声の主(2)
「やれやれ、呆けておったものを、もう立ち直りおったわい。じゃが、ここで立ち話もなんじゃ、今しばし足労してもらおう、儂についてくるがよい」そういうとカラスは踵を返し、とことこと歩き始める。
男は立ち上がろうとするものの、ふらついて膝をついてしまった。その様子に気付いたカラスは足を止めてこちらに振り返るが、一瞥するなりまた歩き始めてしまうので、男は仕方なく四つ這いのままカラスの後についていくことにするのだった。
どれくらい這っていたのかはわからないが、男はカラスの歩みについていくことが困難になっていた。はた目から見れば、この男は右肩の鎧の大袖は外れかかっていて腕と胴の間に紐一本でぶら下がっていたし、左肩の大袖には2本の矢が突き立っており、そのため、左腕からはかなりの出血が見られた。胴の部分には前に2つ、後ろに1つ矢が突き立っており、鎧の胴の内側には血だまりができるほど出血があった。
右の太ももの正面に矢が一つ刺さっているが、これは根元から折ってある、歩きづらかったので男が無意識に折り取ったのだ。
そんな状態だったので、男は失血のために脳貧血でふらふらになっていた。視界が暗くなり手足の動きは緩慢になっており、もはや倒れる寸前の状態だった。
先に開けた場所まで来ていたカラスは男の方に向き直ると、「やれやれ、世話がかかるのう」と愚痴をこぼすと、羽を開いて一回だけ羽ばたいた。すると、男の背後から強力なつむじ風が吹いてきて男の体を吹き飛ばすと、そのカラスの10寸ほど(およそ30㎝)上を飛び越えていき、その先にある社の手前に落ちた。
「うぐ」もはや悲鳴すら上げられないほど弱っていたものの、地面に胸と腹をしたたか打ち付けた男は肺から押し出された空気によるうめき声を発すると気絶したのだった。
「白蛇のやつめ、傷まで治しておけば良いものを、これではこの男、また死んでしまうではないか、やれやれ」そういうと、そのカラスは右羽を少しもたげ、その下に隠されていた3本目の足を自分の顔の右側面まで掲げた。
しゃべるカラスが掲げた3本目の足の元に、社の屋根から舞い降りてきた一羽のカラスがくちばしに加えていた光る石をあてがうと、しゃべるカラスは3本目の足の指を閉じてその石をつかみ、男の背中に乗って心臓の真上まで移動した。「この辺りでよかろう」そう独り言ちたカラスはカラスの鳴き声で何かを囀り始めた。すると、社の屋根の上や、その周辺の樹木の枝にとまっていた無数のカラスたちがそれに唱和するかのように同じさえずりを復唱し始めるのだった。何度か別のさえずりをした後、「カァ!」と一声大きく鳴くと男の背中に乗せられた光る石の光が強くなっていき、猛烈なまばゆさで辺りの闇が打ち払われたかと思った刹那、突如光が消えるのであった。
「ゴホッゴホッ!」と男が咳をしながら体を起こすと、一羽のカラスが彼の頭の右側によって来るのだった。
「某は・・・どうなっておったのだ?」とかすれた声で尋ねる男にカラスは呆れたように言い放った。「そこもとはまた死んでおったわい」
クロードAIの校正
**修正箇所まとめ**
- 「立ち直り負った」→「立ち直りおった」
- 「腕と同の間」→「腕と胴の間」
- 「後ろに1つやが」→「後ろに1つ矢が」
- 「矢代」→「社」(誤変換修正)
- 「その意思をつかみ」→「その石をつかみ」
- 「しゃべるカラス」は原文のまま存続




