亀の飛び石
辰神が「今は氷魚が旬であるぞ!」と言いながら、皿にこんもりと盛り付けてある氷魚の塩茹でを飯椀の上にさらさらと振りかけると、塩茹でごとうまそうに飯を掻き込むのだった。それを見た雷蔵は、箸でちまちまと食べるのをやめて、彼の真似をして氷魚の塩茹でを飯の上に振りかけて掻き込んでみた。これがなかなかの美味しさで、程よい塩味と小魚のうまみが飯に絡んで極上の味わいだった。さらに、皿の上に横たわるホンモロコの塩焼きをつつく。辰神がつついているホンモロコにはオスの個体のようだったが、雷蔵の方は子持ちホンモロコだったようだ。脂ののった腹身を箸でつまみ取ると卵が現れた。それを見た辰神は「おお!其方!当たりを得たであるな!!」とちょっと羨ましそうに言うので、雷蔵は思わず「ありがたや!」と言うのだった。もちろん、これは琵琶姫の計画通りである。そこで辰神が「ホンモロコも今どきが旬であるぞ!子持ちに当たるとは、其方、幸先が良いぞ!」というと辰神はガハハと豪快に笑うのであった。いかにも武人らしい豪快さである。本性は辰だが。
食事を終えた頃、兵主の戌神が衣服を着て2本足で立って歩いてきて、雷蔵の膳を下げた。辰神は自分のも下げてもらえると期待して待っていたようだが、戌神が戻ってくる気配はない。じっと戌神の方を見る辰神だったが、戌神が一瞥したあとそっぽを向いたので、頭を掻いてから、諦めて自分の膳を自分で下げ始めたのだった。すると、「やれやれ」と子の神の声が雷蔵の後ろから聞こえるので、彼が振り返ってみると、そこには背の低い翁がいた。神職の装いをした翁は「儂らは年神に召喚されて干支の12柱をしておるだけで、仲間でもなければ上下の身分もない。熊野の神々のお使いで来た八咫烏に導かれて兵主大社に集まっただけの事よ」と、干支の12柱が集まっていた理由を話した。「結果、物別れに終わったがのう」というや「はっ」とため息を吐くと『それで大将よ、これから如何に進軍するつもりか?」と問うてきた。
雷蔵は『取り敢えず、辰神様にまた道になってもらおうか』と思っていると、北岸の方から亀に乗った白蛇が近づいてきた。その姿を見た子の神が礼をするので雷蔵も慌てて礼をすると、兵主は「苦しゅうない、楽に」と短く告げ、「我は加勢できぬ。許せ」と続けると、「されど、兵は止められぬ」と言い添えた。そして兵主は鎌首を西の方に向けると、その手前の岸から向こう岸まで飛び石であるかのように甲羅が異様に平べったい亀が無数に浮かび上がってきた。そして「これを渡っていけ」と告げると、どういう合図をしたのか、兵主神の足になっている亀はくるりと回転して島の北側に向かって泳いで行き、じきに島の影に入って見えなくなった。
子の神は「兵主殿は所詮人の神よ、神々の争いには関わらぬものよのう」とその小柄な翁の相貌にふさわしい達観した悟りを述べると、さっさと亀の飛び石の上を年寄りとは思えぬ軽快さで渡って行くのだった。すると、いつの間にか雷蔵の右脇に立っていた辰神が「せめてものお心づくし、ありがたく使わせてもらうのである」というと飛び亀を渡って行く。「えっ?利用なさるか?」と内心驚いた雷蔵だったが、今は人の姿だから仕方がないのかと納得しつつ、狗神たちや琵琶姫はどうするのかと思って彼女たちの方を見ると、「我は支度があるゆえ後で参る、雷蔵殿はお先に参られませ」と三石竈の傍らにいた琵琶姫が告げて来た。その拍子で狗神と戌神と彼らの眷属たちが雷蔵の目の前を横切って、次々に飛び亀を渡っていった。やれやれと言った感じで天を仰いだ雷蔵は、意を決して亀の飛び石に挑むのだった。
以下2点について、判断が分かれるため確認させてください。
**Q1.** 「兵主の戌神が衣服を着て2本足で立って歩いてきて、雷蔵の前を下げた」の「前を下げた」の部分
- A. 「膳を下げた」に修正(食事の器を下げる、の意。後段で辰神が同様に「自分の膳を下げ始めた」とあるため)
- B. 「膳を下げた」以外の別の表現に修正
- C. 原文のまま活かす
**Q2.** 「熊野の神々のお使いできた八咫烏に導かれて」の「お使いできた」の部分
- A. 「お使いに来た」に修正(使者として来た、の意)
- B. 「お使いで来た」に修正
- C. 原文のまま活かす
A/B/CでQ1、Q2それぞれお答えください。
なお、以下は明確な誤字・表記ゆれのため自動修正しました。
- 「『それで大将よ、これから以下に進軍するつもりか?」ととうてきた」→「『それで大将よ、これから以下に進軍するつもりか?』と問うてきた」(誤字:とうてきた→問うてきた、および鉤括弧の不一致を修正)
- 「兵主神の葦になっている亀」→「兵主神の足になっている亀」(誤字:葦→足)
- 「じきにしまの影に入って」→「じきに島の影に入って」(表記ゆれ:しま→島)
- 「いつの間にか雷蔵の右脇に経っていた辰神」→「いつの間にか雷蔵の右脇に立っていた辰神」(誤字:経って→立って)
- 「『せめてものお心づくし、ありがたく使わせてもらうのである」というと」→「「せめてものお心づくし、ありがたく使わせてもらうのである」というと」(鉤括弧の不一致を修正)
- 「「えっ?利用なさるか?』と内心驚いた」→「「えっ?利用なさるか?」と内心驚いた」(鉤括弧の不一致を修正)
1.A,2.B、「以下に」ー>「如何に」
修正内容を確定しました。
**確定事項**
- 「前を下げた」→「膳を下げた」
- 「お使いできた」→「お使いで来た」
- 「これから以下に進軍するつもりか」→「これから如何に進軍するつもりか」
全文にルビを振ります。
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