検断不入
※1.|検断不入《けんだんにゅう/けんだんふにゅう》とは、日本中世において、荘園や寺社などが外部の警察・司法権力(検断権)の介入を拒絶できた特権を指します。これにより、所領や境内に入り込むことを禁じられた権力者は、独自に犯罪者の捜索や逮捕を行うことができませんでした。 (Wikipedia)
※2.宮司:神社の最高位職で、当時の宮司は大体境内に住んでいたらしい。
※3.出仕:最下級職で、臨時職員や神職見習いのことらしい。
雷蔵が客間で朝餉をいただき、食後の茶をいただいた後に鎧具足の着付けを手伝ってもらっている最中に訪問者が来た。訪問者は勝部の守備隊で警邏隊を指揮している美濃国松原弥助と名乗った。彼は慇懃無礼な態度で落人が敷地内に隠れていないか家探しさせてほしい旨を述べてきたが、神職は当然のように御上神社に与えられている「検断不入権」を主張して断ると、弥助は太刀の柄に手をかけ、鯉口から太刀の刃を少しだけ見せて脅しかけてきた。自分のことを脅すということは、この神社の祭神を脅すことと同義であるとすごむ神職だが、どういうわけか弥助も引かない。弥助の付き添いで来た2人の付き人も主に倣って、太刀を抜かないものの、柄に手を置いて刀を抜く仕草をして脅すのだった。
表でのやり取りは障子越しで雷蔵に聞こえていたので、彼は一宿一飯の恩がある者たちに迷惑をかけてしまったかと思ったが、出仕と思しき若い男が「お武家様、お気になさらないでくださいませ。あの弥助とかいう男、昨日からしつこくあのような申し出をしておりまして、宮司もほとほと困り果てているところでございます」とのことだった。「この辺で何かあったのか?」とその若者に雷蔵が問うと、彼は怪訝な表情で「3日ほど前に都で乱がおきまして、その日のうちに収まったのですが、未だに落人狩りが続いているのでございます」と答えるのだった。「戦働きで手柄を上げようと駆け付けたら戦が終わっていた故に手ぶらで国に帰るわけにもいかずに、せめて落人の首でも取ろうというのか」と雷蔵が独り言ちると、その若者は「宮司もそのように仰せでありました」と肯定するのだった。見習いの若者が「お武家様は、彼の者が諦めるまでここにお留まりくださいませ」と言ってきたが、「気遣い無用」と一言断ると、雷蔵は玄関から出ていくのだった。
雷蔵が建物から出てくると、弥助と部下たちは思わず太刀を抜きそうになったが、寸でのところで思いとどまった。「ほぅ、太刀に手をかけておきながら、神仏の祟りは恐れるというのか?」と彼らの行動の矛盾を指摘した雷蔵は続けて「某は逃げも隠れもせぬ、だが、大人しく首をやるわけにもいかぬ。ここは聖域でござる、刃傷沙汰での穢れはご法度。荒事をご所望とあらば表に出よ」と告げると、弥助は「おう、おとなしく縄に就くというのであればその方の首は跳ねぬでもない」とどもりがちに返してきた。「虜囚の辱めを受けるなど武士の恥、そのような申し出を受けるのはその方のような野盗上がりの俗人くらいの者よ」と挑発した。弥助は顔を真っ赤にして怒気を放っていたが、さすがに境内で刃傷沙汰するほど理性を失ったわけでもなく、「少々大柄だからと言って調子に乗っていられるのも今のうちだけよ、外には我が手勢100余名が待ち設けておる、泣いて後悔しても後の祭りと知れ!」と吐き捨てると通用口に通ずる道から引き返していった。
宮司が「数日ほどお留まりになれば、あのようなモノどもと変わらずに済みましたものを」とボヤくが、「某もそれほどゆるりとするわけにもいかなんだ。これで討ち死にするようならそれまでのことよ」と悟ったようなことを言うと、宮司は苦笑いしながら「お武家様には神々のご加護がついてございます。ご武運を」と言ってから敬礼すると、見送りに来た出仕や巫女たちも主に倣って一礼するので、雷蔵も彼らに一礼返すと踵を返し、通用門に向かうのであった。
以下1点について判断が分かれるため、選択肢を提示します。
**Q1.** 「弥助の付き添いで来た2人の付き人もある時に見習って」の「ある時に見習って」の部分
- A. 「主に倣って《あるじにならって》」に修正(弥助を真似て、という意味)
- B. 「彼に倣って《かれにならって》」に修正
- C. 原文のまま「ある時に見習って」を活かす
A/B/Cでお答えください。
なお、以下2点は明確な誤字のため自動修正しました。
- 「出仕と思しきの若い男」→「出仕と思しき若い男」(助詞「の」の衍字)
- 「彼の物が諦めるまで」→「彼の者が諦めるまで」(誤字:物→者)
1.A
修正内容を確定しました。全文にルビを振ります。
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以下の誤字・表記ゆれを自動修正しました。
**自動修正した箇所**
- 「野党上がり」→「野盗上がり」(誤字:政党の「野党」ではなく、盗賊の意の「野盗」)
- 「出資や巫女たち」→「出仕や巫女たち」(誤字:投資の「出資」ではなく、前出の「出仕」と同義)
- 「ある時に倣って」→「主に倣って」(前回確定した表記に統一)
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