーテールが特徴のスレンダー系の美人さんだ
水原さんや、黒峰さん、黄瀬さんのように、突き抜けた属性を持つ訳ではないが
普通の可愛さが密かな人気で、誰が言い出したか分からないが
スポーツ部に所属している女の子の「彼女にしたいランキング」では、1位を獲得してるらしい(景浦さん情報)。
なお、景浦さん垂涎のボクっ子だったりする・・・
中谷さんは、1年の時からそれほど俺に絡んできたような記憶はない
挨拶されれば挨拶を返す程度・・・
間違っても下の名で呼び合う関係ではない
―――断じて
「ねぇ、美樹・・・巧と席が近くなったからって少し馴れ馴れしくない?」
「―――不本意ですが、私も真希さんと同じ意見です・・・」
「アタイもタクミンの横が良かったぁ――――!」
何なの?この人ら・・・朝からマジ疲れんだけど
「へぇ―――ボクにそんな事言って良いの?誰のおかげで、その席に座れてるのか?良く考えた方がいいよ?」
「クッ・・・」
「チッ」
「ぐぬぬぬぬ・・・あの時パーを出してれば・・・」
パンパン!
山城ちゃんが、出席簿で教卓を叩く
「はいはい、新しい席が決まったし2学期まで皆仲良くねぇ―――」
「それと、今日はこの学校でテレビ番組の撮影があります」
ザワザワ・・・・
「1年の時と同じように、水原さんの密着ドキュメントの撮影だからね、皆は普段通り行儀よく、高校生らしい態度で授業を受けてくれたら良いからねぇ―――」
「くれぐれも・・・先生の顔に泥を塗るんじゃねぇぞ?あ”ぁ”?」
―――おいおい、山城ちゃん素が出てるよ・・・元ヤンの・・・極セ〇かよ
だが、テレビカメラが教室に入ってくると、山城ちゃんの望んだ通りクラス中が緊張で静まり返る・・・
3人を除いて・・・
「巧、もっと近くに寄っていいよ、教科書見えないでしょ?」
「ちょっと!真希さん、近づき過ぎですよ!?」
「ねぇねぇ、タクミン、またシャーペン落としちゃったから取ってぇ~」
3人がやたら俺に席を寄せてくる・・・
いや、そもそも俺、朝食の前に間違いなく教科書、鞄に入れたのに・・・何で入ってないんだ?
とにかく早くこの授業終わってくれ!
―――まったく授業内容が頭に入って来ないまま何とかチャイムまで耐えた・・・
次は・・・体育館への移動か、助かった
体育の授業で、男女別々になるチャンス・・・
クラスドッキリの仕掛人に身をやつしたとはは言え、俺には大田君養分が足りてないのが現状
この移動中に何とか、わが親友と心おきなくオタ道を語り合わねば・・・
すぐに教室を見渡す・・・いた!
「お、大田く・・・え?」
俺は自分の目を疑った・・・
大田君が、黄瀬さんのギャル派閥のギャルフォー(4人のギャル、黄瀬、志田、保住、藤田のこと)の一人・・・
「お、大田君がなんで藤田さんとあんなに親しそうに・・・」
親友で同志だった男は、ギャルギャルしい藤田さんが満面の笑顔を向ける視線の先に居た
その時、俺は知った・・・
大田君は・・・彼は脅しに屈し、俺を裏切りドッキリに手を貸した陰キャの宿命に従う者では無く
―――眩いギャルに篭絡された哀れな夜光虫だったんだと
「大田君・・・君が愛し、愛された、擬態化美少女フィギア達が泣いてるぜ・・・」
同志が一人、眩しい太陽の元へと羽ばたいて行こうとも、我が陰キャ道を違う訳にはいかない
―――そう、それは俺の役目
「おい、御神ぃ―――バスケで使うボールを用具室から持って来てくれ―――」
「は、はい・・・先生・・・」
体育の授業は2-Bと合同で行う、そのため2-Bの柔道部顧問も務めるゴリラが俺たちの体育授業を受け持つ
そして俺はこのゴリラによく雑用を頼まれる・・・
「あ、先生、それなら俺がいくぜ?」
「おれも行きます」
「顧問、おれも!」
え?なんで?
何故かいつもと違い、服部君や松前君、柔道部の熊井君らが俺の代わりに雑用に立候補した
「あぁ?何だお前ら・・・あぁ成程、山城先生が受け持つ女子の方に、テレビ局の撮影が来てるからって良い人アピールか?」
「あぁ?そんなんじゃねぇよ!俺は単にそんな雑用に、巧がわざわざ行かなくってもって思っただけだ!」
ゴリラの言葉にイラっとしたのか服部君が、ゴリラ噛みついて険悪な雰囲気に・・・
「あ、あ、だ、大丈夫・・・僕が行って来る・・・から・・・」
俺は場の雰囲気を素早く察する陰キャ能力を最大限に発揮し、睨み合うゴリラと服部君にそう告げると
足早に、体育館の奥にある用具室へと向かった。
「―――えぇ――と、バスケットボール・・・バスケットボール・・・」
電気のスイッチの場所が解らないので用具室の部屋のドアを開けたまま、その明かりを頼りにボールを探す・・・
バタン
「え?」
突然部屋の中が暗くなった・・・
「やべっ・・・全然見えない・・・スイッチスイッチ・・・」
俺は用具室の壁を手で確認しながら、スイッチの場所を探す‥‥
「え!?」
その瞬間、俺の腕を誰かが掴んだ
「フフフフ、あなたが御神巧君?」
女性の声だ
「え、えっと・・・」
「ねぇ、水原真希なんかよりも私と・・・いい事しない?」




