亡者の襲撃
嫌な感じがする霧の中に入ると、即座にかつ極端に視界が悪くなる。日が傾きかけていることもあり谷あいの道は特に薄暗い、そこにこの異様な霧である。光と影というものがなく、とにかく薄暗いうえに手を伸ばした距離よりも先はほとんど見えないのだ。音と気配で周辺に4つ足の獣が無数にいることがわかるし、1間半くらい先に2つ足のものが歩いている足音と気配も察知できている。だが、霧に入って5・6歩ほど進んだとき、突然、背後から足音がしない気配を感じた雷蔵が振り向くと、そこには青白い顔で血まみれの鎧武者が立っていた。不思議なことに、腕を伸ばした先はほとんど見えないはずの霧の中で、1間ほど先にと感じられる距離に立っているその鎧武者の姿だけははっきりと見えたのだ。
抜き身の太刀をぶら下げるように力なく握り持っていたその男は無言のまま雷蔵を睨めつけつつ、左手を持ち上げると雷蔵を指さした。雷蔵はなぜ自分が指さされなければならないのか理解できなかったが、相手の鎧の意匠と自分の鎧の意匠が同じであることから、もしかすると味方の武家なのではないか?と予想できる。また、大鎧をつけたうえで兜を被っていることから、身分は高そうだがその顔や雰囲気には一向に覚えがない。雷蔵はその人物のことを知っているような気もするのだが、どうしても思い出せない。雷蔵がまごついていると、その武者は太刀を持ち上げて両手でしっかりと柄を握り、太刀の構えを八相にして雷蔵に向かって突進してきた。
互いの距離が後1間という所でその武者は太刀を少し持ち上げた。八相からの袈裟懸けに切りつけてくる動作の初動だ。雷蔵は背後に後ずさりすることで相手の斬撃の間合いから体を退かせ、ゆるく斜め下に下げるようにして持っていた大太刀を相手の正面に向けてけん制する。だが、相手はそのまま袈裟懸けに切り付けてきた。雷蔵は中段の構えから剣先を右に向けながら柄の方を左上に持ち上げる形で相手の袈裟懸け切りを受け流そうとしたが、相手の太刀は雷蔵の大太刀をすり抜けて雷蔵の右の鎖骨に当たった。当たったというよりは、その太刀が雷蔵の鎖骨をすり抜けながら彼の体を通り過ぎて行ったといった方が正確といえよう。本当の斬撃であれば、鎖骨の表面にある肩上に当たって止まるはずだが、すり抜けたのだ。まるで実態がないかのように。
雷蔵はその時点で『亡者か!』と思ったが、相手の太刀が自分の鎖骨をすり抜けた瞬間、その部位に激痛が走った。骨に固いものが当たると、いかな偉丈夫とはいえ流石に堪え難い。思わず左手で鎖骨に手を当てながら前屈みになる。しかし、相対する武者は振り下ろした太刀をもう一度振り上げた。この|ままだと雷蔵は背中に強烈な打撃を受けて地面にたたきつけられ、死に体になったところでとどめを刺されてしまう。それを避ける唯一の方法は・・・。雷蔵は痛みを押しのけ、自分を奮起させるべく雄たけびを上げながら、がら空きになっている敵の武者の胸に飛び込んだ。剣の間合いには内側と外側がある、その内側の間合いの外に出たわけだ。これによって、敵を押し倒しつつ敵の上段からの斬撃を躱すはずだった。ところが、雷蔵はその武者の体を透過して敵武者の後方に飛び出してしまったのだ。雷蔵は驚くと同時に、そのままつんのめって倒れこんでしまうのであった。その直後、彼が前屈みになっていたあたりに無数の石礫が落ち葉や枯れ枝越しに地面にたたきつけられる音がしたが、彼の耳には届いてはいなかった。
以下2点について、判断が分かれるため確認させてください。
**Q1.** 「その映像が雷蔵の鎖骨をすり抜けながら彼の体を通り過ぎて行った」の「映像」の部分
- A. 「刃」の誤字と考え「その刃が雷蔵の鎖骨をすり抜けながら」に修正
- B. 「太刀」の誤字と考え「その太刀が雷蔵の鎖骨をすり抜けながら」に修正
- C. その他のご指定
**Q2.** 「質の間合いには内側と外側がある」の「質の間合い」の部分
- A. 「剣の間合い」の誤字と考え「剣の間合いには内側と外側がある」に修正
- B. 「打撃の間合い」に修正
- C. その他のご指定
A/B/Cでそれぞれお答えください。
なお、以下の誤字は自動修正しました。
- 「雷蔵はそのままつんのめって倒れこんでしまうのであた」→「雷蔵はそのままつんのめって倒れこんでしまうのであった」(誤字:脱字)
また、本文中の「肩上」は既にルビが振られていたため、そのまま活かしています。
1.B、ちょっと頭の中がごっちゃになってたんだよね。「まるで太刀の映像が…」みたいなつもりだったんだけど、ホログラム画像が人体に当たって「透過していく」というような表現にする必要はなかったかもしれない。雷蔵目線で描くのであれば。
2,C、「太刀」の誤変換だけど、「剣の間合い」の方が一般的かな。
※ 肩上はルビを入れておかないと「かたうえ」とされてしまうと思った。
了解しました。確定します。
**確定事項**
- 「その映像が雷蔵の鎖骨をすり抜けながら」→「その太刀が雷蔵の鎖骨をすり抜けながら」
- 「質の間合いには内側と外側がある」→「剣の間合いには内側と外側がある」
「肩上」のルビ配慮、承知しました。全文にルビを振ります。
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