第93章 泊まりたい
朝。
目を開ける。
天井。
いつもの。
身体。
昨日より。
軽い。
腕。
動く。
脚。
動く。
起きる。
昨日。
宿へ。
行かなかった。
でも。
宿のことは。
覚えている。
入口。
食堂。
階段。
廊下。
部屋。
ベッド。
知らない天井。
昨日。
行かなかったのに。
消えていない。
当たり前。
たぶん。
でも。
少し。
嬉しい。
⸻
朝食。
いつもの。
席。
ヴィオラ。
アルベルト。
カイル。
ノア。
ミーナ。
食べる。
身体。
大丈夫。
昨日。
休んだ。
だから。
今日は。
少し。
違う。
次。
眠る。
そう。
決めていた。
でも。
いつ。
とは。
決めていなかった。
今日。
どうする。
考える。
パン。
食べる。
スープ。
飲む。
まだ。
考える。
ヴィオラが。
こちらを見る。
何も。
聞かない。
待っている。
だから。
言う。
「……ヴィオラ」
「ん?」
「宿」
「うん」
少し。
息を。
吸う。
「……泊まりたい」
言えた。
⸻
ヴィオラが。
少し。
目を開く。
それから。
笑う。
「今日?」
考える。
身体。
軽い。
怖い。
たぶん。
でも。
行きたい。
「……今日」
「分かった」
それだけ。
止めない。
決めない。
アルベルトが。
こちらを見る。
「先生に診てもらってからだな」
頷く。
それも。
分かっている。
ノア。
食べる。
「俺も?」
聞いてない。
「……来る?」
「飯うまかったしな」
理由。
そこ。
⸻
先生。
診察。
昨日。
宿へ行かなかったこと。
知っている。
今日。
身体が軽いことも。
言う。
「それで?」
先生。
「今日はどうする?」
昨日と。
同じ質問。
でも。
答えは。
違う。
「……宿に。泊まりたいです」
先生が。
少し。
黙る。
「泊まれそう?」
考える。
分からない。
「……まだ。分かりません」
「怖い?」
「はい」
言える。
「それでも行きたい?」
「……はい」
先生が。
頷く。
「じゃあ、行ってみようか」
行って。
みる。
泊まる。
では。
ない。
少し。
違う。
「途中で帰ってもいいからね」
頷く。
それも。
知っている。
でも。
言ってもらうと。
少し。
楽。
⸻
準備。
昨日までとは。
違う。
帰るのは。
明日。
かもしれない。
服。
一つ。
着替え。
水。
小さい。
鞄。
持つ。
前に。
練習した。
重さ。
これなら。
大丈夫。
「全部持つの?」
ヴィオラ。
首を振る。
「……これだけ」
残りは。
馬車。
前に。
覚えた。
一人で。
全部。
持たなくていい。
⸻
夕方より。
少し前。
馬車。
ヴィオラ。
私。
ノア。
荷物。
揺れる。
町。
道。
曲がる。
宿。
見える。
知っている。
建物。
今日は。
帰るために。
来た。
わけでは。
ない。
少し。
胸が。
固くなる。
⸻
降りる。
扉。
開ける。
食堂。
声。
皿。
匂い。
前と。
同じ。
でも。
今日は。
荷物がある。
それだけで。
少し。
違う。
宿の人。
こちらを見る。
ヴィオラが。
話す。
部屋。
前と。
同じところ。
らしい。
よかった。
そう。
思った。
⸻
階段。
上る。
廊下。
歩く。
扉。
開く。
部屋。
ベッド。
机。
椅子。
窓。
「……同じ」
「うん」
鞄を。
置く。
前は。
見た。
次は。
少しいた。
今日は。
荷物を。
置いた。
泊まる人。
みたい。
少し。
変。
⸻
夕食まで。
時間。
ベッドに。
座る。
ヴィオラは。
椅子。
ノアは。
食堂。
もう。
行った。
「早くない?」
と。
ヴィオラが言った。
「下見」
と。
ノアが言った。
何の。
⸻
窓。
外。
町。
屋敷から見る。
景色とは。
違う。
人。
歩く。
馬車。
通る。
少しずつ。
空。
暗くなる。
前は。
明るいうちに。
帰った。
今日は。
帰らない。
それが。
少し。
怖い。
「……ヴィオラ」
「いるよ」
見る。
いる。
「帰りたくなった?」
考える。
家。
いつもの部屋。
ミーナ。
アルベルト。
カイル。
自分の。
ベッド。
帰りたい。
少し。
でも。
ここにも。
いたい。
「……少し。帰りたい」
「うん」
「でも。まだ。います」
「分かった」
両方。
言えた。
⸻
夕食。
下。
人。
前より。
多い。
ノア。
もう。
座っている。
「何食う?」
楽しそう。
「……まだ。決めてない」
「肉うまかったぞ」
知っている。
前も。
食べていた。
ヴィオラが。
笑う。
食べる。
周り。
うるさい。
でも。
前に。
聞いた音。
知らない声。
でも。
人がいる。
だけ。
途中。
少し。
疲れる。
「……ゆっくり。食べます」
