Act114-最善手
ーーそれから数十分後、目覚めた誠也、ユズハ、フィリア、ホノカに事情を説明し、香澄は誠心誠意の謝罪を見せていた。
「まぁ……戻ったなら良かった。気にしないで」
「よろしくねー!」
フィリアもユズハも、少し前まで死闘を繰り広げた相手なのにも関わらず、香澄の謝罪をいともあっさりと受け入れた。
彼女たちならそうしてくれると信じていたが、俺にとっては香澄と誠也がギルドの仲間に認められたことが、何よりも嬉しかった。
「とりあえず、帰ってゆっくり話そうぜ」
ぱん、と手を叩き、六人の方を向く。
今日は皆に疲労が見える。通り魔事件も解決(?)したみたいだし、これ以上この森に居座る理由もない。
しかし、ユズハから想定外の反論が上がる。
「でも、この森から出られないんじゃないの?」
「……なんだと」
聞いてないぞ、そんなこと。
俺が意識を失っている間に、一体何があったんだ。
「この森がダンジョン扱いになってるみたいだから、ボスを倒さないと……」
「ボスの姿は見たのか?」
「それが……」
ユズハが押し黙ってしまう。代わりに後を繋いだのはミユだった。
「もしかしたら、セイヤ君がダンジョンボスとして設定されているかもしれないんだ」
それを聞いた俺は一瞬だけ絶望したが、すぐにとある可能性に思い当たった。
「けど、香澄と同じ理屈なら、もう誠也の”役”も解かれたんじゃないのか?」
香澄は、狂戦士的な役回りを与えられて、この世界に訪れた。そして正気と”役”の切り替えを行っていたのはあの短剣だった。
同じ仕組みが他の補填被験者にも設定されているなら、現在手持ち装備無しの誠也は、おそらくもうダンジョンボスの任を解かれているはずだ。
「そっか……そうかもね。短銃はさっきフィリアが破壊したし。……ってあれ、狙撃銃の方は?」
今さらになって、初対面の時に比べて装備が一つ少ないことにミユが気づく。
誠也は記憶を辿り、思い出すなり答える。
「あーあれね……どっかに置いてきた……」
「「はぁ!?」」
俺とミユの声がリンクする。
「だ、だって邪魔だったし。短銃だけあれば十分だし」
「あのなぁ……」
「どうするソウちゃん」
「まぁ通り魔の噂がなくなったら、ここに近づく人もいなくなるだろうからな。わざわざ探すのも大変だし、置いて帰るしかないか」
呪われた武器を残しておくことで起こり得る可能性としては、その狙撃銃を拾った誰かが”役”を引き継いでしまうことだ。
まぁ実際に事例を見たことがない以上、そんなことが起こるのかどうかはわからないし、そもそも攻略すべきダンジョンでもなく、通り魔の噂も消え、レアドロップも期待できない街外れの森に近づくプレイヤーは少ないだろう。
しかしーー。
「ミユ、やっぱり皆を連れて先に帰っててくれ」
「え、ソウちゃんは?」
「色々考えたんだけど、そんな危ない武器を残して帰るわけにはいかない」
「なら私も行くよ」
「ダメだ、俺一人で行く。もう皆を危険な目には遭わせられない」
俺の言葉に異様な雰囲気を感じ取ったのか、ミユは一瞬気圧されたように萎縮してから、諦めるように呟いた。
「……わかった。でも、ちゃんと戻ってきてね」
「あぁ、もちろんだ」
その会話を最後に、俺は皆とは反対方向へと駆け出した。




