小野台地
小雪交じりの冷たい風が台地の方から吹き降りてくる中、雷蔵は人気のない漁村を狼や野良犬たちの群れとともに歩く。台地の南東の麓には鳥居がある。その鳥居を目指すように道と草原の境界があいまいな「道」を行くのだが、4つ足の獣たちはきれいに左右に分かれており、雷蔵の右手側は紀国の狗神の群れ、左側には歳神の戌の神の群れがそれぞれ1間分の距離をあけて辰の神の後ろに続く雷蔵に並走する。彼らの足が深く沈んだり浅く沈んだりするところから、彼らは雷蔵たちのために、わざと道から外れた場所を走っていることがうかがえた。雪が薄く積もっているとはいえ、足元がよく見えないので、道ではないところを歩いた場合、鎧の重みで足が雪に深くはまってしまう。それを避けることができるのはありがたいことだった。
小野道風神社の鳥居までは四半刻もかからずに到着するが、4つ足の獣たちは神社に上がる気配を見せず、鳥居の前を通り過ぎるとその先にある台地と台地の間の割れ目のような峡谷になっている部分に向かっていく。茅が茂る谷合の開けた場所を辰の神が藪漕ぎをしながら進み、彼が押し開いた道を4つ足の獣たちが踏み開く。いかにも『ここを通れ』と言わんばかりである。しかし、谷あいの狭まったところから茅が無くなり、勾配がきつくなる。ここからは雪がほとんど積もっていない森林地帯になる。右手(北側)は小野道風神社から小野神社に連なる台地であり、鎮守の杜でもある。左手は鎮守の森ではないが、勾配のきつい山のような台地であるため薪を取りに来る者しか入らない。そして峡谷状になった谷底に当たる部分を上がってしばらくすると、起伏がなだらかな台地の上の高地に入るが、木々がうっそうと茂っているので見通しは悪い。
時折獣道らしきものと合流しつつも、基本的には辰の神が下藪を踏みしめた小道を進む雷蔵。しばらく緩い勾配のある山林を上ったり下ったりするが、まるで門のような小高い場所に挟まれた自然の切通のような場所を通ってしばらく行くと、池があった。この台地の上は広大な雑木林になっているだけではなく、ところどころに池もあるらしく、無数の動物たちが養われている。楢、水楢、山毛欅、橡、そのほか多様な針葉樹も混ざった植生なので、生息する獣や鳥類も種類が豊富だ。なのに、雷蔵たち一行の周りだけ、意図的にこの一軍に目を向ける烏の群れがいる。そんな中歩みを進めていると水辺に辿り着いた。それほど濁った水ではないが、枯れ落ち葉の腐る腐葉土のようなにおいが漂う水辺だ。野良犬や狼たちが遠慮なくそこの水を飲んでいる様子を眺めながら辰の神が「人にとっては毒となる水であるな」と言う。さもありなん。
何処から取り出したのかわからない、いつの間にか手に持っている手桶で池の水を汲んだ辰の神は、手桶に向かって「ふっ!」と一息かけると、手桶から黒い霧のようなものが湧き出して吹き飛ばされてから霧散した。そのあと、辰の神がその手桶の水をごくごくと飲むと、半分ほど水が残っている手桶を雷蔵に差し出し、「これは飲んでも大丈夫である」と言って差し出すので、雷蔵はありがたく受け取って飲み干した。腰に下げた竹筒の中には、まだ半分ほど水が残っているが、それは、雷蔵が意図的に水を節約していたからだ。
行軍中は喉が渇いても、そんなにがぶがぶ飲めない。通常の行軍中の休憩は状況にもよるが、最低でも1里、最大でも2里ほどである。ただし、敗北して壊走中や、援軍に駆け付けるときはもう少し距離を稼ぐ場合もある。なので、水を飲む間隔には気を付けないといけない。この池まではおよそ1里ほど進んだ場所であるし、進む道も山林の中という非常に体力的に厳しいものなので、この休憩はありがたいものだった。
烏の鳴き声が間近に聞こえたので、手桶を辰の神に返した雷蔵がそちらを見ると、1羽の烏が嘴に竹の皮に包まれた何かを咥えてきた。その頭上から「少し腹ごしらえをするとよかろう」とヤタが声をかけてきた。辰の神が物欲しそうにヤタの方を見ると、ヤタは頭を振る。大げさな素振りであきらめた辰の神は、やはり、いつの間にか無くなった手桶の代わりに、いつの間にかその手に光る団子を持っていて、それをむしゃむしゃと食べ始めた。それを見た雷蔵も、手近の倒木の上に腰掛けると膝の上で竹の皮の包みを開いて、光る団子「神々の握り飯」を食べ始めるのだった。
以下3点について、判断が分かれるため選択肢を提示します。
**Q1.** 「彼落ち葉の腐る腐葉土のようなにおいが漂う水辺だ」の「彼落ち葉」
- A. 「枯れ落ち葉」に修正(誤字:枯れ→彼の変換ミス)
- B. その他のご指定
**Q2.** 「腰に下げた竹筒の水稲には、まだ半分ほど水が残っているが」の「水稲」
- A. 「竹筒の中には」に修正(「水稲」を削除し簡潔に)
- B. 「水筒」の誤字と考え「竹筒の水筒には」に修正(やや重複表現になります)
- C. その他のご指定
**Q3.** 「この台地の上は広大な雑木林になっているだけではなく、ところどころに行けもあるらしく」の「行け」
- A. 「池」の誤字と考え「ところどころに池もあるらしく」に修正(後段で実際に池を発見する記述と整合)
- B. その他のご指定
A/B/C(Q3はA/B)でお答えください。
なお、以下2点は明確な誤字のため自動修正しました。
- 「雪が芒く積もっているとはいえ」→「雪が薄く積もっているとはいえ」(誤字)
- 「いつの間にか亡くなった手桶の代わりに」→「いつの間にか無くなった手桶の代わりに」(誤字)
1.A,2.B,3.A
修正内容を確定しました。全文にルビを振ります。
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なお、句点抜けの箇所(「距離を稼ぐ場合もある、なので」)は「距離を稼ぐ場合もある。なので」に修正しております。