誰に。
言ったわけでも。
ない。
でも。
ヴィオラが。
「うん」
と言った。
ゆっくり。
食べる。
⸻
部屋。
戻る。
外。
暗い。
窓。
黒い。
少し。
怖い。
庭。
思い出す。
夜。
見えなくなった。
朝。
戻った。
違う。
戻ったのでは。
ない。
ずっと。
あった。
窓の外も。
たぶん。
同じ。
見えないだけ。
⸻
寝る準備。
服。
替える。
ベッド。
入る。
いつもと。
違う。
硬さ。
匂い。
音。
廊下。
足音。
下から。
声。
まだ。
する。
眠れるか。
分からない。
ヴィオラ。
椅子。
「そこ?」
「最初はね」
前にも。
聞いた。
ような。
気がする。
「……寝る?」
「眠くなったら」
私を。
見ているために。
起きている。
わけでは。
ない。
それが。
少し。
分かる。
⸻
目を閉じる。
開ける。
まだ。
同じ。
閉じる。
音。
する。
開ける。
天井。
知っている。
二回。
見た。
今日で。
三回目。
知らない天井。
だった。
今は。
宿の。
天井。
少し。
違う。
⸻
「……ヴィオラ」
「いるよ」
すぐ。
返る。
「……怖い」
「うん」
「でも」
言葉。
探す。
「帰らなくて。大丈夫」
ヴィオラが。
少し。
間を置く。
「そっか」
それだけ。
⸻
目を閉じる。
眠れない。
たぶん。
少し。
時間。
経つ。
また。
目を開ける。
ヴィオラ。
本。
読んでいる。
「……まだ。起きてる?」
「起きてるよ」
「眠くない?」
「少し」
「……寝ていい」
ヴィオラが。
こちらを見る。
「大丈夫?」
考える。
大丈夫。
では。
ない。
少し。
怖い。
でも。
ヴィオラが。
寝たら。
いなくなる。
わけでは。
ない。
知っている。
「……たぶん」
「どっちの?」
考える。
少し。
笑う。
「……寝ていい方」
ヴィオラも。
笑った。
⸻
椅子では。
寝にくい。
だから。
もう一つ。
借りた。
ベッド。
ヴィオラが。
横になる。
部屋。
暗い。
声。
少しずつ。
減る。
知らない場所。
知らない夜。
でも。
一人では。
ない。
それだけでは。
ない。
一人で。
全部。
しなくていい。
前に。
覚えた。
⸻
目を閉じる。
次に。
開けた時。
暗い。
まだ。
夜。
眠った。
少し。
たぶん。
身体。
ある。
声。
出る。
「……ヴィオラ」
返事。
ない。
胸。
少し。
固くなる。
でも。
待つ。
息。
聞こえる。
ヴィオラ。
いる。
眠っている。
呼ばない。
目を。
閉じる。
⸻
次。
目を開ける。
明るい。
窓。
朝。
天井。
同じ。
身体。
同じ。
髪。
同じ。
声。
「……ヴィオラ」
「ん……」
いる。
眠そう。
少し。
笑う。
⸻
起きる。
窓。
外。
昨日。
暗くて。
見えなかった。
町。
ある。
人。
歩いている。
馬車。
通る。
昨日と。
同じでは。
ない。
でも。
続いている。
夜の間も。
たぶん。
ずっと。
⸻
「どうだった?」
ヴィオラ。
考える。
怖かった。
眠るまで。
時間。
かかった。
途中で。
起きた。
ヴィオラを。
呼びそうになった。
でも。
眠れた。
朝。
来た。
「……また。できます」
言う。
前にも。
言った。
違う部屋で。
初めて。
夜を越した時。
先生が。
言った。
またできるなら。
成功。
今日は。
先生。
いない。
でも。
自分で。
分かる。
「……成功」
ヴィオラが。
笑う。
「うん」
⸻
帰る。
荷物。
持つ。
昨日より。
少し。
重い気がする。
疲れている。
だから。
無理に。
全部。
持たない。
ヴィオラに。
一つ。
渡す。
「お願い」
「もちろん」
言えた。
⸻
馬車。
宿。
遠くなる。
一泊。
した。
それだけ。
故郷には。
まだ。
行っていない。
でも。
旅の途中で。
眠る。
それが。
どういうことか。
少し。
知った。
知らない場所を。
見る。
少しいる。
行かない日も。
ある。
それから。
自分で。
泊まりたいと。
決める。
順番。
全部。
必要だった。
たぶん。
⸻
屋敷。
扉。
開く。
ミーナ。
「おかえりなさいませ」
帰ってきた。
「……ただいま」
今日は。
少し。
眠い。
でも。
大丈夫。
部屋へ。
戻る。
天井。
いつもの。
宿の天井も。
もう。
知らない天井では。
ない。
泊まった場所の。
天井。
一つ。
増えた。
⸻
故郷まで。
何日も。
かかる。
知らない場所で。
何度も。
眠る。
全部。
同じ宿では。
ない。
だから。
まだ。
怖い。
でも。
一つは。
できた。
なら。
次も。
一つずつ。
できる。
たぶん。
今日は。
泊まる方の。
たぶん。




