山中の廃神社
男が右手側に顔を上げると半間ほど離れたところに三本足のカラスが立っていた。
彼はカラスを見ると「ではなぜ某は生きておる?」と当然の疑問を投げかける。
「儂はこれからそこもとに頼みごとをせねばならぬのじゃ、それなのに死なれてはかなわぬからのう、熊野の神々から賜った神通力で蘇らせたのじゃ」とカラスはこともなげに言い放った。
続けて、「して、そこもとの名はなんと申すのじゃ?」と男に問う。
だが、そんなことを言われても、男にはどうしても思い出すことができなかったのだ。
そもそも、なぜ崩れかけた社の前に寝そべっているかもわからぬのだ。
のそのそと起き直ると、手足の下に違和感をもたらした者たちの正体を眺める。
それらは、先ほどまで男の体に突き刺さっていた矢だった。
困惑する男をしばらく見守っていたカラスは諦めた様子でこう言った「ふうむ、無理やり魂を現世に引き戻すと、大切な何かをあちらに置いてきてしまうようじゃのう、致し方なかろう」と言って頭を振ると「儂には特に名などはないが、人は儂のことを八咫烏と呼ぶ。「ヤタ」とでも呼ぶがよい、そこもとのことは・・・サイカンとでも呼ぼう、再び還って来た者、"再環"じゃ」そう言うと、笑っているのか、バカにしているのか、「カアカア」とカラスらしく鳴くのであった。
ヤタは気が済むまで鳴き続けたが、サイカンが|むっとした顔をしているのを見て鳴くのを止めた。
鳴くのを止めたとたんにサイカンの腹の虫が鳴っているのが聞こえたため、「ほう、これはしたり」と言いざま社の屋根の方に顔を向けると、数羽のカラスが団子を嘴に咥えて舞い降りてきた。
ヤタが「サイカン、手を出すがよい」と告げるので、サイカンと呼ばれた男は右手を差し出した。
すると「左手も出さぬか、気の利かぬ男よのう」とヤタに嫌味を言われたので左手も差し出す。
ここにきて、団子を加えたカラスたちが次々とサイカンの両掌の上に団子を置いていったため、彼の両手には8個の団子が載せられていった。
空っ腹のサイカンにとってどんな食べ物でも今はうまそうに見えた。
勢いよく右の掌の上の団子にがっつくが、飲み込もうとした途端にむせる。
「人の子は脆いものよのう」と他人事のように嘯くヤタをにらみつけるサイカン。
「やれやれ、そこもとの腰にあるのは飾りか?それとも、それのことも忘れたのか?」とヤタが皮肉っぽく告げる。言われて空いた右手で右の腰をまさぐると、そこには竹筒の水筒が下がっており、取り外してみると容量の半分ほどの水が入っているようだった。
三口ほど水を飲んだところで喉の奥に張り付いていた団子の残骸が胃の腑に落ちていくのであった。
クロードAIによる校正ログ
**修正箇所まとめ**
- 「今わうまそう」→「今はうまそう」
- 「嫌味をを言われた」→「嫌味を言われた」




