第96章 帰るための練習
朝。
目を開ける。
天井。
いつもの。
少し。
考える。
宿の天井も。
覚えている。
あそこで。
眠った。
朝まで。
いた。
帰ってきた。
帰って。
ここで。
眠った。
胸の奥。
少し。
軽い。
起きる。
身体。
昨日より。
軽い。
でも。
何も。
ないわけでは。
ない。
足。
少しだけ。
重い。
分かる。
前なら。
たぶん。
分からなかった。
⸻
朝食のあと。
先生が来る。
いつもの。
椅子。
座る。
「昨日よりは良さそうだね」
「……はい」
「疲れは?」
考える。
「少し。あります」
先生。
頷く。
「どこ?」
「足。少し」
「他は?」
身体を見る。
腕。
背中。
頭。
「……ないです」
「よし」
先生が。
少し。
笑う。
「ちゃんと分かるようになったね」
分かる。
自分の。
身体。
全部では。
ない。
でも。
前より。
「今日はどうする?」
聞かれる。
考える。
故郷。
行く。
そのための。
準備。
昨日。
荷物を。
見た。
宿にも。
泊まった。
町の外にも。
行った。
途中で。
食べた。
休んだ。
まだ。
何か。
ある。
「……先生」
「うん?」
「旅で。困ること。ありますか」
先生が。
少し。
考える。
「たくさんあると思うよ」
たくさん。
「例えば?」
「雨が降るかもしれない。馬車が予定より進まないかもしれない。君の身体が思ったより疲れるかもしれない」
頷く。
「泊まる場所まで着けないこともある」
止まる。
泊まる場所。
着けない。
「……その時は?」
「どうすると思う?」
分からない。
考える。
進む。
泊まる場所まで。
でも。
着けない。
なら。
「……戻る?」
「戻れる距離なら、それもあるね」
違うなら。
先生は。
答えない。
待っている。
「……途中で。止まる?」
「うん」
途中。
そこには。
宿。
ない。
「……どこで。寝るの?」
「それも旅の準備だね」
先生が。
笑う。
少し。
嫌な。
笑い。
たぶん。
⸻
昼前。
アルベルトが。
地図を持ってくる。
ヴィオラも。
いる。
カイルも。
ノアは。
いない。
学校。
本当に。
暇ではない。
地図。
机に。
広げる。
知っている町。
その外。
道。
前に。
行った場所。
川。
もっと。
先。
「ここに小さな宿場がある」
アルベルトが。
指す。
見る。
遠い。
たぶん。
「馬車なら、一日で行ける距離だ」
一日。
「……私でも?」
アルベルトが。
少し。
止まる。
「それを確かめたい」
先生を見る。
先生。
頷く。
「故郷へ行く前に、一度やってみようと思う」
「……宿場まで?」
「そう」
宿場。
知らない場所。
でも。
宿。
一度。
泊まった。
少し。
違う宿でも。
たぶん。
前よりは。
分かる。
「泊まる?」
「その予定」
予定。
その言葉が。
少し。
残る。
「一泊して、翌日戻る」
行く。
泊まる。
帰る。
二日。
「……やります」
言う。
先生が。
こちらを見る。
「今決める?」
考える。
身体。
少し。
重い。
今日は。
まだ。
「……明日は。やらない」
アルベルト。
頷く。
「では?」
考える。
一日。
休む。
その次。
「……明後日」
「分かった」
先生が。続ける。
「故郷へ行く日は、この練習から帰って身体を見てから、もう一度決めよう」
アルベルトも。頷く。
⸻
午後。
庭。
ヴィオラと。
歩く。
目標だった木。
通り過ぎる。
今日は。
少しだけ。
その先。
椅子。
座る。
「明後日、楽しみ?」
「……少し」
「怖い?」
「それも。少し」
両方。
もう。
変ではない。
「宿場まで。行けるかな」
ヴィオラが。
聞く。
考える。
「……分からない」
「うん」
「でも。行きたい」
「うん」
風。
葉。
揺れる。
「もし。疲れたら」
言う。
ヴィオラを見る。
「言う」
「うん」
「休む」
「うん」
「それでも。駄目なら」
止まる。
何だろう。
ヴィオラは。
答えない。
私を見る。
先生と。
同じ。
待つ。
「……止まる」
ヴィオラ。
笑う。
「そうだね」
「宿場に。着かなくても?」
「着くために無理をする必要はないよ」
でも。
宿。
ない。
「その時は?」
「その時に考えよう」
また。
それ。
でも。
前より。
嫌ではない。
その時に。
決める。
今。
全部。
決めなくていい。
⸻
夕方。
部屋。
小さな鞄。
見る。
明後日。
一泊。
着替え。
水。
薬。
全部は。
持たない。
馬車に。
積む。
自分で。
持つもの。
人に。
持ってもらうもの。
前に。
覚えた。
机。
紙。
故郷へ行く日。
そう。
書こうとして。
止まる。
まだ。
決め直す。
必要がある。
明後日の。
練習。
終わっていない。
帰ってから。
身体が。
どうなるかも。
分からない。
先生が。
何と言うかも。
分からない。
紙を。
置く。
急がない。
先に。
行く。
そして。
帰ってくる。
宿場まで。
行くことだけが。
練習ではない。
帰って。
この部屋で。
また。
眠るところまで。
たぶん。
それが。
練習。
窓の外。
庭。
いつもの木。
その向こう。
道。
もっと。
向こう。
宿場。
さらに。
向こう。
故郷。
遠い。
でも。
道は。
続いている。
帰る道も。
同じだけ。
続いている。
行くだけでは。
ない。
帰ってくる。
そのために。
明後日。
まず。
行って。
帰る。
たぶん。
今日は。
帰る方まで考える。
たぶん。




