一.森の建築家
アイダホ州フランクリン郡の郡庁所在地であるプレストンは歴史とコミュニティイベントに富んだ、人口約五〇〇〇人を有するアメリカ北西部に位置する小都市である。
プレストンの中心部には商店、図書館、公園、食料品店などが揃い、生活に便利な環境が整っている。
また、観光・イベント では、国立史跡に登録されたマティアスカウリーハウスやベアリバー虐殺サイトなどが歴史教育や観光に利用され、2004年の映画『ナポレオン・ダイナマイト』のロケ地で一躍観光名所となった。
このことをから夏には「ナポレオンダイナマイトフェスティバル」や「プレストンナイトロデオ」、冬には「アイダホフェスティバルオブライト」などが開催されている。
プレストンは歴史的背景と地域文化、イベントが豊かなコミュニティ都市であり、歴史探索や映画ファン、家族での訪問にも適した都市である。
その近郊の小川から、今日もリズミカルな音が聞こえてきた。
コリ、コリ、コリ。
木をかじる音というのは、慣れてくると実に味わい深い。
コリ、コリ、コリ。
今日もいい響きだ、と私は耳を澄ませた。
私の名はバルト。この名もなき小川を棲み処としているビーバーだ。
だが、ただのビーバーではない。私はこの川辺一帯を仕切る「水辺の職人」だ。
水流を読み、木の癖を見抜き、仲間たちと協力して最適なダムを築き上げる。
それが私の誇りであり、日々の仕事でもある。
「バルド、悪いが、手が空いたら、こっちの枝、もう少し太いのが欲しいんだけど」
仲間のリーネが声を掛けてきた。
「了解だ。このカエデを倒したら、あそこのヤナギがちょうどいい具合に育ってるんで倒してくるよ」
カエデの木を倒した私は川沿いを歩き、柔らかい土の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
私は幼い頃から、この匂いが好きだ。
湿り気を帯びた土は、やがて草を育て、木を育て、虫を呼び、鳥を呼ぶ。
私たちのダムは、その循環を少しだけ手助けしているにすぎない。
木を倒し、枝を運び、流れを調整する。
水がゆっくりとせき止められ、川辺に小さな池が生まれる。
池はやがて湿地となり、そこに草木が芽吹き、虫が戻り、鳥が歌い始める。
人間の中には我々のことを「森の建築家」と呼ぶ者もいるが、そんな大したものでもない。
私たちにとっては当たり前の営みだが、どうやら人間たちは違うらしい。




