四つ足の戦い2
その頃、狗神たちより半里ほど西北西の方では、野良犬たちがけたたましく吠えている樹上を妖狐が飛んでいた。堅物の戌の神は困惑した。四つ足で地を這う生き物がなぜ樹上を飛ぶように移動するのか。戌の神の眷属である野良犬たちは吠えることしかできなかった。戌の神の神通力によって体が硬化されている彼らはサルたちの石礫による損害を受けなかったが、この襲撃の核心であると思われる狐を捕えたり討ったりするとっかかりがない。戌の神は噛み付きと石壁の神通力は得意だが、石礫を発する神通力は苦手だ。それで、樹上を移動する相手を狙撃することができないでいた。
樹上のサルたちは樹上で入れ替わり立ち代わりしながら野良犬達に投石を続けている。硬化の神通力で野良犬達に投石による損耗はないものの鬱陶しいことこの上ない。もとより、通常の戌の神は人型で過ごしているので犬型での活動方法に疎くなっている。それもあって、戌の神はどうしたものかと考えあぐねていたが、意を決して人型に戻ることにした。人型に戻った戌の神は「はぁっ!」と気合を入れると大跳躍し、先ほどまで狐がいた樹木の大枝の上に立つと、驚いて動きが止まってしまったサルたちを樹下に蹴落としながら妖狐を追い始めた。
褌一丁の男が猿を木の枝から蹴落としながら枝から枝へと飛び渡っていく様は中々奇妙なものだった。むしろ、それを見た申の神は口をあんぐりと開けて一瞬見入ってしまうほどだった。だが、即座に意識を戻し、落とされた後、痛みをこらえながら石を拾い集めて樹上に戻ろうとする眷属たちに念話で「待て」を入れる。いくら猿とはいえ、樹上から蹴落とされれば体力を損耗するし負傷もする。眷属達は無限に湧き出る泉ではないのだ。緒戦で損耗して良いことなどない。申の神は独り言ちる「如何に命婦殿とて多勢に無勢か?それとも、この程度のものなのか?」たとえ同盟を組んだとはいえ、申の神とてよく知らぬ稲荷の狐のために自分の眷属を損耗する義理はない。幸いなことに、この小競り合いで死んだ彼の眷属はいない様子だった。「命婦殿のお手並み拝見」と嘯くと、彼は眷属たちを雷蔵たちから引き離して様子見を始めるのだった。
四つ足の妖狐にとっても、二足歩行形態になった戌の神にとっても、木の枝を渡っていくという芸当はそうそう容易いものではない。幻術の展開に気を集中できなくなった妖狐は地面に降りると、人化した戌の神を迎え撃つべく背後に振り向いた。ちょうどその時に妖狐の2間先に戌の神が飛び降りてきた。だが、そこに間髪入れずに妖狐が鎌鼬を放ってくる。瞬時に肌が黒光りし始めるまで皮膚の強度を高めた戌の神は、両腕をふるいながらその鎌鼬を払いのけると、2間の距離を一足飛びで妖狐の眼前まで跳躍した。そして、着地すると同時に妖狐に向かって蹴りを入れるが、その動きを見切っていた妖狐は犬の神の蹴りを背面飛びで避けざま鎌鼬を放つ。それをあえてよけずに受け止めた戌の神は、鎌鼬を弾き飛ばしながら妖狐へと突進すると、またも背面飛びで避けようとする妖狐の尻尾を捉えて力強く掴むや、妖狐が飛んだのとは逆方向に無理やり引っ張って妖狐の頭を地面に叩きつけた。首があらぬ方向に曲がって白目をむいて絶命した妖狐は、なおも鎌鼬を放っていたが、その方向は定まらず、妖狐が絶命すると同時に黒い霧がその死体から湧き上がってくる。それと同時に、絶命直前に放った鎌鼬が霧散した。そして、黒い霧は例のごとく南の方へと風もないのに流れていくのだった。
以下4点、判断が分かれるため確認させてください。
**Q1.** 「効果の神通力で野良犬達に投石による損耗はないものの」の「効果の神通力」の部分。直前の文で「体が硬化されている」とあり、これに対応する神通力と思われます。
- A. 「硬化の神通力」の誤字と考え「硬化の神通力で野良犬達に投石による損耗はないものの」に修正
- B. その他のご指定
**Q2.** 「サルの神は独り言ちる」の部分。他の箇所では「申の神」「申殿」という表記が使われています。
- A. 「申の神」に統一する
- B. 「サルの神」のまま活かす(動物としての側面を強調する演出)
**Q3.** 「早々容易いものではない」の部分
- A. 「そうそう容易いものではない」の誤字と考え修正
- B. その他のご指定
**Q4.** 「妖狐の2軒先に戌の神が飛び降りてきた」の「2軒先」の部分。他の場面で距離の単位として「間」(例:2間の距離)が使われています。
- A. 「2間先」の誤字と考え修正
- B. その他のご指定
Q1〜Q4、A/Bでお答えください。
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1.A,2.A,3.A,4.A
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修正内容を確定しました。全文にルビを振ります。
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