真野川
雷蔵と辰の神が言葉を交わしているうちに霧が南に流れていく。だが、地面の近くは少し霧で煙っている。湿度が高かったせいか、夕暮れ時で気温が急低下してきたため、日中の温度が残っている土の周りに霧のような状態が発生するのだ。だが、上空の作為的な霧は、術者が倒されたことによって解除された。霧のせいであまり感じなかった寒さが急激に刺すような痛みとして降りかかってくる。思わずブルっと震える雷蔵だった。それを見た辰の神は苦笑いしつつ「ふむ、急ぎ宿を見つけねばならぬであるのぅ」というと踵を返し、街道を南へと足を向けた。それを見た雷蔵も遅れまじとついていくのであった。
先ほどいた場所から緩やかに下る長い坂を南に下っていく途中で公家の姿になった戌の神と合流する。彼の周りに野犬たちの集団が付き添っているので、暗がりでも犬たちを率いている人物が戌の神だと分かる。合流してから坂道を下りきったところに大きな池がある。その大きな池のほとりでは狗神の眷属たちが池の水を飲んでいた。だが、狗神は池の手前に横たわっている2匹の山犬の傍らに立っていた。その山犬たちは腹部を大きく負傷しており、虫の息だったが、どこからともなくするりと出てきた白い大蛇がその2匹の山犬に対して順番に噛んでは放すという動作を繰り返した。
すると、その2匹の山犬は、見る見るうちに白い殻に覆われていった。しばらく(およそ3分ほど)すると、殻に覆われた山犬たちはもぞもぞと動き始めた。その動きのせいか、犬たちを覆っていた殻は破れ、中から無傷の山犬が姿を現したのだった。狗神は白い大蛇の姿の巳の神に礼を言うと、巳の神は「我に毒牙はないが、この程度の神通力ならあるよってな。何をしようにも手も足も出んのでのぅ」という自虐小噺を言いながらカッカッカと一人で勝手に笑い出したので、狗神は微妙な表情になっていた。それを見た雷蔵は思わず吹き出しそうになり、それを必死に堪えながら肩を震わせるように笑うのだった。ところで、その頃になると、雷蔵はすっかり鎖骨に強い痛みがあったことを忘れているのだった。
そうしているところに鼠の大群が現れて池の水を飲み始めたのと同じ頃に「おお、皆、集まっておったか」と言いながら翁が歩いてきた。いうまでもなく子の神である。合流して一息ついた彼らは、複雑に入り組んだ形の池を迂回するように続く街道をひたすら道なりに南に進む。池を過ぎると少し急な勾配の上り坂になっているが、それほどの長さではない。上った先はおおむね平らな場所だがその区間は短く、すぐになだらかな下り坂になる。丘の上なのに生い茂る木々のせいで足元はほぼ見えないほど暗かったが、ほぼ直線に進む道の先には夕焼けに染まる平野と、その平野の中を曲がりくねる蛇のように流れる真野川が見える。時折川面から反射する陽光が眩しく煌めく。
川沿いに所せましと作られた田んぼには大麦が植わっていて、山から吹き降ろしてくる風に靡いて海の波のようだった。遠く近くの農民たちの家屋からは夕餉の支度をする竈の煙が立ち上っており、煤の混じった煙の臭いが漂ってくる。そうすると、一働きした後でもある雷蔵の腹の虫も騒ぐというものだ。ガッハッハと豪快に笑い飛ばした辰の神は「結構!結構!腹の虫が鳴くほど元気であるな!」と言いつつ雷蔵の背中をバンバンと叩く。後ろ頭を掻きながら、雷蔵はそれをごまかすかのように川のほとりまで進むのであった。
以下2点、確認させてください。
**Q1.** 「公家の姿になった戌の神と合流する」の「公家の姿」の部分。以前の場面(魔境奇譚45)で戌の神の人化した姿は「褌一丁の男」と描写されており、「公家」(貴族の装束)とは印象が異なります。
- A. 「人の姿になった戌の神」に修正
- B. 「公家」のまま活かす(別の意図がある場合)
**Q2.** 「おお、みな集まって追ったか」の「追ったか」の部分
- A. 「揃ったか」の誤字と考え「おお、みな集まって揃ったか」に修正
- B. その他のご指定
A/Bでそれぞれお答えください。
なお、以下5点は明確な誤字のため自動修正しました。
- 「湿度型かかかったせいか」→「湿度が高かったせいか」(誤字)
- 「急激に指すような痛み」→「急激に刺すような痛み」(誤字:指す→刺す)
- 「白い殻に覆われいった」→「白い殻に覆われていった」(脱字)
- 「犬たちを覆っていたからは破れ」→「犬たちを覆っていた殻は破れ」(誤字:から→殻)
- 「翁が歩いてきた。いうまでもなく根の神である」→「翁が歩いてきた。いうまでもなく子の神である」(誤字:根の神→子の神、確定済みキャラクター名との統一)
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1.B,戦闘時は褌だけど、人前に出るのに褌はないでしょ。だから、再度人家の術で公家のような姿に変身してます。
2.B、「おお、皆、集まっておったか」
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なるほど、承知しました。戌の神が場に応じて衣装を変えている、ということですね。
**確定事項**
- 「公家の姿になった戌の神」→そのまま活かす(褌姿から人前用に変身し直した設定として)
- 「おお、みな集まって追ったか」→「おお、皆、集まっておったか」
全文にルビを振ります。
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