湖畔の岩宿
三石竃とは、野宿などの際にその辺の石を積み上げて作る簡易の竈のことで、古代より人類が煮炊きをするために利用してきた原始的な調理設備です。
「おお!そうじゃ」と、今までの成り行きをごまかすかのように琵琶姫は声を上げると、「そろそろ夕餉の刻であろう、この握り飯を召され」と言うと懐から笹の葉の包みを取り出し、その包みを開くと、岩窟の壁からずり落ちそうになっている雷蔵の眼の前にずいと差し出してくるのだが、「あ、いや、しばし待たれよ」と慌てて座り直した雷蔵は琵琶姫が差し出す握り飯の包みを受け取った。それは、相変わらず光る団子の様に見える物だった。腰の竹筒から水を一口飲んだ雷蔵が握り飯を頬張っていると、狗神がぼそっと呟いた「なるほど、人の子ならぬ霊気があるわけよのぅ」、その言に対して琵琶姫は口元に両手を当てて狗神を睨みつけたのだった。
握り飯を食べ終わった雷蔵は眠くなってきた。岩戸から入ってくる光はもう殆どなかった。そもそも、午後から天気が荒れてきて湖面も波が高くなってきており、冷たい西風が吹き付けてきていたものだから、鎧具足姿の雷蔵はかなり体力を消耗していたのだ。それに、岩戸の方側にいる琵琶姫からはなんだか良い香りが漂っていたのだが、それが妙に気分良くなってくる香りで、それもあって、雷蔵は岩窟の壁に持たれたまま寝入ってしまったのだ。そんな雷蔵を愛おしそうに見つめていた琵琶姫は、彼が起きないようにそっと自分の胸元まで彼の体を寄せると、自分の膝の上にその頭をそっと置き、彼の体を伸ばして横たわらせるのだった。
翌朝、雷蔵が目覚めた時、彼はいつの間にか横たわっており、そして、彼の上にフカフカとして柔らかく温かい物が乗っかっていることに気づいた。岩窟の奥側から岩戸付近にいる彼らを見た場合、壁際で横たわっている武者の上に巨大な犬が覆いかぶさっている光景を見ることができただろう。雷蔵の目が開いたのを見た狗神は「起きたか」と言葉をかけてきた。「起きてござる」と返す雷蔵の上からなおもどこうとしない狗神に「降り給え」と請うのだが、狗神はいたずらっぽい笑みを浮かべると彼の顔をベロベロと舐め始めた。「か、勘弁・・・か・・・」と困惑しながら懇願する雷蔵を尻目にますます楽しくなってきたのか、狗神の舐め舐め攻撃は勢いを増してきたが、雷蔵が諦めかけてきたあたりで、彼の頭上から「はしたなしや!この野良犬め」という琵琶姫の怒声が響くと、狗神はようやく舐めるのを止めて彼の上から退いた。
顔が狗神の唾液まみれになった雷蔵はよろよろお起き上がると、「おお!救いの女よ!」と琵琶姫に手を合わせて拝み始めるので、ため息を一ついた琵琶姫は「顔を洗い給え」と言いながら雷蔵の手を取り琵琶湖の岸に連れて行ったので、彼は琵琶湖の水で自分の顔を洗い清めた。兵主大社の御祭神もこの湖の水で御神体を洗われるのだ。この湖の水で清められぬはずがない。顔を洗い終わった雷蔵の脇にいつの間にか立っていた琵琶姫が手ぬぐいを寄こしてきたので、彼は「かたじけない」と礼を述べてそれを受け取り顔を拭き取った。朝、寝起きに顔を洗うだけでこんなにもさっぱりするものなのかと、珍しくそう感じた雷蔵だった。
先程は顔が唾液で濡れていたためにあまり良く見えていなかったが、顔が清潔になった状態であたりを見渡すと、昨日は何もなかったはずの場所にいつの間にか、三石竈を大きく作ったようなものが据えられており、その上に鍋釜が3つ載っていた。一つには羽釜が載っていて米が炊けるよい香りがしており、残る二つの鍋では何かが煮えているようだった。兵主の犬神がどうやって握っているのか、大きな汁匙を片手に鍋をかき混ぜている珍妙な光景があった。
1点、確認させてください。
**Q1.** 「この握り飯を召され」の直後、句点の位置に読点が続いています。「そろそろ夕餉の刻であろう?、この握り飯を召され」の「?、」の部分をどう処理しますか?
- A. 「?」の直後の読点を削除(「そろそろ夕餉の刻であろう?この握り飯を召され」)
- B. 「?」を削除し読点のみ残す
- C. その他
A/B/Cでお答えください。
なお、以下の誤字は自動修正しました。
- 「笹の葉の提を取り出し」→「笹の葉の包みを取り出し」(誤字:提→包み。直後で「その包を開くと」とあり文脈に合わせて統一)
- 「その包を開くと」→「その包みを開くと」(表記統一)
- 「光る団子の様に見えるの物だった」→「光る団子の様に見える物だった」(助詞「の」の衍字)
- 「岩戸の方側にいる」→「岩戸の方側にいる」はそのまま活かしています(「方側」は「ほうがわ」と読ませる意図と判断)
1.B
了解しました。確定します。
**確定事項**
- 「そろそろ夕餉の刻であろう?」→「そろそろ夕餉の刻であろう、」(「?」を削除し読点のみ残す)
全文にルビを振ります。
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1点、確認させてください。
**Q1.** 「三石竈を大きく作ったようなものが据えられており」の「三石竈」ですが、確定済みルールでは「釜戸=飯釜を載せる調理器具、竈=鍋を載せる調理器具」と使い分けが定められています。ここでは「羽釜」(米を炊く=飯釜)と「鍋」(2つ)が同時に載っており、両方の機能を兼ねた設備と読めます。
- A. 「三石竈」のまま活かす(伝統的な「三つの穴で複数の鍋釜を同時に使う」設備として、竈の表記で統一)
- B. 「三石釜戸」など、飯釜を含む点を反映した表記に修正
- C. その他のご指定
A/B/Cでお答えください。
なお、以下の誤字は自動修正しました。
- 「雷蔵が目覚め時」→「雷蔵が目覚めた時」(誤字:脱字)
- 「柔らかく温かい物乗っかっている」→「柔らかく温かい物が乗っかっている」(助詞「が」の脱字)
- 「昨日は何もなかったはずの場所にいつの間にか昨日は何もなかったはずの場所に」→「昨日は何もなかったはずの場所にいつの間にか」(同一表現の重複を整理)
1.A、今回の野営竈は3個の鍋釜を同時に乗せられるように石を組んだものなので、羽釜だけが乗っているわけではないことから「釜戸」の表記区別をあてはめられないと思い「竈」にしました。前回は竈が2個あってそれぞれの竈に乗せているものが違ったので、どの竈を扱っているかを表記分けしていただけです。
承知しました。「三石竈」で確定します(複数の鍋釜を同時に載せる設備全体を指す場合は「竈」表記、というルールとして今後も適用します)。
全文にルビを振ります。
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