西岸上陸
直径が1間分ありそうな大きさの大きなカメが、互いのしっぽを咥える形で繋がっているので、飛び乗った時にあまり大きく動くようなことはなかったが、多少の揺れや位置のずれがあるので、コツを身につけなければ無様に転倒してしまうことだろう。読者が特定の年代の方であれば、風雲!たけし城の竜神池の池ポチャしないバージョンを連想すると分かりやすいだろう。最初の一歩目で危うく転びそうになった雷蔵だったが、亀が気を使って少し泳いでくれたので湖に落ちずに済んだ。真冬の湖水に鎧を着たままおちるのは致命的なので彼は命拾いをしたようなものだ。最初の亀の上でその亀に礼を述べると呼吸を整え、足場の揺れ具合を確かめながら慎重に渡っていく雷蔵だった。半分ほど渡ったところで、彼はようやくヒョイヒョイと軽やかに渡れるようになっていたが、その時、彼はこう思った。『子の神や辰の神はなんで最初から軽やかに飛び跳ねながら渡って行けたのか?』。残念ながら、神に人の常識は通用しないのだ。
亀の飛び石を渡り切って辰の神が待ち設けている対岸に到着した雷蔵は、琵琶姫はどうするのだろうと湖の方に向き直った。すると、亀たちがスウッと湖中に沈みながら消えていくのだった。呆然と湖面を見ていると、辰の神が背後から「心配無用!女人というものは仕度に時間がかかるものである!あのお方に限って何も心配要らぬである」と声をかけてきた。「あのお方に限って」という辰の神の言葉に引っかかるものを感じた雷蔵だったが、琵琶姫に対する他の神々の態度から彼女が人ではないことを確信していたので、彼はそれ以上考えるのをやめた。
人家もまばらな漁村とはいえ、日が高くなってきたのに家から人が出てこない。だが、その答えはすぐに分かった。湖岸から西の方に聳え立つ台地の方から、巨躯の獣2頭が眷属である4つ足の獣を引き連れて、雷蔵たちがいる湖岸に向かって走ってきているからだ。雷蔵は感じていなかったが、常人であれば戌の神と狗神たちの強大な霊圧と竜人から放たれる霊圧は、人間の生存本能に畏怖を感じさせ、人を萎縮させる。人々の中でも好奇心の強いものだけが戸の隙間から覗き込むことはしても、ほとんどの者たちは家や小屋の奥で震えながら家族同士で固まっているだけだった。そんなこととは露とも知らずに、雷蔵は人気がないことに安堵した。
「おう、犬どもが戻ってきたであるな。」と口を開いた辰の神は「烏の奴が山林を南下せよなどと言ってきおるでな、犬どもが下調べに行っておったのであるよ」と続けた。「やつがれは人の足というものを知らん、所詮は烏であるな」と鼻で笑うように言う辰の神に、『そういえば「あの小山に行け」と言われて向かっていったら、実際に、それは小山のように見える島で、そこに渡れたのは辰の神が気を利かせてくれたおかげだった』ということを雷蔵は思い出した。そんな話をしていると、息を切らせながら雷蔵に向かって突進してきた狗神が遠慮なく巨躯を雷蔵に擦り付けながらふもと近くにある神社の左わきから台地の低い部分を通れると念話で告げてきた。突然の念話に驚く雷蔵に「人語を発する余裕がないのであろう」と辰の神が彼女に代わって説明してくれたのだった。
「(日が傾くとさらに暗くなる、我等はそれでも見えるが、そちは見えぬであろう?急ぎ給え)」と狗神からの念話が飛んでくるが、彼女が頭を擦り付けてくるので、雷蔵は思わず狗神の頭を撫でながら耳を掻いたり喉を掻いたりしてやると、彼女は気持ちよさそうに甘えた声を出すのだった。小雪混ざりの冷たい風が台地から吹き降ろしてくる中、雷蔵たちは小野の台地に向かって歩き始めた。
以下1点、確認させてください。
**Q1.** 「常人であれば戌の神と狗神たちの強大な霊圧と竜人から放たれる霊圧は、人間の生存本能が畏怖を感じ、人を委縮させる」の一文、主語と述語の対応が不自然です(「霊圧は」が主語なのに「生存本能が畏怖を感じ」となっている)。
- A. 「〜霊圧は、人間の生存本能に畏怖を感じさせ、人を萎縮させる。」に修正(「が」→「に」、述語を主語に対応させる)
- B. その他の修正案をご希望
- C. 原文のまま活かす
なお、以下は明確な誤字・脱字のため自動修正しました。
- 「言われた向かっていったら」→「言われて向かっていったら」(脱字:て)
- 「委縮」→「萎縮」(表記:常用漢字表の本則に基づく修正。「萎」は2010年の改定で常用漢字に追加されており、現行の本則では「萎縮」が正しい表記)
1.A
修正を確定しました。全文にルビを振ります。
---




