第90章 泊まる場所
次の日。
朝。
目を開ける。
天井。
いつもの。
昨日。
地図を見た。
故郷まで。
三日。
たぶん。
私なら。
もっと。
途中で。
食べる。
休む。
眠る。
その。
眠る場所。
まだ。
知らない。
⸻
朝食。
ヴィオラ。
アルベルト。
カイル。
ノア。
ミーナ。
いつもの。
人。
いつもの。
場所。
食べながら。
昨日の話を。
思い出す。
近い宿なら。
一度。
見に行ける。
「……アルベルト」
「どうした?」
「宿」
アルベルトが。
少し考える。
「ああ。昨日の話か」
覚えている。
「今日。行けますか」
ヴィオラが。
こちらを見る。
アルベルトは。
すぐには。
答えない。
「先生に聞いてからだな」
そうだった。
「……はい」
待つ。
⸻
先生。
診察。
腕。
脚。
背中。
「この前は?」
「鞄を。持ちました」
「どのくらい?」
手で。
小さい。
を作る。
「これくらい」
「重かった?」
「最初は。軽かったです」
「途中から?」
「重かった」
先生が。
頷く。
「今日は?」
「大丈夫です」
少し。
考える。
「肩が。少し」
動かす。
痛くは。
ない。
でも。
この前使った。
感じ。
「じゃあ、重いものは持たない」
「はい」
「それで、今日は何をするの?」
「宿を。見ます」
先生。
止まる。
「宿?」
説明する。
故郷。
何日も。
途中で。
眠る。
知らない宿。
だから。
先に。
見る。
先生が。
最後まで聞く。
「泊まるの?」
首を振る。
「今日は。見ます」
「それならいいよ」
今日は。
見るだけ。
⸻
馬車。
ヴィオラ。
私。
今日は。
二人。
ノアは。
来ない。
「暇じゃない?」
聞いたら。
「今日は本当に暇じゃない」
と言った。
本当に。
が。
ついた。
少し。
面白かった。
⸻
町。
知っている道。
店。
曲がり角。
人。
今日は。
少し違うところで。
曲がる。
馬車が。
止まる。
窓の外。
建物。
二階。
大きい。
でも。
屋敷ほどではない。
人が。
出てくる。
別の人が。
入っていく。
荷物。
馬。
馬車。
「ここ?」
「うん」
ヴィオラ。
宿。
見る。
外からなら。
普通の。
建物。
でも。
ここで。
知らない人が。
眠る。
朝になったら。
また。
出ていく。
少し。
不思議。
⸻
降りる。
ヴィオラの手。
今日は。
借りる。
入口。
近づく。
扉。
開く。
音。
声。
食べ物の。
匂い。
知らない人。
何人も。
いる。
少し。
止まる。
ヴィオラも。
止まる。
「戻る?」
首を振る。
まだ。
大丈夫。
「……入る」
⸻
中。
広い部屋。
机。
椅子。
人。
食べている。
話している。
荷物。
壁。
階段。
奥。
知らない場所。
知らない人。
でも。
町で。
見た。
知らない人とは。
少し違う。
ここでは。
同じ場所に。
しばらく。
いる。
「ここで。食べる?」
「食べられるよ」
「眠る?」
「部屋は上」
上。
見る。
階段。
⸻
宿の人。
ヴィオラが。
話す。
私のことは。
詳しく。
言わない。
部屋を。
見せてもらう。
階段。
上る。
ゆっくり。
廊下。
扉。
いくつも。
人の声。
するところ。
しないところ。
一つ。
開く。
⸻
部屋。
ベッド。
机。
椅子。
窓。
それだけ。
屋敷の。
客室より。
小さい。
見る。
天井。
知らない。
ベッド。
知らない。
窓の外。
知らない景色。
胸の奥。
少し。
固くなる。
でも。
前にも。
あった。
違う天井。
客室。
最初は。
怖かった。
次の日。
少し。
違った。
その次。
夜を。
越えた。
「どう?」
ヴィオラ。
考える。
「……知らない」
「うん」
「でも」
もう一度。
部屋を見る。
「前より。大丈夫」
ヴィオラが。
少し笑う。
「そっか」
⸻
ベッド。
近づく。
触る。
少し。
硬い。
「寝てもいい?」
「今日は見るだけじゃなかった?」
そうだった。
見る。
だけ。
でも。
「……少し。座る」
ヴィオラが。
宿の人を見る。
大丈夫。
らしい。
座る。
ベッド。
沈む。
いつもの。
ベッドとは。
違う。
客室とも。
違う。
でも。
ベッド。
「眠れそう?」
聞かれる。
考える。
分からない。
「……たぶん」
ヴィオラが笑う。
「どっちの?」
最近。
聞かれる。
たぶん。
考える。
「まだ。分からない方」
「そっか」
それで。
いい。
⸻
部屋を出る。
廊下。
階段。
下。
途中。
人と。
すれ違う。
知らない人。
少し。
避ける。
相手も。
避ける。
それだけ。
下。
食堂。
さっきより。
人が増えている。
声。
少し。
大きい。
「夜も。こんな感じ?」
「宿によるけど、たぶんね」
「静かじゃない?」
「家とは違うからね」
家。
ヴィオラが。
普通に。
言った。
私も。
普通に。
聞いた。
⸻
外。
息を。
吐く。
疲れた。
歩いたから。
だけでは。
ない。
知らないものが。
多かった。
「疲れた?」
「……はい」
すぐ。
言えた。
「帰る?」
宿を見る。
まだ。
見ていないところ。
ある。
馬を休ませる場所。
食事を作るところ。
他にも。
たぶん。
でも。
今日は。
見る。
見た。
「……帰ります」
⸻
馬車。
揺れる。
窓。
宿が。
小さくなる。
泊まらなかった。
眠らなかった。
食べなかった。
見ただけ。
それでも。
昨日まで。
宿は。
地図の途中にある。
知らない場所だった。
今日。
建物を見た。
中に入った。
階段を上った。
部屋を見た。
ベッドに座った。
まだ。
眠れるかは。
分からない。
でも。
何も知らない場所では。
なくなった。
⸻
屋敷。
着く。
扉。
開く。
ミーナ。
「おかえりなさいませ」
「……ただいま」
今日は。
すぐ。
出た。
⸻
午後。
部屋。
ベッド。
横になる。
天井。
いつもの。
静か。
宿とは。
違う。
知らない人の。
声も。
しない。
少し。
安心する。
でも。
思う。
あの部屋も。
もう。
一度。
見た。
次に行けば。
今日より。
少し。
知らなくない。
客室も。
そうだった。
最初は。
違う天井。
次は。
昨日と同じ。
違う天井。
それから。
朝が来た。
なら。
宿も。
たぶん。
同じ。
いきなり。
眠らなくていい。
まず。
見る。
次に。
少しいる。
それから。
できそうなら。
眠る。
一つずつ。
⸻
故郷まで。
何日も。
かかる。
途中で。
知らない場所に。
泊まる。
昨日は。
それが。
少し。
怖かった。
今日。
怖くなくなった。
わけでは。
ない。
でも。
怖いものの。
形が。
少し。
分かった。
建物。
階段。
部屋。
ベッド。
人の声。
知らない天井。
形が。
分かれば。
次に。
何をすればいいかも。
少し。
分かる。
知らない場所は。
一度。
見れば。
一度見た場所に。
なる。
たぶん。
今日は。
見る方の。
たぶん。




