第98章 ここまで
朝。
目を開ける。
天井。
いつもの。
今日。
行く。
身体を。
動かす。
足。
軽い。
肩。
大丈夫。
胸。
少し。
速い。
怖い。
違う。
それだけでは。
ない。
楽しみ。
両方。
知っている。
起きる。
朝食のあと。
先生が。
来る。
診察。
いつもより。
少し。
長い。
たぶん。
私が。
そう感じるだけ。
「うん。問題なし」
「……行けますか」
「行けるよ」
少し。
嬉しい。
でも。
先生が。
指を。
一本。
「ただし」
来た。
「帰ってくるまでが練習」
「はい」
「疲れたら?」
「言う」
「気分が悪くなったら?」
「言う」
「予定と違ったら?」
「その時に。考える」
「よし」
先生が。
笑う。
「行ってらっしゃい」
行ってらっしゃい。
前に。
聞いた。
町へ行った時。
でも。
今日は。
帰るのが。
明日。
予定では。
「……行ってきます」
言えた。
玄関。
馬車。
荷物。
思っていたより。
多い。
私の鞄は。
小さい。
アルベルトの荷物。
ヴィオラの荷物。
食べ物。
水。
毛布。
ほかにも。
いくつか。
旅は。
荷物が。
多い。
「忘れ物ない?」
ヴィオラ。
考える。
「……たぶん」
「確認した方の?」
「はい」
笑う。
カイル。
いる。
ノアも。
学校は。
「今日はまだ間に合う」
聞いてない。
「気をつけて」
カイル。
「はい」
ノア。
こっちを。
見る。
何も。
言わない。
「……土産」
言ってみる。
「いらねえって」
「はい」
「だから嬉しそうにすんな」
少し。
面白い。
ミーナ。
包みを。
渡す。
「お昼にどうぞ」
「……前の?」
「はい」
川で。
食べた。
あれ。
「ありがとう」
受け取る。
自分の鞄には。
入れない。
馬車へ。
一人で。
全部。
持たなくていい。
動く。
屋敷が。
遠くなる。
門。
道。
知っている。
町。
知っている。
人。
店。
音。
前より。
少し。
平気。
窓から。
見る。
町の端。
前に。
見た。
その先。
道。
前は。
ここで。
降りた。
今日は。
通る。
少し。
胸が。
固くなる。
でも。
見る。
道は。
続く。
馬車も。
進む。
町が。
後ろへ。
行く。
違う。
私たちが。
離れている。
振り返る。
もう。
端が。
小さい。
「大丈夫?」
ヴィオラ。
考える。
「……はい」
少し。
間。
「まだ」
ヴィオラが。
頷く。
それだけ。
しばらく。
揺れる。
座る。
景色。
木。
畑。
道。
また。
木。
似ている。
でも。
少しずつ。
違う。
「宿場まで、どのくらい?」
聞く。
アルベルトが。
外を見る。
「このままなら夕方前だ」
夕方前。
長い。
「途中で休む」
「はい」
知っている。
ずっと。
馬車にいるわけでは。
ない。
途中で。
降りる。
食べる。
休む。
また。
進む。
前に。
覚えた。
昼。
馬車が。
止まる。
道から。
少し。
外れた場所。
木陰。
降りる。
足。
少し。
変。
揺れていたから。
地面が。
動かない。
当たり前。
でも。
少し。
変。
ヴィオラが。
見る。
「どう?」
「……足。変」
「痛い?」
動かす。
「違う」
「痺れてる?」
「それも。違う」
考える。
「……揺れてないのが。変」
ヴィオラが。
笑った。
「馬車に慣れてきたってことかな」
たぶん。
座る。
ミーナの。
包み。
開く。
前と。
同じ。
パン。
肉。
野菜。
少し。
嬉しい。
食べる。
おいしい。
アルベルトも。
食べている。
ヴィオラも。
旅。
している。
たぶん。
今。
食べたあと。
少し。
横になる。
空。
木。
風。
宿では。
ない。
家でも。
ない。
でも。
休める。
目を。
閉じる。
眠らない。
少しだけ。
身体が。
軽くなる。
起きる。
「行けそう?」
ヴィオラ。
身体を。
見る。
足。
大丈夫。
肩。
少し。
重い。
でも。
「……行ける」
「分かった」
馬車へ。
また。
乗る。
午後。
揺れる。
午前より。
少し。
長く感じる。
景色。
見る。
でも。
時々。
目を閉じる。
眠くは。
ない。
疲れている。
たぶん。
肩。
さっきより。
重い。
背中。
少し。
固い。
足。
大丈夫。
まだ。
行ける。
宿場。
夕方前。
どのくらい。
分からない。
聞けば。
分かる。
でも。
聞かない。
少し。
考える。
何を。
分からない。
馬車が。
止まる。
休憩。
二回目。
降りる。
足を。
地面へ。
立つ。
大丈夫。
数歩。
歩く。
大丈夫。
でも。
午前と。
違う。
身体が。
遅い。
ヴィオラ。
見ている。
何も。
言わない。
アルベルトも。
水を。
飲む。
少し。
休む。
宿場まで。
行ける。
たぶん。
まだ。
歩ける。
まだ。
馬車にも。
乗れる。
だから。
行ける。
そう。
思う。
でも。
何か。
違う。
「行くか」
アルベルト。
普通の。
声。
馬車。
見る。
乗れば。
進む。
宿場へ。
予定どおり。
一泊。
明日。
帰る。
できる。
たぶん。
足。
痛くない。
気分も。
悪くない。
まだ。
できる。
でも。
昨日。
先生。
まだ行けそうでも。
