この時代には志那大陸で成立した「部隊」や「兵科」という戦術・兵法の概念が無かったようなので、「部隊」とか「司令官」という表現は避けました。ただし、弓取りのことは「弓兵」と表記しました。
100余名と言う割には20人前後しかいないように見えたのだが、弥助に何かを言われた兵士2名がそれぞれ反対方向に走っていったので、おそらく20名単位で四方を包囲しているのだろうと雷蔵は予測した。だが、そんな相手の都合に付き合うべき理由もなく、雷蔵は大太刀を抜き放った。それに応じて敵の兵士たちも次々と自分の太刀を抜き放って構えを取るが、敵の大将の弥助は先ほどの引け腰とは打って変わって強気な薄ら笑いで雷蔵の方に向き直ると両脇にいるしっかりと武装した没落武士のように見える槍持ちたちに目をやってから「これだけの数の前に武士の誇りなど無意味よ」と言ってゲラゲラと笑い始めると、兵士たちもそれに倣って笑い始めた。
「風神様、雷神様方のお力添えをいただきたく候」、雷蔵はそう呟くと正面の弥助めがけて大太刀を右手に下げた状態で走り始めた。それに応じて、弥助自身も太刀を引き抜き「切り刻め!」と掛け声を上げてから走り始めると、控えていた兵士たちも雄たけびを上げながら突撃し始め、弓を持つ者たちも自分の刀を抜いてそれに加わった。敵勢が突撃を開始した拍子で雷蔵が大太刀を右下から振り上げるかのように左方向へ振り抜くと、雷撃交じりの暴風が吹き出して弥助達を吹き飛ばしながら電撃を与え、彼らは1間半ほど飛ばされた後、燃えながら痺れて動けなくなってしまうのだった。その時点で、北から25名ほどの兵士たちが姿を現した。
南を下にしてハートマークの形をした神社の境内の西側に通用門があり、南南東に鳥居がある。弥助の手勢は通用門の西側に構えていたが、その北西方向に陣取って警戒していた集団は、倒れた兵どもが煙を燻ぶらせながら倒れている光景に驚き訝しみながらも、先ずは彼らの大頭目である弥助を助けに行った。弥助の手勢の半数と弥助自身もかなり酷い火傷を負って虫の息であり、残りの者たちは絶命していた。増援集団の頭目は即座に「敵は怪しげな術を使っている」と声を張り上げて配下たちに警戒を呼び掛けると、半数は味方の生死の確認をさせ、もう半数は自分と共に雷蔵と対峙させる。そんな折、境内の南側を警戒していた集団が現場に近づく。
現状、雷蔵は南北から挟み撃ちされる立ち位置になっていた。北側の集団が弓兵の射撃準備をし始めたことで、南側から迫っていた集団は突撃を中止し、雷蔵との距離を保ったまま弓兵の射撃支援をし始めた。と言っても、弓兵は全体の半数にも満たないので、大軍勢が擁する数百の弓兵が放つ一斉射撃よりも命中率は下がる。それに、弓兵にも弱点はある、彼らは射撃のために一旦立ち止まらなければならないのだ。歩きながら矢を射て命中させられる弓取りはそうはいないものだ。歩兵が槍や剣を構えた状態で間をあけて横一列に並ぶと、弓兵は歩兵と歩兵の間の後ろで弓を構え始め、矢筒から矢を取り出して弦につがえる。この時点で雷蔵にできることは逃走ぐらいのものだった。標的が生き残るには移動した方が有利なのだ。そこで、雷蔵は西側の野洲川に向かって走り始めたが、その時、対岸の石部方面からオオカミの遠吠えが聞こえて来たのだった。
1点、句点の脱字を自動修正しました。
**自動修正した箇所**
- 「動けなくなってしまうのだったその時点で」→「動けなくなってしまうのだった。その時点で」(句点の脱字)
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今回、明確な誤字・表記ゆれは見当たりませんでした。全文にルビを振ります。
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了解しました。この付記についてはルビ振りは不要のようですが、念のため全文にルビを振っておきます。
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