Act113-囚われの景色
「なんなの……これ……」
周囲に広がる、凄惨な光景。
何人ものプレイヤーが、自らの武器を投げ出して倒れ込んでいる。
こんな森の中で遊んでいるわけでもなかろう。一目見ただけで、皆死んでいることがわかった。
ーーこれを、私が……? ありえない。
プレイヤーの数は軽く十、いや二十は超えている。中には屈強な筋肉に加えて重そうな鎧を身につけている人もいて、到底私一人でどうにかしたとは思えない。
いや、それ以前に。
ーーなんで私は、戦っていたの?
無論、彼らには恨みどころか面識すらない。そもそも私はログインしたばかりだし、これが仮想世界で初めて見る景色なのだから。
「あっ……」
次の瞬間。
周りに転がっていたプレイヤーたちがほぼ同時に眩く輝き、赤いポリゴン片に変わって四散していった。
ーー皆、死んだの?
これが、この世界での”死”。一片の欠片も残らず、何も無かったことにされてしまう。
HPという視覚化された命。それがゼロに変わる瞬間の恐怖。彼らは死に際に、何を考えたのだろうか。
「……そういえば」
景色にばかり気を取られ、自分の姿を認識するのが遅れていた。
白一色の……これはパーカーだろうか? 私があまり着たことのないタイプの上着に、下は普通のジーンズという、仮想世界の服装というよりは、ただ森に遊びにきた私服姿の女の子のようだった。
ただ一つ、腰に巻かれた一対の短剣だけが異彩を放っていたが。
「きれい……」
なんの変哲もない、よくファンタジー物のゲームで見かける普通の短剣なのに……何だろうか、吸い寄せられる魔力のようなものを感じる。
そしてそのまま、短剣の柄を握ったーー。
◇◆◇◆◇◆
「そこからまた記憶が途切れた、と?」
「はい。触ってはいけないと頭ではわかっていても、なん度も同じことを繰り返してしまって……」
「じゃあ、その短剣が狂化の原因だったのね」
ようやく納得のいく答えを導けたのか、ミユが満足そうに何度も頷く。
そこで、俺とミユがほぼ同時に、あることに気づく。
「あれ、ってことは……」
「武器を破壊された時点で、香澄は正気に戻ってた……?」
「え!? あ、まぁ、うん。はい」
「なんで言わなかったんだよ」
あの時点でもう自我を取り戻していたのならば、わざわざ香澄と二人きりになって剣を交わす必要は無かった。
「だって、知らない人たちと戦った後でしょ? いきなり『もう大丈夫です』って言っても、受け入れてもらえるかが怖くて……」
確かに、事情を知っていたミユたちではなく、他のプレイヤーと同じ事態に陥っていたら、間違いなく香澄は殺されていただろう。
俺だって、正気を失った見知らぬプレイヤーと全力で戦った後に、いきなり「操られていただけなんです」と言われて、すぐ信じられるかどうか問われると怪しいところだ。
「まぁ、とりあえずあいつらには謝ろうな」
「うん」