休みたくなったら。
休む。
前にも。
覚えた。
持てるのと。
持ち続けられるのは。
違う。
行けるのと。
行き続けられるのも。
たぶん。
違う。
明日。
帰る。
帰るためには。
今日。
どこまで。
行く。
考える。
宿場。
まだ。
先。
身体。
もう一度。
見る。
肩。
重い。
背中。
固い。
足。
少し。
重くなっている。
さっきは。
大丈夫だった。
今は。
少し。
疲れている。
言える。
「……アルベルト」
「なんだ」
声。
出た。
「宿場まで。あと。どのくらいですか」
アルベルトが。
道を見る。
「今の速さなら、まだしばらくかかる」
しばらく。
数字では。
ない。
でも。
十分。
馬車。
見る。
道。
見る。
ヴィオラ。
見る。
二人とも。
待っている。
答えを。
言わない。
私が。
決める。
まだ。
行ける。
でも。
「……今日は」
声が。
少し。
止まる。
怖い。
何が。
予定と。
違うこと。
宿場まで。
行かないこと。
できなかった。
みたいに。
なること。
違う。
予定は。
予定。
変わったら。
その時に。
考える。
「……今日は。ここまでにしたいです」
静か。
少し。
アルベルトが。
頷く。
「分かった」
それだけ。
ヴィオラも。
「うん」
それだけ。
失敗。
とは。
言わない。
成功。
とも。
言わない。
胸。
少し。
軽くなる。
「では、ここで夜を越す」
アルベルト。
ここ。
見る。
道。
木。
草。
宿。
ない。
「……ここで?」
「少し場所を選ぶがな」
ヴィオラが。
馬車の後ろへ。
荷物を。
下ろす。
毛布。
布。
水。
ほかにも。
出てくる。
見る。
多い。
朝。
思った。
荷物。
多い。
一泊なのに。
「……これ」
ヴィオラが。
止まる。
見る。
「何?」
「……最初から?」
少し。
間。
ヴィオラが。
アルベルトを見る。
アルベルトも。
こちらを見る。
隠さない。
「可能性は考えていた」
「……可能性」
「お前が宿場まで行かないと決める可能性だ」
分かる。
少し。
分からない。
「……知ってた?」
「ここで泊まると決めていたわけではない」
アルベルト。
「だが、宿場に着けない場合の準備はしていた」
ヴィオラも。
頷く。
「何があっても泊まれるようにね」
少し。
むっとする。
たぶん。
「……言わなかった」
「うん」
「どうして」
ヴィオラが。
少し。
困った顔。
アルベルトは。
普通。
「言えば、お前はそれを予定にする」
あ。
「今日は宿場まで行く予定だった」
「はい」
「途中で止まる必要があるかどうかは、お前が決めることだった」
見る。
荷物。
毛布。
水。
準備。
されていた。
私が。
止まっても。
困らないように。
止まれと。
言わないために。
「……意地悪」
言った。
ヴィオラが。
目を。
少し。
大きくする。
アルベルト。
少し。
笑った。
「そうかもしれんな」
否定しない。
やっぱり。
少し。
意地悪。
場所を。
移す。
道から。
少し離れる。
平らなところ。
馬。
休ませる。
ヴィオラと。
アルベルトが。
動く。
速い。
布。
紐。
火。
手順。
知っている。
二人とも。
騎士。
そうだった。
私は。
見ている。
「手伝う?」
ヴィオラ。
考える。
身体。
疲れている。
「……少しだけ」
「じゃあ、これ」
軽いもの。
渡される。
運ぶ。
一つ。
もう一つ。
三つ目。
「……ここまで」
言う。
ヴィオラ。
すぐ。
「うん」
取る。
簡単。
前より。
ずっと。
夕方。
座る。
火。
小さい。
宿の。
灯りでは。
ない。
屋敷の。
灯りでも。
ない。
空。
だんだん。
暗くなる。
少し。
怖い。
でも。
ヴィオラ。
いる。
アルベルト。
いる。
馬も。
いる。
道も。
ある。
明日。
帰る。
予定。
変わった。
宿場には。
着かなかった。
でも。
道から。
外れたわけでは。
ない。
「どうだった?」
アルベルト。
「……何が?」
「今日だ」
考える。
疲れた。
楽しかった。
少し。
怖い。
宿場まで。
行けなかった。
違う。
行かなかった。
自分で。
「……途中で。止まりました」
「ああ」
「まだ。行けたけど」
「ああ」
「でも。止まりました」
アルベルトが。
頷く。
「それでいい」
それで。
いい。
夜。
毛布。
横になる。
天井。
ない。
空。
知らない。
星。
多い。
宿より。
落ち着かない。
当たり前。
たぶん。
「眠れそう?」
ヴィオラ。
前にも。
聞かれた。
「……分からない方」
「そっか」
でも。
少し。
違う。
宿は。
泊まるための場所。
ここは。
私が。
止まると決めたから。
泊まる場所に。
なった。
知らない場所。
でも。
自分で。
選んだ場所。
目を。
閉じる。
今日。
宿場まで。
行く予定だった。
行かなかった。
予定どおりでは。
ない。
でも。
昨日。
思った。
予定どおりで。
なくても。
帰ってくれば。
いい。
まだ。
帰っていない。
だから。
練習は。
途中。
明日。
帰る。
そのために。
今日は。
ここまで。
たぶん。
今日は。
止まる方の。
たぶん。




