↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
72/73

最後の宿

ClaudeAIに校正とルビ振りをやらせています。

雷蔵(らいぞう)たち一行(いっこう)がヤマトタケルが開(あ)けた結界(けっかい)の穴(あな)を通(とお)り抜(ぬ)け終(お)わったころ、突然(とつぜん)、霧(きり)が晴(は)れた。「味方(みかた)の勝利(しょうり)だ」と言(い)いながら軽(かる)く北東方面(ほくとうほうめん)を見(み)やる日本武尊(やまとたけるのみこと)に釣(つ)られて雷蔵(らいぞう)たちもそちらに目(め)をやると、霧(きり)が晴(は)れた先(さき)に巨大(きょだい)な犬(いぬ)と小柄(こがら)な老人(ろうじん)と中肉中背(ちゅうにくちゅうぜい)の男性(だんせい)と大柄(おおがら)な男性(だんせい)の人影(ひとかげ)が見(み)えた。霧(きり)が晴(は)れる直前(ちょくぜん)、雷蔵(らいぞう)にはほんの一瞬(いっしゅん)だけ巨大(きょだい)な龍(りゅう)の姿(すがた)が見(み)えたが、それはすぐに消(き)えて大柄(おおがら)な人影(ひとかげ)になった。それからほどなく、別(べつ)の人影(ひとかげ)が現(あらわ)れて腕(うで)を振(ふ)ると、突然(とつぜん)、誰(だれ)もいない所(ところ)に人々(ひとびと)が現(あらわ)れるのだった。


「大神(おおかみ)が出向(でむ)くとは、いと珍(めずら)しき」とヤマトタケルが言(い)い始(はじ)めるとヤタこと八咫烏(やたがらす)が飛(と)んできて雷蔵(らいぞう)の右肩(みぎかた)にとまり「きゃつらめ、己(おの)が能力(のうりょく)もわきまえずに大法術(だいほうじゅつ)を使(つか)いおって」と伊弉諾(いざなぎ)が顕現(けんげん)したことの説明(せつめい)をする。それに対(たい)して「我(われ)も今(いま)初(はじ)めて見(み)たり」と、大規模(だいきぼ)な人払(ひとばら)いの法術(ほうじゅつ)について日本武尊(やまとたけるのみこと)も驚(おどろ)きを隠(かく)さなかった。彼(かれ)も人間(にんげん)を辞(や)める前(まえ)も後(あと)も、それほどの法術(ほうじゅつ)や神通力(じんつうりき)を目(め)にしたこともなければ、自分(じぶん)がその様(よう)な力(ちから)を振(ふ)るったこともなかったのだ。驚(おどろ)きもする。


一匹(いっぴき)と四人(よにん)の影(かげ)は何(なに)やら話(はな)し合(あ)っているようだが、夕日(ゆうひ)が西(にし)の山(やま)の陰(かげ)に入(はい)ってしまっている以上(いじょう)、ぼんやりと明(あか)るく見(み)える陰(かげ)でしかないので、そのように推測(すいそく)する他(ほか)はなかった。だが、大柄(おおがら)な男性(だんせい)らしき影(かげ)がこちらに向(む)かって歩(ある)き始(はじ)め、そして、雷蔵(らいぞう)たち一行(いっこう)に気(き)づくと右手(みぎて)を大(おお)きく振(ふ)り、それを合図(あいず)にしたように大(おお)きな紀州犬(きしゅうけん)が雷蔵(らいぞう)たちの方(ほう)へ、雷蔵(らいぞう)に向(む)かってまっしぐらに駆(か)けてくるのだった。思(おも)わず雷蔵(らいぞう)の前(まえ)に立(た)ちはだかる琵琶姫(びわひめ)だったが、雷蔵(らいぞう)は彼女(かのじょ)を避(さ)けながら前(まえ)に出(で)て、『私(わたし)頑張(がんば)ったよ!褒(ほ)めて!』と言(い)わんばかりのわんこを労(ねぎら)おうとした。


琵琶姫(びわひめ)は不服(ふふく)そうだったが、これだけは雷蔵(らいぞう)にも譲(ゆず)れない所(ところ)だったのだ。命(いのち)がけで頑張(がんば)ったのに労(ねぎら)いもなく『できて当然(とうぜん)』『やって当(あ)たり前(まえ)』『できないのであれば腹(はら)を切(き)れ』と言(い)う扱(あつか)いは酷(ひど)く寂(さび)しく、心(こころ)に痛(いた)みを与(あた)え、時間(じかん)がたってもしこりのように残(のこ)るものだからだ。彼(かれ)はそういう経験(けいけん)を何度(なんど)もしたような気(き)がした。はっきりとは思(おも)い出(だ)せないが、その辛(つら)さを『当(あ)たり前(まえ)』と思(おも)うことに抵抗(ていこう)する自分(じぶん)がいることを自覚(じかく)していたのだ。だから、雷蔵(らいぞう)は狗神(いぬがみ)を労(ねぎら)いたかったのだ。


雷蔵(らいぞう)に頭(あたま)を抱(だ)きしめられて耳元(みみもと)を撫(な)でられた狗神(いぬがみ)は、ちぎれそうなほど尻尾(しっぽ)を振(ふ)りながら「我(われ)は雷蔵(らいぞう)が愛(いと)しいのじゃあっ!」と叫(さけ)び、それを聞(き)いた琵琶姫(びわひめ)が嫉妬(しっと)に唇(くちびる)を尖(とが)らせる光景(こうけい)の中(なか)、日本武尊(やまとたけるのみこと)が雷蔵(らいぞう)の姿(すがた)を眺(なが)めながら「我(わ)が父(ちち)にもこのような器量(きりょう)があれば…」と呟(つぶや)くと、ヤタが「過(す)ぎたことではないか」と窘(たしな)める。だが、日本武尊(やまとたけるのみこと)はヤタの方(ほう)を一瞥(いちべつ)すると、「ふん」と鼻(はな)を鳴(な)らして踵(きびす)を返(かえ)すのだった。


「人(ひと)の世(よ)を数千年(すうせんねん)見(み)てきたが、人(ひと)の心(こころ)は未(いま)だに解(わか)らぬものよ」と嘯(うそぶ)くヤタに対(たい)して、「ヤマトタケルは既(すで)に人(ひと)に非(あら)ず」と琵琶姫(びわひめ)が突(つ)っ込(こ)むと、ヤタは一瞬(いっしゅん)ギョッとしたような表情(ひょうじょう)をしたが、忌々(いまいま)し気(げ)に琵琶姫(びわひめ)を睨(にら)んでから顔(かお)を背(そむ)け、山科神社(やましなじんじゃ)の宮司(ぐうじ)の家(いえ)の門(もん)の前(まえ)までそのままだった。琵琶姫(びわひめ)が初(はじ)めてヤタを論破(ろんぱ)した瞬間(しゅんかん)だった。そうしているうちに子(ね)の神(かみ)、辰(たつ)の神(かみ)、戌(いぬ)の神(かみ)の三柱(みはしら)も合流(ごうりゅう)してきたので、雷蔵(らいぞう)は彼(かれ)らにも感謝(かんしゃ)の言葉(ことば)をかけて労(ねぎら)った。


宮司(ぐうじ)の家(いえ)の前(まえ)では宮司(ぐうじ)と数人(すうにん)の神職(しんしょく)の者(もの)たちが平伏(へいふく)して一行(いっこう)の到来(とうらい)を待(ま)ち受(う)けていたが、ヤマトタケルが巫女(みこ)を呼(よ)びつけて彼女(かのじょ)に何事(なにごと)かを話(はな)すと、彼女(かのじょ)は一礼(いちれい)してから宮司(ぐうじ)に祭神(さいじん)のお告(つ)げを伝(つた)えるのだった。今回(こんかい)も琵琶姫(びわひめ)と狗神(いぬがみ)以外(いがい)は祭神(さいじん)と共(とも)に山(やま)の上(うえ)の方(ほう)にある神殿(しんでん)に向(む)かって行(い)った。一方(いっぽう)、宮司(ぐうじ)と神職(しんしょく)と巫女(みこ)たちは、人型(ひとがた)になった狗神(いぬがみ)を右腕(みぎうで)に、人型(ひとがた)のままの琵琶姫(びわひめ)を左腕(ひだりうで)に侍(はべ)らせて両手(りょうて)に花(はな)の雷蔵(らいぞう)の世話(せわ)をするべく忙(いそが)しく働(はたら)いたのだった。その日(ひ)の夕餉(ゆうげ)は大層(たいそう)なご馳走(ちそう)だったという。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【読者様へのお願い】
作品を楽しんでいただけたら、ブックマークや下部の評価受付から応援をよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。